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なぜテック企業はマーケットシェアに拘るのか?

私が知る限り、ほとんど全てのテック企業のトップはその企業戦略の一つに、「マーケットシェアNo.1」を掲げます。売上や利益の前に、まずは利用顧客数、市場シェアだと。そして売上は後からついてくる、と。

これは、売り上げをないがしろにしているのではなく、最終的に大きな事業に育てるには、まずは自社サービスを利用する顧客の満足度を高め、その数を増やし、ユーザの声を元に更にプロダクトを改善する。を繰り返さなければ市場は作れないからだ、というメッセージだと思います。

そしてもう一つ大きな理由が、経営陣の頭にあるはずです。

それは、「当該事業領域における最大のデータ保有者となる」

そしてそれは、データを売ろうとか、本質を捉えず、”data is money”という流行り言葉にとりあえず乗ろうとかいう安易な話ではない。市場シェアが高まれば高まる程、扱うデータが加速度的に増加し、その結果、以下のように得られることが大きいからです。

  1. プロダクトの品質向上のためのヒントが増える

  2. より多くの顧客タイプや業界の知見が貯まる

  3. 協業できる、協業を求められる企業が加速度的に増える

  4. AIに機械学習させるための情報が増える

今はほとんどのテック企業、特にプラットフォーム系サービス事業者は、世界の顧客を相手にサービスを設計、運用しています。その環境においては、種々、様々なニーズや利用ケースが出てきます。それらの声に答えられる品質のサービス、プロダクトを開発するためには、なるべく多くのケース、データを集めることが、その助けになります。

前職のGoogleで、GenZeeが入社するより以前の、創業期2000年前後のこと。Googleの検索エンジンの、”検索精度を上げる”ことを狙って、その利用者を増やすために、最初は、検索エンジンを売るのではなく、Yahoo!の米国サイトに、”お金を払って組み込んでもらう”ことから、パートナーシップ事業をスタートしています。まだ開発初期段階だったGoogleエンジンの精度を上げるためには、”ユーザの手による生の検索ワードデータ”が必要だったのです。

また、2010年以降、長期のスペシャルプロジェクトに携わったことがあります。当時、英語圏における検索エンジンのシェアは圧倒的に世界一だったものの、日本では検索シェアはYahoo! Japanに負けていました。その優れた検索エンジンを、Yahoo! Japanに提供するという、社内でも議論を呼ぶはずなディール。本社の僅かな上層部で極秘で進めていたので、国内では知る人は4人だけ、というプロジェクトだったのですが、2年後その提携が発表されたときは、広告営業の部門からは大いにブーイングを受けました。なぜ敵に塩を送るんだ、と。

でも、Google本社の狙いは、漢字、ひらがな、カタカナがあり、同音異義語も多数という”日本語”という特殊な言語、読まれるコンテンツはほぼローカルメディアの情報という、特殊なマーケットにおける、Google検索エンジンの品質、精度を上げるために、Yahoo! Japanユーザの検索クエリも取り込むことは、世界最高の検索エンジン作りのためには短期的な広告営業=売り上げの競争よりも、長期的な視点で優先する重要事項だ、という判断でした。

この一例のように、プラットフォーマーたちは、品質改善、長期的な戦い、市場形成のために、データを集めたい、そのためにも、シェアは重要だ、と、現場にハッパをかけているんです。

ということで、なぜテック企業はシェアNo.1を目指すのか。

「その事業ドメイン(領域)に関わるデータを最大限集め、世界一のプロダクトを作り上げたいから」

以上、ちょっと専門的な話で、このnoteの全体テーマから徐々に離れていますが、、お読みいただきありがとうございます。関連する記事もお読みください。


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