かふぇらて

体調回復を目指しつつ時折書きます。音楽はSnowMan、KPOP(SUPER JUNI…

かふぇらて

体調回復を目指しつつ時折書きます。音楽はSnowMan、KPOP(SUPER JUNIOR、EXOなど)、を愛好。戦争、分断、家族とは何かなどに問題意識あり。SNS初心者。

最近の記事

「生まれる」ということ

「生まれる」は、不思議な言葉だ。「この世に生を享ける」、「誕生する」と同義だが、「生まれる」の「れる」を糸口に、「生きること」について少し考えてみたい。 国語文法的には、この「れる」は受身の助動詞である。古典の受身・尊敬・自発・可能の助動詞「る」「らる」は、現代語においては、「れる」「られる」に変化した。だから、「生まれる」は古文では「生まる」と表現された。かの『方上記』にも、「朝に死に、夕べに生まるるならひ、ただ水の泡にぞ似たりける」と生のはかなさが述べられている。「ゆく

    • 紫陽花に降る青黒い雨ー『カムカムエヴリバディ』の詩的な映像表現

      今日の『カムカムエヴリバディ』(第17話)は、岡山大空襲を描いており、内容的には見ていてとてもつらくなった。一方で、金太役の甲本雅裕さんの慟哭のシーンを初め、俳優陣の演技からは今日も感動をもらった。それと同時に、独特な映像表現の秀逸さに目を奪われた回でもあった。 甲本さんの迫真の演技については言わずもがな、ここでは一言だけ、上白石萌音さんの演技に触れておきたい。避難先で空襲の恐怖に怯えながら、安子は稔の写真をぎゅうっと抱きしめて、祈るように目を閉じる。そのしぐさと表情が相俟

      • 松村北斗さんの所作の美しさーー『カムカムエヴリバディ』の稔さんーー

        ここ最近、朝ドラ『カムカムエヴリバディ』を観ることが最大の楽しみだ。 三世代のヒロインのトップバッター安子を演じるのは上白石萌音さん。ミュージカル映画『舞妓はレディ』の時から、演じて歌って踊れるすごい新人が出てきたなあ、と注目しているうちに、あれよあれよとスターダムを駆け上がっていった。安子役も、安定の演技。それでいて初々しい清らかな女性像がちゃんと感じられるから、やはりただものではない。とにかく全体が丸くて小さくて柔らかく、しっかりした芯がある。透明感のある声も心地いい。

        • 『愛の不時着』 封印されたエンディングーー「NHKアナザーストーリーズ」所感ーー

          ※ネタバレあります※ 先月半ばにNHK BSプレミアムで放送された「アナザーストーリーズ 運命の分岐点」は、『愛の不時着』制作の舞台裏に迫った。タイトルは「愛の不時着〜国境を越えた大ヒットの秘密〜」。(放送日時2021.10.12(火)21時〜、再放送10.21(木)8時〜) この番組で流されたインタビューの中で、監督のイ・ジョンヒョの口から、『愛の不時着』のエンディングは当初の予定とは違うものになったという事実が初めて明かされた。私は『愛の不時着』のエンディングについて

        「生まれる」ということ

        • 紫陽花に降る青黒い雨ー『カムカムエヴリバディ』の詩的な映像表現

        • 松村北斗さんの所作の美しさーー『カムカムエヴリバディ』の稔さんーー

        • 『愛の不時着』 封印されたエンディングーー「NHKアナザーストーリーズ」所感ーー

          宇宙を抱いて

          誰かといると さびしいね あの子の中に ぽっかりと浮かぶ宇宙が さびしいね 私の中に ぽっかりと浮かぶ宇宙も さびしいよ あの子と私が 手と手を伸ばして  ふと 指先がふれあう時 お互いの中に浮かぶ 青暗い宇宙が響き合って よけいにさびしくなるんだ 冗談を言って 笑い転げたあとに 短い沈黙がおとずれる すると 笑う前より もっとさびしくなるんだ あの子も 私も 知らない どうして生まれてきたのか どうして死ななくちゃならないのか 死んだらどこへ行くの

          宇宙を抱いて

          詩とエッセイ 「遠い目」ーー引き揚げ者だった母ーー

          詩「遠い目」 母はいつも 遠い目をしていた 少し細めたまぶたの中の 茶色いガラス玉のようなつぶらな瞳 ガラス玉には ちゃぶ台や箪笥や窓の枠が映っているが それらは 母には見えていない ガラス玉は動かないまま どこか遠くを見ている 幼い私は 母の冷たく美しい横顔を注視する  いつものように 別世界にお出かけしている母の横顔 母の目には たぶん 遠い韓国の 地平線に沈む巨大な太陽が どこまでも続く林檎畑が 見えていた 母の耳には 夜空を伝う 砧の音

          詩とエッセイ 「遠い目」ーー引き揚げ者だった母ーー

          誰かひとり足りないよ

          3歳のわたし 太陽がカンカンと照りつける夏の庭にしゃがんで 何時間でもミミズを見ていた ジョウロでチョロチョロと水をかけたり、時々小枝の先でつついたりしながら 「あれ?誰かひとり足りないよ」 お兄ちゃんも、年子の弟もいる 今日も、大人たちが「愚連隊」と呼ぶ近所の腕白坊主たちと、元気に遊びほうけている お父さんもお母さんもいる でも この家の中には、誰かひとり足りないよ 5歳のわたし 子どもには広々と感じられるお便所の中で、 たたきの上をモソモソ動いてい

          誰かひとり足りないよ

          甘党が『ヴィンチェンツォ』を観ると…

          大の甘党の私。和洋中を問わず、世界中のスウィーツを節操なく愛してやまない。高級洋菓子から屋台や駄菓子屋のお菓子まで、美味しければ何でもよい。そして、一度ハマると、明けても暮れてもそのスウィーツが食べたくてたまらない日々が続く。一生モノのスウィーツは別として、通常、ブームの持続期間は2週間から半年くらいだ。 最近『ヴィンチェンツォ』を観た時、主人公やヒロインが屋台で「コイ焼き」を買うシーンが気になって仕方がなかった。 主人公は病気の母親に「コイ焼き」を買って手土産にする。ど

          甘党が『ヴィンチェンツォ』を観ると…

          お兄ちゃんへの鎮魂歌(レクイエム)

          少し悲しいお話だよ ううん、だいぶ悲しいお話だね 私のお兄ちゃんは、今で言う発達障害だったよ 軽い知的障害もあったよ 吃音もあったよ 身体が固くて正座ができなかったよ 運動も普通の子みたいにはできなかったよ それでいて、彫刻のように整った美しい目鼻立ちをしていたよ その当時、周囲の人間たちは、お兄ちゃんの障害を理解できなかったよ 父親は、ただでき損ないの息子だと思って、いまいましそうにしていたよ そんな息子を生んだ母親にもつらく当たったよ いつもいつもお

          お兄ちゃんへの鎮魂歌(レクイエム)

          最近見つけたステキな器たち

          お金はないけれど、時間はけっこうある。そんな日々、私はこよなく愛するスウィーツを作ったり、天然石やカレンシルバーを使ったワイヤーブレスレットの制作に挑戦したりと、モノづくりをマイペースで楽しんでいる。 今日の午後3時過ぎ、レモンの皮のすりおろしを入れたパウンドケーキをこしらえた。砂糖は三温糖で少なめに、ブランデーやバニラオイルを効かせて、バターはもちろんたっぷりと。オーブンの中でしだいに膨らみ、こんがりと焼き色がついて、甘い香りが家中に漂ってくる。中央が盛り上がって割れ目が

          最近見つけたステキな器たち

          牛乳瓶の中の絶望と希望ーーエルサ・ペレッティとの出会いーー

          ティファニーで活躍したジュエリーデザイナー、エルサ・ペレッティは、約半年前、2021年3月に逝去している。そんな故人と、私は数日前、全く唐突に出会った。 体調不良のために、昨年秋退職してからというもの、無収入になったおかげで、私はかなりの節約家になった。初めてフリーマーケットにも参戦した。そして、モノとの関わり方について、色々と考えるようになった。ミニマリストになったわけではないが、少なくとも、大量消費とは無縁になった。世の潮流からはずいぶん遅ればせではあるが…。 ところ

          牛乳瓶の中の絶望と希望ーーエルサ・ペレッティとの出会いーー

          『愛の不時着』のエンディング––「リアル」と「夢幻」が交錯する二重構造––

          ※ネタバレを含みますので、本作品をご視聴前の方はご注意ください 『愛の不時着』は今日もネットフリックス(日本)の総合10位以内に入っており、その人気は衰える気配がない。『冬のソナタ』が、韓流ドラマというすてきなコンテンツの存在を日本に知らしめた歴史的名作であったとすれば、『愛の不時着』は、韓流の映像作品が、世界的に通用する高価値を持つコンテンツへと見事な成熟を遂げたことを宣言するという意味での画期的名作と言えるのかもしれない。 今回、私は、今なおホットな『愛の不時着』のエ

          『愛の不時着』のエンディング––「リアル」と「夢幻」が交錯する二重構造––