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本読みの記録(2018)

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ブックレビューなど書物に関するテキストを収録しています。対象は2018年刊行の書籍。
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#幻冬舎新書

大阪は本当に大阪的か!?〜『大阪的』

◆井上章一著『大阪的 「おもろいおばはん」は、こうしてつくられた』 出版社:幻冬舎 発売時期:2018年11月 大阪論です。厳密にいうと「大阪論」に関する論です。これまで人々はどのように大阪を論じてきたか。その議論の紋切型を解体すること。それが本書の趣旨です。「大阪は、ほんとうに大阪的か」というオビの謳い文句が端的に本書の問題意識を表現しているといえるでしょう。 対象そのものよりも対象がどう論じられてきたかを検証するというスタイルは、著者がこれまで採ってきたおなじみのもの

国民の生活よりも大企業の利益〜『日本が売られる』

◆堤未果著『日本が売られる』 出版社:幻冬舎 発売時期:2018年10月 日本を世界一ビジネスのしやすい国にする。これは安倍政権が掲げる主要政策のひとつです。これまで何気なく聞き流していましたが、本書を読んでその意味するところを十二分に理解することができました。要するに国民一人一人の生活向上よりも企業の利益を優先するという宣言なのです。 周回遅れの新自由主義国家として日本は公共部門が管理統制すべき分野で規制緩和を行ない、市場原理の支配する領域を広げています。水、農地、森林