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建築を見に行く、そこに社会性を加えてみる

こんにちは、建築ライターのロンロ・ボナペティです。

ずいぶんと更新が空いてしまいました。
noteを書けていなかった理由の大部分は、お仕事としていただく原稿を書くなかで、書きたい欲のようなものが解消されてしまっているからです。
それだけ自分が書きたいと思ったことを自由に書かせてもらえる機会をいただいていて、ありがたいことなんですが、それでもやはりこうして「自分さえよければ良い」場所で書くのとは決定的に違う点があります。

ロンロさんは、ラジオが好きです。
特にTBSラジオの「伊集院光 深夜の馬鹿力」はかれこれ20年弱聞き続けているヘビーリスナーです。
伊集院さんがよく口にする言葉で、「本当にそうだな」と思う言葉があります。
伊集院さんが師匠の三遊亭円楽さんから言われたもので、芸能活動をするにあたって大切にしてきた言葉なのだそうです。
「寝食を忘れるほど好きなものに、少しの社会性を加えれば、それだけで食べていける」うろ覚えですがそんな言葉だったはず。

ロンロさんは、建築が好きです。
より正確に言えば、建築を見に行くことを通して知らない場所へ行き、新しい世界に触れることが好きです。
建築はそれを取り巻いている社会からさまざまな抑圧を受けてつくられるので、建築にはそれを見ることでそこからどこへでも飛んでいけるフックがたくさんぶら下がっています。
そのフックに引っかけられ、思いも寄らないところへ飛ばされるのが好きなんですが、もちろん何度飛ばされようが、財布から旅費が飛んでいくだけです。

趣味なんだからそんなもんだろ、と思っていたところ、ありがたいことにお仕事として建築を見に行った体験を書く機会をいただくようになりました。
ところがこれは大変な話で、円楽さん言うところの「社会性」が急に求められることになってしまいました。
noteで気ままに書く文章とは決定的に違う、唯一の点です。(あ、あと締切を守らなきゃいけないとか予算内で取材しなきゃいけないとかの制約はいろいろ)
これまで好き勝手にフックにぶら下がってはあちこちへ飛ばされたり、思うようにフックが作動せず、どこにも飛ばされることなく帰ってきたりしていたのがそうもいかなくなりました。
ライターにとっての社会性とはなんでしょうか?
お仕事の性質によってさまざまだと思いますが、主にWebメディアで記事を公開し、できれば多くの人に読んでもらうことが求められる僕の場合、その誰かが「読みたい」と思う文章を書くことなのだろうと思います。
ではそれをどのようにして実現するか。そして自分自身の「好き」と矛盾することなく同居させるためにどうすれば良いのか。
とてもじゃないですが「食べていける」ほどのお仕事はいただいていないので、まだまだ道半ばですがいくつか記事を書くなかで、ひとつの指針のようなものが朧気ながら見えてきました。

それは、建築にぶら下がっているいくつものフックのうち、どれかひとつ、引っかかって飛ばされた先の景色を読者の方に共有することでした。

記事書かれているように自分も同じように飛びたい、あるいはそんな飛び方ができるならもしかするとこんな飛び方もできるかもしれない。
実際に見に行くのはハードルが高いから、記事を読むことで疑似体験をしよう。
記事で取り上げた建築とは違うけれど、似たようなフックがぶら下がった建築が近くにないか探してみよう。
そうした世の建築好きの思いに少しでも応えることができたなら、僕の好きに社会性が宿ったと言えるのではないでしょうか。

そんなことを考えながら、建築を見に行っては記事を書いているので、ぜひ読んで感想とともにシェアしてください!
建築にぶら下がった最高のフックのひとつは、建築好きとの新たな出会いですからね。

↑↑↑SUUMOジャーナルさんでは不定期で連載させていただいています。次回記事の執筆に絶賛悪戦苦闘中です。

最後まで読んでいただきありがとうございます。サポートは取材費用に使わせていただきます。