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本読みの記録(2023)

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ブックレビューなど書物に関するテキストを収録しています。対象は2023年刊行の書籍。
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記事一覧

ネンブツは自由そのもの〜『一億三千万人のための『歎異抄』』

◆高橋源一郎著『一億三千万人のための『歎異抄』』 出版社:朝日新聞出版 発売時期:2023年11…

吉本 俊二
8日前
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コロナ禍から見えてきたこと〜『家族と厄災』

◆信田さよ子著『家族と厄災』 出版社:生きのびるブックス 発売時期:2023年9月 家族とりわ…

吉本 俊二
3週間前

近代的人間像を超えた看護師〜『超人ナイチンゲール』

◆栗原康著『超人ナイチンゲール』 出版社:医学書院 発売時期:2023年11月 近代看護の母とし…

吉本 俊二
1か月前
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自由と平等の葛藤を友愛が調停する!?〜『街場の米中論』

◆内田樹著『街場の米中論』 出版社:東洋経済新報社 発売時期:2023年12月 このところ内田樹…

吉本 俊二
1か月前
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主体なき国家のなかで生きてゆく〜『新しい戦前』

◆内田樹、白井聡著『新しい戦前 この国の“いま”を読み解く』 出版社:朝日新聞出版 発売時…

吉本 俊二
1か月前

夏裘冬扇〜『歴史は予言する』

◆片山杜秀著『歴史は予言する』 出版社:新潮社 発売時期:2023年12月 週刊新潮に「夏裘冬扇…

吉本 俊二
2か月前
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クロモモ最後の句集〜『八月』

◆黒田杏子著『八月』 出版社:KADOKAWA 発売時期:2023年8月 博報堂を定年まで勤め上げた俳人の最後の句集。杏子が主宰していた結社「藍生」の有志によって死後刊行されたものです。交流のあった俳人や文学者にちなんだ句が随所に出てきます。師事していた山口青邨をはじめ金子兜太や瀬戸内寂聴といった人たちです。 瀬戸内寂聴が、黒田杏子の句から「私はいくつも短編小説になる核をもらった」と述べているように、互いに刺激しあいながらそれぞれの道を歩んでいたことがうかがえます。また永

在宅ひとり死は可能か!?〜『おひとりさまの逆襲』

◆上野千鶴子、小島美里著『おひとりさまの逆襲 「物わかりのよい老人」になんかならない』 …

吉本 俊二
2か月前
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窮境を乗り超えさせてくれた言葉〜『親密な手紙』

◆大江健三郎著『親密な手紙』 出版社:岩波書店 発売時期:2023年10月 「窮境を自分に乗り超…

吉本 俊二
2か月前
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ほのぼのとかひえびえとかも混じってる〜『にがにが日記』

◆岸政彦著『にがにが日記』 出版社:新潮社 発売時期:2023年10月 岸政彦という社会学者を知…

吉本 俊二
3か月前
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反骨精神をオブラートでつつむ!?〜『よもだ俳人子規の艶』

◆夏井いつき、奥田瑛二著『よもだ俳人子規の艶』 出版社:朝日新聞出版 発売時期:2023年9月 …

吉本 俊二
3か月前
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ニューアカの“バイブル”を文庫で読む!〜『構造と力』

◆浅田彰著『構造と力 記号論を超えて』 出版社:中央公論新社 発売時期:2023年12月文庫版 …

吉本 俊二
3か月前
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ポスト資本主義の社会をみんなで考えよう〜『柄谷行人『力と交換様式』を読む』

◆柄谷行人ほか著『柄谷行人『力と交換様式』を読む』 出版社:文藝春秋 発売時期:2023年5月 …

吉本 俊二
3か月前
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青空に自由はあったのか!?〜『幽玄F』

◆佐藤究著『幽玄F』 出版社:河出書房新社 発売時期2023年10月 人間は空を見上げて、なぜか自由を夢見る生き物です。しかし空は物理法則にがんじがらめにされた危険な領域でもあります。 「自由に空を飛んだことなど、俺は一度もない」。戦闘機を操る航空宇宙自衛隊員・易永透はそう思う。彼は空に取り憑かれた男ですが、そのことで自由を得たわけではありませんでした……。 本作の主人公の名は三島由紀夫の『豊饒の海』最終巻「天人五衰」に出てくる安永透にちなみます。そして三島が戦闘機に搭