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理解を諦めて、自分を大事にしたら「ありがとう」と言われた話

去年、noteを始めるきっかけの一つが、一昨年父が亡くなって、弟と母と相続やら片見分けで尋常じゃない揉め方をしたので、気持ちの整理がしたくて書いてみた、と言うのがある。

最初は、「どこもそんなものかな?」とおもっていたけれど、どうも我が家はやっぱり「普通じゃない」と言うことがこの2年でよくわかった。それは私の後半生にプラスにしかならないことなので、本当に良かったなとおもっている。

小さい頃は私のことを「お姉ちゃま」と呼び、いつも屈託なく笑い、私が中学受験に合格したときは、お年玉を全部注ぎ込んで当時はやっていた「ゲームロボット9」と言うおもちゃをプレゼントしてくれた弟が、いつの頃からか楽しそうじゃなくなった。

饒舌に話すのは、親戚の揉め事とか父がいかに古いか、などの文句ばかりで自分のことを話さなくなった。純粋な頃の彼を知っているから最初は「思春期の反抗期かな、でも元々はいい子なんだから、いつかちゃんと勉強して一人前になるはず」と思っていたら甘かった。

犯罪を犯すとか、誰かを傷つけるとか盗むと言うことはしないけれど、彼はどんどん楽な方に逃げていった。大学には全落ちして、簿記の専門学校に入って二年で卒業して、大手系列の車を販売する会社に入ったのは良いけれど、実はその二年で取得するはずだった簿記や情報系の資格を一切とっていなかった。

それから二年ほどして実家に就職して、あんまり何にもできないので(営業はできるけど)父が中国の工場に放り込み、独学で中国語会話をマスターして製造の方もなんとかわかって今に至る。

でも、都度都度、父とは喧嘩ばかりでその度に辞表を出すので家族は振り回されっぱなしだった。「どうしたいの?」と聞いてもただ黙り込んでしまう。父はただ、怒っている。母は、ただひたすら「お父さんが悪い」と父を責め立て、弟をただ庇う。私は疲れ切って家を出て、仕事のことはノータッチを貫いたのだけど、ことあるごとに父が私をなんとか会社に戻そうとするので、結局父が亡くなるまで、なんらかの形で会社に所属していた。

で、父が亡くなり、弟は「全部俺のにする。その分のお金は払う。株も売ってくれ、役員も辞めてくれ、形見は一任してくれ」と、言い張るので争うのを子供に見せたり、それでストレスが溜まって自分の家族に当たったりするのはどうしても嫌だったので、私は全ての条件を飲んだ。

そして、弟と理解し合うことを諦めて、「自分と家族を大事にしよう」と決めた。

そしたら弟が結婚して、母が家を出るという。「まるでリア王だな」と思いつつ、母も自業自得ではあるので仕方ないな、と考えていた。私は自分のものが弟の新居にあるのがなんとなく気持ち悪かったので、弟がいない隙にそれらを整理した。

ついでに母のものも整理したら、かなりなスペースが空き、弟が整理しあぐねている父の遺品が、そっくり入りそうなことがわかったので、「まあこれでいいだろう」と思い、私は自分のものを引き取った。

「あの家から解放された」と言う晴れがましい気持ちとともに。

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そうしたら、である。弟から「片付けてくれてありがとう」と言う言葉が来た。「ありがとう」なんて彼から言われるの、何年ぶりだ?

「片付け」はもちろん私のものではない。私のものは大した量じゃないから。引き出し7つ分の母の衣類のことだろう。何しろ、コートだけで23枚あったのだ。

びっくりしたし、嬉しかったし、彼の顔があまりにスッキリしているので驚いた。翌日には「これから色々あるので、相談に乗ってください」というメールが来た。大丈夫か?何が起こったのか?あれほど暴言を私に吐いていたのに。と思ったけれど、理解を手放すどころか絶縁すらよぎっていた私にはもやもやした感情が全く起きず、「ああ今、幸せなんだな」と思った。そして、それを「よかった」という自分がいた。

「ありのままの彼」を受け入れてくれる人が、きっと、実家にはいなかったのだ。私は随分、気を使っていたつもりだったけれど、やっぱりどこかでダメ出しをしていたのかもしれない。チャキチャキ仕事をしてしまう私は、彼にとってプレッシャーでしかなかったのかもしれない。

これから、新しい関係が始まるのだとしたら、それが光であって欲しい、と思う。

やっぱり父と母の作った家庭はだいぶ変わっていた。子供が子供のままでいられる場所ではなかった、と言える今だから、そこで育った私と弟がそれぞれの道を歩き、幸せになろうとしていることだけで、すごい!と思う。

私は「自分と、今の家族」を大切にしていく。彼も自分の道を行くだろう。その上で、新しい関係が始まったら、すごくいいな、と思う。

不眠症になっても、副腎疲労になっても、諦めなかった自分と「いま」。この道を歩いたからこそ射し込み始めたほんの少しの日差しは、とても暖かい。





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