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失ったものは消えるわけじゃない。

※自死に関する記事です


大阪に帰省している。
昨日は高校時代の友人と十数年ぶりにカラオケに行った。
めちゃくちゃ楽しかったね〜!と笑って友人と別れ、幸せに浸りながら帰ったのに、布団の中では泣いていた。
帰省するといつも情緒が乱れる。


かつて私には親友がいた。
大学時代、軽音部の同じバンドで4年間活動した。
下手くそなボーカル(私)の隣で、他のメンバーが変わっても、ずっとギターを弾いてくれていた。
練習期間中は毎日行動を共にし、一緒にご飯を食べて一緒に眠った。
お互いの恋愛相談に乗り、俺にしとくか?いやーないわ。みたいなやりとりをし、絶対に付き合うより友達の方がいいよねと言いつつも、相手に彼女ができるとちょっと寂しくて、でも関係性が変わらないことが嬉しかった。
大学を卒業してからも関係は続き、ピンチの時は一番に連絡をして、むしろ落ち込んでる時なぜかタイミングよく連絡をくれた。その逆もあった。
お互いにとって大切な存在だった。
少なくとも私にとってはそうだった。彼にとって実際どうだったかは、今となってはわからない。

8年前、突然命を絶ってしまった。
GW真っ只中、夫と東北旅行へ向かう新幹線の中で知らせを受けた。
夢なんじゃないかと思った。視界がグラグラ揺れて、立っていられなかった。

あまりにも、あまりにも突然だった。
ご家族から理由を聞いた。遺書もあったらしい。
でも私には何も現実味がなかった。どれもしっくりこないし、彼が自死するなんて、想像もできなかったししたくもなかった。
仕事に悩んでいるとも、忙しくて音楽をやれないとも聞いていた。
それは社会人の多くが持っている悩みだと思っていた。
でも、辞めてやらぁこんな会社!と辞めるタイプなのに、ズルズル続けていてロックじゃないな、となんとなく思っていた。

その頃にはもう「彼らしさ」は失われていたのかもしれない。

通夜に集まった友人たちが口を揃えて、なんでこんなことしたんだ!アホか!と、本人を前に泣いた。
通夜から葬儀まで、気が狂ったように泣いた。体の一部が持っていかれたような感覚。
泣きすぎて自分も死んでしまいたいと思った。
斎場から出て見上げた空があまりに青くて、それすら腹立たしくてまた泣いた。

大阪にいると、そこらじゅうに彼との思い出がある。
突然呼び出されて行った居酒屋。
まだ夏じゃないのに唐突に花火をしたり、終電を逃して朝まで時間を潰した河川敷。
二人乗りで走った道。
こっちに帰ってくれば会える気がしてしまう。
何度か彼の実家に行って手を合わさせてもらった。
愛用していたギターに久しぶりに対面した。
でも、彼はいない。どこにもいない。
軽音仲間で集まっても、彼は絶対に来ない。
それがあまりにも悲しくて、寂しくて、辛い。
8年間ずっと、悲しみは形を変えることなく続いている。
私にできることはなかったのか。いや、なかったんだろう。私にも、他の人にも。
彼にとって私はなんだったんだろう。結婚してから連絡の頻度が減ってはいた。
それでも私にとっては、かつてと変わらず大切だった。彼がどう思っていたかは、もうわからない。

わからないけど、親友だった10年の間一緒に過ごした時間は、消えない。
思い出す度悲しいけど、風化しなくていい。忘れたくない。
今でも人生を迷った時、お前ならどうする?と彼に問いかける。
ダサいと思われない生き方をしたい。せめて。
もし自分が死んで、あの世で再会したら、こっちは死ぬまで生きたぞ!アホ!と殴ってやりたい。
まだまだ先の話。あと数十年待っとけよ、親友。

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