フリーランスは交渉も自分で
王「勇者よ、魔王を倒してきてくれ」
勇者「報酬はいかほどで?」
王「これぐらいでどうじゃ」
勇者「まあいいでしょう。ミッション完遂のあかつきには報酬に加えて軍人年金の受給対象になると考えてよろしいでしょうか」
王「うむ。帰還の翌月から生涯支給するぞ」
勇者「分かりました。それから病気の両親を残していくことになるので、報酬の一部を前払いで私の両親宛に送金していただきたい」
王「よかろう。ただし魔王を倒せずに帰ってきたら、その分しっかり働いてもらうからの」
勇者「ええ、もちろん」
王「ほかに気になることはあるか」
勇者「各種経費は別途支給ということでよろしいでしょうか」
王「何が必要か言うてみい」
勇者「まずは交通費。移動の魔法を覚えるまでは交通費もバカになりません」
王「毎月請求書を送ってくれれば翌月にまとめて振り込むぞ」
勇者「交通手段によっては領収書が出ない場合も考えられます。自己申告でよろしいでしょうか」
王「自己申告でよい。インチキするでないぞ」
勇者「はい、もちろん。それから宿泊費」
王「わしの名前でツケておいてもらえ。この朱印状を見せれば大丈夫じゃ。ほれ」
勇者「ありがとうございます」
王「高級ホテルばかりに泊まるでないぞ」
勇者「良識の範囲で行動いたします」
王「あとは何じゃ」
勇者「人件費です。戦士や魔法使いなど各種プロフェッショナルを雇う必要があります」
王「まあそうじゃの。人を雇ったら連絡せい。給料を振り込む」
勇者「わかりました。ただし、連中には私のほうから直接給料を手渡しますので、一旦私の口座にまとめて振り込んでいただきたい」
王「お前の魂胆は分かっておるぞ。あまり搾取するなよ。わしがケチだと思われるからの」
勇者「おっしゃる意味が分かりませんが良識の範囲で行動いたします」
王「うむ。では魔王を倒してきてくれ」
勇者「はい、行って参ります。あ、最後に一つ」
王「何じゃ」
勇者「有給は?」
王「フリーランスにそんなものないわ」
めかぶは飲み物です。