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感想:中山可穂先生の宝塚三部作を読んで

中山可穂先生の宝塚三部作「男役」「娘役」「銀橋」の感想記事となります。

ネタバレを含みますので、もしよろしければ読了後に記事をお読みください。

そして、これから読むという方は是非、何卒、文庫版を購入して「男役」のあとがき・文庫版あとがきを読んでから本編をお読みください。
あとがきにはネタバレが含まれないのでご安心を。

あとがきで中山可穂先生がどのようにしてこの「男役」の執筆にとりかかったか、その後どのような変化が中山可穂先生に起きたのかを把握していないとなかなか内容がうーん…となる可能性がぬぐえません…。
私もきゃびいさんと同じように20年来の中山可穂先生ファンとして、そのような状態で読み進めるのをやめてしまう人がいるとしたらなんだか心苦しいです。

中山可穂先生の作品に出逢ったのは高校生のときで、友人に貸して貰ったのがきっかけでした。
その頃、ちょっとした活字中毒かというほどに様々な小説を読み漁っていました。
当時よく読んでいたのは内田春菊先生で、その頃文庫で出ていたものは恐らく全て読破しました。
(文庫で、というのは高校生で余りお金がなかったので単行本は高かった。)

初めて読んだのは、中山可穂先生といえば、の「猫背の王子」
王子ミチルシリーズの一作目にあたります。
それから、シリーズ二作目の「天使の骨」も読みましたし、その他長編も短編集も殆ど全てを20年かけて読んできました。
常に新刊のチェックを怠らず発売したらすぐに購入して、という訳ではありませんが、なんというかその都度、なんだか不思議な縁みたいなタイミングみたいなもので、あれこれ読んでいて、気付いたらほぼ全て読んでるじゃん、と改めて気付いて驚きました。

そんな中で、私がちょっと手を出せずにいたのがこの宝塚三部作。
一作目の「男役」が上梓された頃、既にヅカヲタだった私ですが、なんだか手が伸びなかったのです。

色々あって、このタイミングでほぼ一気読みという感じで宝塚三部作を読み終えました。
恥ずかしながら、三作目の「銀橋」にて元雪組の早花まこさん(きゃびいさん)が解説を書かれていることを存じ上げませんでした。

三部作を全て読み終えたので言いますね。
中山可穂先生の宝塚三部作における私のご贔屓は花瀬レオさんです。
うっ…うっ……かっこいいよぉ……しゅき……

それでは、ここからネタバレがっつり含みますのでご注意を。



男役

愛と運命の業を描く中山可穂版・オペラ座の怪人!
トップになって二日目に舞台事故で亡くなった50年前の伝説の男役スター・扇乙矢。以後、大劇場の奈落に棲みつく宝塚の守護神ファントムさんとして語り継がれてきた。大劇場では月組トップスター如月すみれのサヨナラ公演の幕が開き、その新人公演の主役に大抜擢された永遠ひかるの前にあらわれた奇跡とは―。男役という稀有な芸への熱いオマージュを込めて中山可穂が情感豊かに描く、悲しく切ない恋愛幻想譚。

「男役」のあらすじはこんな感じ。
「中山可穂版・オペラ座の怪人」とはうまいことを言うものだなと思います。
あとがきに書かれているように、中山可穂先生はこの「男役」を書き終えたあとでがっつり宝塚歌劇にハマったそうです。
なので、ヅカオタからすると「そんなことある?」(notのぞ様)という部分があります。
なので、なので、あとがきから読んで欲しいんですよぅ…!!

さて、実際に読んだ感想はというと…
ファントムさんの愛とか、チャメさん(神無月 れい)の最期は勿論ひたすら号泣だけれども。
なんせ研3で初新公主演のナッツ(永遠とわ ひかる)が悩んで苦しんで新公当日を迎えるまでの流れがひたすらに胸を掴まれるし、レオンさん(花瀬はなせ レオ)とのあれこれはもう心臓握りつぶされるかと思いました。
刺さりすぎて無理…。
もう、宝塚大橋を自転車二人乗りで疾走して組長さんに怒られたエピソードはスカステでもお茶会でも何回も聞いたよね…伝説だよ…(幻覚)
「セビリヤの赤い月」、すごかったよね…震えたよね…(幻覚)

※お気づきかと思いますが、ハマりすぎたのでちょいちょい幻覚を見ています。

あとはもう、パッパさん(如月 すみれ)が超かっこいい。
トップスターって感じほんと最高。
ナッツやレオンさんのような下級生や若手スターと、パッパさんのような上級生になってからトップスターに就任した方とは、またそれぞれ魅力が違って存在していて。
この「男役」を執筆した時点で中山可穂先生はヅカオタではなかった、ということなのでこのキャラクターの書き分けには恐れ入るとしか言えません。

娘役

タカラジェンヌとヤクザの組長。『男役』に続く好評の宝塚シリーズ第二弾!
宝塚歌劇団の若手娘役・野火ほたるは新人公演でヒロインに抜擢され、一期上の憧れの男役・薔薇木涼とコンビを組むことになる。ほたるの娘役としての成長と、バラキとのコンビ愛。そんな彼女を遠くから
ひそかに見守り続ける孤独なヤクザ・片桐。大鰐組では若頭のことを二番手と呼び、兄貴分のことを上級生と呼び、引退のことを卒業と呼んでいた。組員には全員愛称がついていた。それが宝塚の風習を踏襲したものだということを知っているのは片桐だけだった――。
決して交わるはずのないタカラジェンヌとヤクザの組長、それぞれの十年を切なく濃密に描く。

続いて「娘役」

こちらは「男役」と違って、ファン側の視点も描かれている(ヤクザだけど)のと、やっぱり私のご贔屓が娘役さんなのもあって、ものすごく共感したりしつつで、めちゃくちゃ泣きました。
ご贔屓との出逢いって、本当に運命的だったりするよね。

ラストは、なんというか…無常な……!と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、長年中山可穂先生の作品を愛読してきた私は、途中から薄々予想していました…。
やっぱりね、という感じ。
だからこそ、そこに至る過程でめちゃくちゃ泣きながら読みました。

因みに、この「娘役」の半分くらいは、先日、日帰り遠征で新幹線が止まって帰れなくなって翌朝乗った飛行機の中で号泣しながら読みました。
お隣の方、ごめんね…。

一応、その時の記事はこちら

あと、のび太(野火のび ほたる)とレオンさんが同期っていうのがもう…えも…!
前作「男役」ではチャラエロかったレオンさんだけど、同期に見せる顔はやっぱり違うのね…。
えもが過ぎます…。
そして、ラキ様(薔薇木ばらき りょう)がねぇ…雪男って感じ…!
めっちゃ分かる…!
雪坦の私、まじで首が取れそうなほど頷いてしまったわよ。(比喩)

ミッチーさん(ひびき 未知也みちや)お披露目公演で、のび太の初舞台公演だった「燕斬りの与平」でラキのびお披露目ってのがもう、えもえものえも…。
ラキのびレオンは至高のトリデンテだよぉおおおお(幻覚)
ラキのびお披露目のデュエダン、あのスーパーリフトは美しすぎて溜息しか出なかったよね…(幻覚)

銀橋

愛と青春の宝塚小説第三弾! 
宝塚という花園の、酸いも甘いも知り抜いた生き字引のような専科のアモーレさん。
どこまでも渋く、成熟した大人のダンディズムを滲ませ、登場するだけで場の空気を締める――そんなプロフェッショナルな職人魂に憧れ、宝塚に入団したえり子。
音楽学校で分担さんだった先輩、花瀬レオが組替えで同じ宙組になり、落下傘でついにトップスターに就任。
レオンさんを幸せに卒業させるまでが自分の任期と思い定め、懸命にレオンを支えるえり子たち。
「本当に美しいものだけが、絶望している人の心に訴えかけて、人の心を救うことができる――こんな素敵な仕事がほかにあるか?
だから私たちのやってることはお嬢様芸ではなくて、つねに命がけの芸術なんだよ」
ひたむきに芸の道に打ち込むジェンヌさんたちの愛と青春を謳いあげた、『男役』『娘役』に続く魅惑の宝塚シリーズ第三弾!
解説・早花まこ(元宝塚歌劇団・雪組娘役)

さあ、そして三部作のラスト「銀橋」
まずこれ、あらすじでレオンさんが宙組に組替って読んで、

おいいいいいいいいいいいいネタバレえええええええええええええ

って天を仰いだよね…。
いや、レオンさんはトップスターになるだろうと思ってたけどさ…けどさ…。
まさか、組替するとは思わないじゃん?
だって、月組配属で、「娘役」のときに花組に組替したんですよ…。
そのまま花組でトップ就任すると思ってたよ…。
しかも、相手役はいままで全然接点がなかった星組のみずかちゃん(早桃さもも 水香みずか)じゃん?
いや、もう発表されたときは本当にびっくりしたよね(幻覚)

「銀橋」まで読み終えてから、中山可穂先生の宝塚三部作におけるご贔屓を確定させようと思っていて、のび太もめちゃくちゃ好きだし、「銀橋」読んだらジェリコ(鷹城たかじょう あきら)もアモーレさん(愛河あいか りん)もめちゃくちゃ好きになったんですけど。
レオンさんに逆らえなかった…。

パッパさん大好き下級生なレオンさん。
二期下のナッツにはちょっと悪い顔も見せる上級生なレオンさん。
同期ののび太とは等身大のレオンさん。
一期下で分担さんだったジェリコにはちょっと弱いところも見せるレオンさん。
学年が離れた相手役のみずかちゃんにはときに厳しいレオンさん。

もう、こんな色んなレオンさん見せられて好きにならないとか無理過ぎない…????(無理)

アモーレさんの最期は具体的に描かれないのがまた、これこそ中山可穂先生よな…って思う。

ジェリコが初めて宝塚歌劇を観劇した時にひとひらの羽根がその膝の上に落ちて、運命はジェリコを宝塚歌劇団へ導いたんだけど。
「銀橋」のラストでは、黒燕尾でレオンさんの胸にあるバラのコサージュがとれて、最前列に座っていた少女の膝の絵に落ちる。

嗚呼、こんな美しいラストシーンがあるだろうか。
そうやって運命は少女たちを宝塚歌劇へ誘い、そうやって宝塚歌劇団は100年以上続いてきたのだと胸震わせるしかない。

黒燕尾やデュエダンは舞台の神様へ捧げるもの、というのが本当に染みる言葉だし、この宝塚三部作を読んだ上で黒燕尾やデュエダンを観ると、ひたすらただひたすら泣く。
泣くしか出来ない。

きゃびぃさんの解説は、相変わらず愛があって素敵な文章で。
中山可穂先生の作品も、宝塚歌劇も大好きな私はこの解説だけでもなんだか実質無料だなって気分になりました。

この宝塚三部作を読んだ方、是非ご贔屓さん教えてください。
めっちゃ語り合いたい…。



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