私の
長かった髪をバッサリと切った。
短くなった髪にパーマをかけた。
真っ黒の髪を聞いたこともない色に染めた。
今年の夏、私は新しくなった。
と、自分で思いたくて髪に手を出した。
鏡を見るたび垢抜けない自分に、急に嫌気がさした。いつもなら気にならないのに、なぜかその日は違った。いつも行動が突然すぎると自負しつつも、今回も気づいたら短めのヘアスタイルを検索し、翌日には結べないほどの長さにバッサリといった。
後悔はしてない。
鏡に映る自分に満足した。
今時の、柔らかそうな色とうねり。
髪が変わっただけでまるで別人だ。
満足げに口元を歪めながら、
ふと、高校時代の記憶が蘇った。
『綺麗なカールだね!これ、地毛?』
後ろの席に座る明るく元気なクラスメイトにそう言われた。
ただの癖っ毛を放置した長髪を、彼女は綺麗だと言った。彼女の名前は忘れてしまったけど、この出来事だけは鮮明に憶えている。きっと嬉しかったのだと思う。
今はもう、あの時の『綺麗』はない。
一瞬、派手な染料で染められた髪が汚く見えた。
後悔はしていない。
けれど、失って初めて、私はあの髪が好きだったのだと、思い知らされたのだった。
いつかまた、あの美しい髪が戻って来たら、私はどんな顔で鏡を見るのだろう。
あぁ、きっと18歳の頃の、あの時のように。