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珍妙な空気と間がもたらすユーモア!?〜『間宮兄弟』

ある時期から、テレビのお笑い番組の影響なのか「その場の空気を読む」だとか「間が良い/悪い」だとかいうフレーズを一般人が日常会話で使用するケースが爆発的に増えました。「空気」や「間」というのは何とも書き言葉では説明しにくいもので、この文脈ではすぐれて演劇的な概念でしょう。

『間宮兄弟』というマンガチックな作品は、結局のところ、いわくいいがたい「空気」と「間」がもたらすユーモアを身上とする作品とお見受けしました。

主人公の間宮兄弟が、あこがれの女性2人を自宅でのカレーパーティに招待する。4人がカレーライスを食べ始めるときの奇妙な空気と間。あるいは、メンツを増やして行なわれた浴衣パーティでは、6人が横に並んで線香花火を楽しむ。最後の線香花火が終わったときの奇妙な空気と間。
登場人物たちが交わす会話は、時として、その内容よりも、そこで醸し出された「空気」や「間」の奇妙さだけを印象づけます。

この作品における森田芳光の人物配置と空間設計は、かつての名作『家族ゲーム』を想起させもしますが、あの作品に存在した社会性は、本作では希薄です。ただただ、不思議な「空気」と「間」だけが、綿菓子のようにフワフワと私の網膜の裏側で膨らむような、そんな映画でした。

晩年の森田監督がこの手の時局性に乏しい作品を多く手がけるようであったのは、今から振り返ってみても少し残念な気がします。

*『間宮兄弟』
監督:森田芳光
出演:佐々木蔵之介、塚地武雅
映画公開:2006年5月
DVD販売元:角川エンターテインメント

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