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建築的評価の高い作品が社会にどんな価値を提供するのかわからなくなったので見に行くことにしました

建築家・菊竹清訓氏の代表作、旧都城市民会館。
建築界からは高く評価され保存活用を訴える声も多く出されましたが、解体が決定したようです。

こんにちは、建築ライターのロンロ・ボナペティです。
いきなりですが、質問です。
「日々少しずつでも、社会が良くなっていったらいいなと思いませんか?」
こんなことを聞いて「そんなことない!」という方はまぁいないかと思います。
では「社会が良くなる」とはどういう状態でしょう?

これについては絶対的な答えを持っている方はなかなかいないのではないでしょうか。
みなさんそれぞれの信条で、それぞれの専門分野で未来のために日々邁進していることと思います。
それが合っているかどうかは後の世のジャッジに委ねるしかないですよね。
で、僕自身はというと、建築のコンテンツに携わる人間として、こんなざっくりとしたイメージをもっています。

世の中にある建築が少しずつでも良くなっていったらいいな

建築は不動産と呼ばれるように実体のある“物”ですから、社会全体に広がる建築物が少しずつ今よりも“良い物”に置き換わっていったらいいのかな、とそんなことを考えています。
ここでまた良い建築とは何ぞや、という問題が生じるのですがそれは一旦置いておいて、社会全体の建築を良くしていくためにどんなことができるのだろう、ということを日々思案しているわけです。

さてそんな大風呂敷を広げつつ、先日あるnoteを公開しました。
老朽化による改修費や施設の維持管理費等の理由で解体が決定した旧都城市民会館。
建築界からは高く評価されており、日本建築学会が異例の対応で保存活用案を提出するなど動向が注目されていました。
どんなに優れた建築でも老朽化にともないいつかは再生か解体か、という検討がなされます。
名建築といわれる建築も、日々解体されているわけですが、あの異形ともいえる唯一無二の建築がつくる風景に心惹かれていた僕は、それが失われることに一抹の寂しさを覚えたんですね。

ある建築の処遇を決めるのはその所有者です。
今回のケースでは市が管理者であったことから、広く市民からも解体の是非を問い、また有効な保存活用案を公募するという対応が取られました。
言ってみれば社会がこの建築を再生するのかどうか、それだけの価値があるのかどうかをジャッジするという状況になったわけです。
そこで思ったことが、そのための判断材料について。
解体を支持する材料はいくらでも出てくるわけですが、再生を支持する材料はというと非常にぼんやりとしている。

このぼんやりとしたものを、みんなでくっきりさせる方法を考えてみようよ、というのが先のnoteの主旨でした。
その結果解体とジャッジするならそれが答えなのだと思うのだけど、片一方は明快な材料が揃っていて、片一方はぼんやりとしたままジャッジしてしまうで良いのだろうか、それだとこれから先も同じ対立が繰り返されるよね、ということを考えていたのです。

その方法としていまのところこんなことしか思いつかないんだけどどう思います? という問いかけのつもりで書いたnoteに対して、たくさんのご意見をいただきました。
その多くは旧都城市民会館の改修案に対する批判でした。
僕の未熟さから意図しない文脈で読まれてしまったなぁと反省もしつつ、批判の内容を見ていくとどれも理路整然としているんですよね。
反対に改修に賛成の人の意見はどうしても説得力に欠けてしまう。

案の定解体が決定したわけですが、建築に関わる者として、ただそれを惜しむだけではだめだなと思い立ちました。
これは老朽化した建築の処遇をどうするのかという問題ではなく、世の中にある建築を少しずつでも良くしていくために、建築の使い方やつくり方も含めて考えていくべき問題だよな、と。

そのためにライターひとりができることなんてとても限られているけれど、まずはあの建築を取り巻く社会を見に行かなくてはいけないのではないか、そんなことを考えています。
老朽化のため建築の内部には入れないですし、個人的な問い合わせに市が対応してくれるとも思いません。
行って帰ってくるだけの弾丸ツアーになるでしょうから、近隣の住民の方にお話を聞くのも難しいかもしれません。
それでも、まずは見て体感することから始めたい。
そんな思いで取材費用を募ることにしました。

ご支援いただいた方には僕が現地で考えたこと、この先どんな風に建築と向き合っていくかをまとめたレポートをお送りさせていただきます。
ロンロの目を通して旧都城市民会館を見ることで、一緒に建築の未来を考えてみたい、そんな風に思っていただける方がいらっしゃったら、ご支援ご検討いただけましたらうれしいです。


最後まで読んでいただきありがとうございます。サポートは取材費用に使わせていただきます。