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文庫本フォーマットデータを無償配布いたします

文庫本版型のフォーマットデータを無償配布いたします。仕様は以下のとおりです。

1: 文庫本本文フォーマットデータ(Adobe InDesignデータ)
2: 文庫本表紙フォーマットデータ(Adobe Illustratorデータ)

こちらのGoogleDriveよりダウンロードしてください。
■fmt.indd(文庫本本文フォーマットデータ/Adobe InDesignデータ)
■cover.ai(文庫本表紙フォーマットデータ/Adobe Illustratorデータ)

また「mihon_pdf」に各種の見本PDFデータがあります。それぞれ印刷面のみ表示/フォーマット付き表示をつけています。ご参考までに。

このデータの版型は、幅 108 mm、高さ 105 mmとなります。こまかな仕様や解説については下記にしてゆきます。基本的には1、2、6は筆者個人のはなしとなります。データのあつかいについては、3、4、5のみご確認くだされば結構です。

目次
1: フォーマットデータを配布する理由
2: 文庫本フォーマットであること
3: ブックフォーマット仕様
4: 解説
5: 使用にあたり
6: おまけ

1: フォーマットデータを配布する理由


近年、本の流通がおおきく変化していることを実感します。オンデマンド印刷・製本は精度の向上と発注のしやすさもあいまって、いっきに定着しているようにみえます。また文学フリマはじめ個人制作誌の販売を目的とした催事も各所でみられます。大手流通とはことなるインデペンデントな書店もふえていますし、かつては複雑な工程ともいえた版下フィニッシュワークはAdobeをはじめとした各種アプリケーションがみごとに自動化している。

こうした状況をふまえると、ブックフォーマットがオープンソース化するのは必然のなりゆきだとかんがえます。ソーシャルメディアをはじめ、個人個人がメディア/コンテンツをもつことがあたりまえとなったいま。本においても、そうしたシーンができてもいいでしょう。1990年代。作家や編集者、あるいはデザイナーらが夢をみたDTP (Desktop Publishing)。これが本格的に成熟した時代を、いよいよむかえたということかもしれません。

上述のようにソーシャルメディアをみれば、テクストを書いたり、写真やイラストレーションなどの図版をつくることができるひとは、わりとおおい。いっぽう、ブックフォーマットそれ自体をつくることは、少々、ハードルがたかい行為のようにもみえます。各SNSのサーヴィスが爆発的に流行・定着したのは、そのフォーマットが用意されていたからでしょう。

さて。ここでもちいた Adobe InDesign は複製能力にたけ、ある段階からはとても効率よく作業ができるものですが、そのアプリケーション設計の特性もあって、いわば「初見殺し」なる初期設定がもとめられます。つまり活字書体の選択、活字サイズ/行送りの選択、版面の設定……おそらくここは、いきなりはできないはず。仮にオペレーション的にクリアできても「どのような状態がいいのか?」まで理解することは、たぶんむずかしい。

本の自主制作を検討されるかたは、おそらくテクストなり図版なり、自分なりのコンテンツをお持ちのことでしょう。それをメディア化するにあたり、よどみそうなところ——つまりブックフォーマット——を、どうにかできないか? そうかんがえた結果です。

2: 文庫本フォーマットであること


では、どの版型がいいのか。ひとことに「本」といっても、さまざまなかたちが存在します。単行本でおなじみの四六版があれば、A規格・B規格を流用したものもある。

そうしたなかわたしたちにとって、もっとも見慣れていて、かつ扱いやすいかたちは、文庫本なのではないかと想像します。もっともジェネリックであり、すでにオープンソース化したもの。文庫本はおおくの出版社から発刊されています。しかし、つぶさにみれば版元それぞれ微妙にサイズがことなります。こんかい主要各社の版型を調査し、その平均値と想像された数値でブックフォーマットを設計しています。


3: ブックフォーマット仕様

本文データ
■使用アプリケーション: Adobe InDesign
■版型: 幅 108 mm/高さ 105 mm
■活字サイズ: 12 Q(3 mm)/行送り 21 H(5.25 mm)
■1行40文字×15行=1ページあたり600文字

表紙データ
■使用アプリケーション: Adobe Illustrator
■版型: 幅 108 mm/高さ 105 mm
■活字サイズ: 12 Q(3 mm)/行送り 21 H(5.25 mm)
■1行40文字×15行=1ページあたり600文字

本文データは Adobe InDesign、表紙データは Adobe Illustrator によるものです。いわゆる無線綴じ/あじろ綴じ製本を想定したつくりとしています。

薄緑の箇所は、こんかい Adobe Illustrator のデータで作成しています。無線綴じ/あじろ綴じによる文庫本形式を想定しているため、見返しは設定していません。したがって表2/表3のデータは制作していません。

本文データは、ひとまず16ページの構成としています。おそらくそれが本の体裁をなす、最低ページ数とかんがえられるからです(適宜ページは追加してください)各ページの構成は、おおよそ平均的な文庫本の形式にしたがっています。

つまり扉、目次、章扉、本文、奥付の順。あくまで典型的なかたちに準じた配置をしているだけです。制作されるかたがたが適宜、改変されていいと想像します。

また表紙データは本文データに準じた設計としています。無線綴じ/あじろ綴じ製本の場合、背表紙をつくる必要があります。ここでは暫定的に 7 mm としています。この点はおのおのの状況にあわせ、適宜設定してください。


4: 解説

親ページとレイヤーについて
Adobe InDesignは、じっさいの制作画面(印刷画面)と親ページ(マスターページ)のふたつをあつかう必要があるアプリケーションです。

このデータにおいて親ページは、ふたつのレイヤーを設定しています。ひとつは「印刷面」。ここでは印刷されるページ番号や柱を設定しています。もうひとつは「フォーマット」。これは最終的に印刷に反映されない、制作時におけるガイドラインのようなものです。

親ページは「A」と「B」の2種類を作成しています。ともに「フォーマット」レイヤーは共通しています。親ページAは「印刷面」レイヤーにページ番号と柱が反映されるもの。親ページBはページ番号と柱が表記されないものとなります。

基本的には親ページAでの展開をしています。扉や奥付など、ページ番号や柱が不要とみられるところは親ページBとしています。

フォーマットは1ページあたり1行40文字/15行の設定としています。中心に分割線をいれています。図版挿入や2段組をあつかうときガイドラインとしてお使いください。このあたりは本の内容や、制作者にとってつかいやすくカスタマイズしてください。

組版設定について

■活字サイズ: 12 Q(3 mm)/行送り 21 H(5.25 mm)
■1行40文字×15行=1ページあたり600文字

こちらを基本としています。初期的にはヒラギノ明朝体Pr6N W3、ページ番号のみAdobe Graramond Pro Rとしています。このあたりは適宜変更してください。なお本文における段落・文字組み設定は「行末受け役物半角・段落1字下げ(起こし全角)」としています。はやいはなし、段落のはじまりが全角1文字さがる設定です。ひとまず、これでいいかな? という具合で選択しています。

また本文には仮テクストを挿入しています。仕上イメージのための参考ですので、じっさいの使用時には削除してください。

上記の設定を基本としながら、扉や章のタイトル・著者名、柱などは活字サイズやレタースペース(トラッキング)を調整しています。

とはいえ、他者が手を入れやすいような、極力プレーンなデータ作成をこころがけています。繰り返しにはなりますが、こうした仕様・設計については、それぞれの目的にあわせ手をいれ、最適化していただいてかまいません。もちろん、そのままお使いいただいても問題ありません。

テクストブロックは1段組を基本として設定しています。画像上はテクストボックスを図版用に使用した例。画像中心はフォーマットの中心線をガイドとし、上部に図版、下部をテクストとした例。画像下はそれを応用しテクストブロックを2段組とした例です。


5: 使用にあたり


該当データは無償配布します。とくに許諾やクレジット表記、金銭の支払いなどはもとめません。また該当データは、それぞれの内容や目的にあわせ、適宜カスタマイズしていただいてかまいません。書体変更のような些細なところはもちろん、そもそもの判型をかえたり、グリッドフォーマットを拡張したり、プラグインを追加したり……そうした魔改造をしていただいても、もちろんかまいません。

はやいはなし、該当データをダウンロードしたあとは、ご自身のデータとしてあつかっていただいて大丈夫です。したがって、みなさまがその後データ制作にあたっておこる事象への責任は、当方では一切とりません(クレームなども一切受けつけません)

また制作のオペレーションにあたり、上記以上の解説もおこないません。Adobe InDesign はじめ、こうした造形アプリケーションの優秀なチュートリアルは世間数多存在します。そちらをご参照ください。

同様に本の構造であるとか部分の名称、印刷用語などについても、ここでは解説しません。これもまた、さまざまなウェブサイトで適切な解説が存在します。こちらも適宜参考にされてください。


6: おまけ


さいごに補足を。なぜ無償配布するのか。もしかすると、そうした疑問がうかぶかもしれません。基本的な理由は上述したとおりではあります。そもそも文庫本というフォーマットが「いつの間にか」できあがり、定着した形式です。まさにオープンソースといっていい。

それは初期的にはだれか個人がつくりだしたものかもしれません。しかし、現在はその個人の名をしらずとも、みながあたりまえにふれている存在となっています。

こんかい判型をデータ化し、ととのえたのは筆者ではありますが、これを筆者個人の著作物とはとてもいえません。くわえてツールとしてもAdobe社によるInDesign、Illustratorを使用しています。

いずれも、これまでのながい時間のなか培われたものたちです。その恩恵をよりひろくのひとが享受し、それを活用しながら時代のシーンや文化ができてゆくことをねがいます。

制作者: 中村将大(なかむら・まさひろ)
連絡先: masahiro.nakamura@thu.ac.jp

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