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CCUSの近況と、広げた風呂敷は意地でもたたまない国のこと②

建設キャリアアップシステム(CCUS)と周辺の最新情報についての、その2です。国土交通省の公式HPについては、必要に応じてシリーズ初回noteより確認してください。今回は2.~3.です。

2.建設キャリアアップシステムの登録状況

くどいのは好みでは無いのですが、もう毎回繰り返しますよ。CCUSの第一目的は建設作業者の年収アップ・処遇改善です。

CCUSの実質的運用機関である一般財団法人 建設業振興基金のHPに6月9日付けで最新の運営状況について報告がなされています。毎月公表されるのですが、不満な点があります。収支の報告が無いんです。

ここに拘るのには理由があって、前回noteの冒頭にチラッと触れたのですがCCUSは大変な赤字を抱えて自転車操業している状態で、昨年秋に建設業団体から2度目となる巨額の寄付金を得てなんとか運営されています。掌握官庁である国土交通省と日建連、全建などの構成員が1年半会計監査をほったらかした結果の顛末です。寄付を受けた後は、きちんと監督しますという国交省の宣言もありました。ならば収支報告書類があってしかるべきです。たしか前年度から6.1億円の国費も投入されています。業団体からの寄付金はその元をたどれば、皆さんの会社が払っている会費であり、さらにその元は皆さんの売上ですから当然知る権利があるのですがね。

かように収支報告は開示されませんが、CCUSの登録技術者などのデータは熱心に公表しています。確かにこれらは収入の源泉となるので増えるに越したことはないのです。今月の報告からグラフを4枚紹介します。

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これらが共通して意味することは何かというと、ズバリ収入です。全ての登録に費用がかかります。トムロが一貫して言い続けていることですが、仕事をとるため、仕事をする度におカネが徴収されることが不満でなりません。ほかにもこういうビジネスモデルはあるでしょう。細かいところで例えると、有料で見積りを出して受注するとかね。ただ、CCUSはかかる費用がそんな比ではないんです。知っている方も多いでしょうからここで振興基金の単価表を示すことはしませんが、例えばその日の現場の入退場に元請けが全員×10円払う訳です。日当たりではそのほかにコインパーキング代とかあるでしょうが、勘定費目は全く異なる支出です。自分の経歴を積み重ねることにおカネを払う。退職するまで払い続けるんです。

さらに言うなら手書きの履歴書や出面なんて信じられないからカードタッチや顔認証しろってことですよね。後の項目でも触れますが就業経歴・資格情報も今のところ別システムで紙やら免許の画像やらを添付して入力させられてるでしょ。どれも面倒だし何なら誤魔化し利くじゃん、意味あんのって感じ。

ちょっと話が横道に逸れました。元に戻します。

確実にいえること。それはバカにならない費用(サンクコストも含む)を払っているのに2年経ってもシステムの恩恵を未だ受けられないということです。スーパーゼネコン、サブ位ならまだ擦り傷で済むかもしれませんが、地場ゼネコン、設備会社、個人事業主、工種でいうと営繕なんかは骨折かもしれません。

CCUSの恩恵やメリットって何だっけ? 年収アップ・処遇改善でしたよね。

実感ありますか。あるわけないですよ。普及してませんから。あなたの持っているそのゴールドカード見せたら日当3倍にならないほどには認知されていません。

例え話をもう一つ。普通自動車運転免許を取得して20年、週5日運転しますという人が二人います。運転技術は同じでしょうか。違う?違うとしたら何が違いますか?

その答えが上の4枚のグラフに示されています。まだ焦らしちゃお。

もう1枚資料を見てください。これは国土交通省のものです。

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元データは振興基金などから提供されたと思われる就業履歴数、事業者登録数、技能者登録数の累計が示されています。CCUSを根付かせるためには大変重要な指標です。特に技能者数、事業者数はそれぞれ318万人、47.2万者と母数がわかっていますので、100%にしたいはずです。

とはいえ、一気には難しいので技能者登録数は2023年3月までに100万人とされています。ポイントは期間と数値目標がはっきり定められているのは技能者数のみというところ。寄付金を得るまでは惨憺たる数値でしたが、さすがに次は無いので現在57万人となった増加ペースが保てれば私の試算ではおそらく達成できるでしょう。事業者登録数と就業履歴数は概ね技能者登録数に比例すると考えられるのでまあ、こんなもんかな。支出を絞りまくったので入力能力に限界もあるでしょうしね。

さて、振興基金の4枚のグラフにあって、国交省のグラフに無いものは何でしょう。長々と引っ張りましたがそれが答えです。

簡単ですね。現場ID登録数です。

見慣れない言葉ですが、管理者IDで現場登録をするので、現場ID登録数とはCCUSに登録された工事現場の数ということでしょう。トムロが探した限り公式文書に明示された目標値はありません。

今回のnoteの連載の中で最も言いたいことはここかな。公共工事と民間工事でCCUSモデル工事を設定したり、入札の際の加点にしたりと、新しい試みは実際に使われて初めて認知や実感を伴います。起案した官僚どもの想像では上手くいっても、現場がメリットを享受できるかどうかは始めてみなければわからない。まあ、ごく当たり前のことです。

38,644現場

建設業の投資額は50兆円を超えるといわれますが、官民合わせた建設現場の数は考えたこともありません。規模も金額も工種も様々でしょうし。例えば1億円の工事ですと500,000現場です。かたや2年半の実績が38,644現場。高く見積もっても本稼働したシステムの現場数としては少な過ぎます。

同じ期間、1年での比較のために試算をしてみます。
38,644現場を単純に1年当たりにすると38,644÷2.5≒15,458
でも当初は全く伸びていなかったので、割り増して16,000としましょう。(16,000÷500,000)×100=3.2%

はっきりいいますが、技能者登録数や事業者登録数は普及を示すものではありません。ただの養分です。何現場が管理者IDで登録されたか、普及を示すのはこの数値だけです。実際にCCUSが機能した証拠はこれだけなのです。国交省の資料に現場ID登録数が示されなかったのは都合が悪いから。仕組みは作ったけれど機能していないことは隠したかったのでしょう。せっかく振興基金が報告しているにもかかわらず、国と学識経験者の協議会資料で日の目を見ることはありませんでした。

普通自動車運転免許の答えもここにあります。それは場数(ばかず)です。例えると毎日同じ通勤経路の往復を続けた人と、グラベル・ターマック・サーキット・圧雪路...を縦横無尽に走った人とでは運転技術と経験内容が全く違うでしょう。

場数=現場数です。

つまり、現場ID登録数が大幅に増えることと、CCUSカードの色別年収が紐付くことが同時に起きなければ目的は果たせません。


3.建設現場におけるCCUS活用状況

38,644現場が恐ろしくわずかな数(約3.0%)なのだということを知らなければ、「発注者や元請事業者の規模によらず、様々な建設現場においてCCUSの活用が広がりつつある」という構文も成り立つわけです。

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十分姑息な手口ですが、問題はまだあります。民間工事の方がCCUS登録現場数が多いということ。公共機関の保守派度合が如実に表れています。変化をいとわず、言い出しっぺが頑張らなければ末端の士気も高まりようがないというものです((笑)) 地方自治体の浸透が遅れているので喝を入れるとした報道がありましたが、徹夜で文章書きながらこういう小細工で保身を図る様子をあばいてしまうと、妙なテンション発動で笑いが止まりませんよマジで

数値について補足しますと、左表の合計は28,460現場。注記に7,221現場あります、合計すると35,681現場です。数値が一致しないのは、集計期間が異なるためです。建設業振興基金は2019年1月~2021年5月まで。国交省の集計期間は2019年4月~2021年3月までと短いのです。

時につじつま合わせが必要なのは同感ですが、完璧にしてください。今後雑魚扱い決定です。

次号へつづく

ありがとうございます