見出し画像

#08.開墾の味方「サツマイモ」

2018年5月5日
今回植え付けたのは秋の味覚の代名詞『サツマイモ』である。夏野菜の植え付けもまだなのに、なんだか気が早い感じもする。

サツマイモは戦中食として日本中で食べられていた野菜だ。戦後を経験した世代からは「あの頃はサツマイモくらいしか食べるものがなかったから、あの頃に一生分食べた。」なんて話を聞く事がある。

実際の話、当時は畑だけでは食料生産が間に合わず、学校のグラウンドを無理やり掘り起こして、サツマイモ畑として使っていたなんて記録もある。

家庭菜園の本を見ると、サツマイモの特徴として「肥料がいらない」ことが第1に挙げられている事が多い。ポイントは「肥料がなくても育つ」のではなく「肥料が多いと育ちが悪い」というところだ。

栄養も何も無いグラウンドの土で作るのは、とても合理的だったのかも知れない。他の作物は作れなかっただろうし。サツマイモはツルまで食べられるから、食糧難の時には重宝しただろう。

さて、菜園だろうが花壇だろうが、養分が必要なら肥料を投入すれば手っ取り早い。堆肥も腐葉土も化成肥料も、ホームセンターに行けばドカッと積んであって、いくらでも買える便利な時代だ。しかし土の養分を減らさなければならない場合、打つ手があるのだろうか。サツマイモを作るに当たって一番の疑問点はそこだった。

10年単位で耕作されていない放棄地だった開墾農園だが、放置されていた土地というのは養分に富んでいることが多い。耕作放棄地では毎年土の養分を吸って大量の草が伸びるが、それらは根から吸い上げた養分に加えて、光合成によって新たに栄養を作り出し、秋になると枯れて土に戻る。
結果として、草が吸い上げた量以上の養分が、土に再投入されることになる。農家が毎年、農場に養分を継ぎ足さなければならないのは、人間が作物として植物の一部を持ち出してしまうからだ。

人間が養分を外に持って出なければ、土地の養分は毎年勝手に増えていく。肥えた土地には次第に大型の草や樹木が生えて、自然はより豊かに発展していく。自然はつくづくよく出来ていると思う。

ましてこの開墾農園は耕作放棄地ではあったものの、毎年草刈りだけは行われていた。草は葉だけを刈られると、逆境に負けじとより多くの葉を出すものが多い。多くの葉が出ればその年の枯れ葉も多くなり、分解されて土を肥やす有機物も倍増する。その上、土地全面に日が当たるために雑草の繁殖する効率も高い。

「いい土」の条件はいくつかあるが、養分だけに着目すると、耕作放棄地はまんざら捨てたものではないと思う。サツマイモを作るとき以外は。

キチンと測定したわけではないが、おそらくサツマイモを作るに当たって肥えすぎているであろう土壌に、今回は一つ工夫をしてみた。


先日大豆を植えた隣に、2畝ほどサクッと立てた。肥料は一切投入しないが、代わりに大量の籾殻を投入する。

説明不要とは思うが、籾から玄米を取り出したときに出るのが籾殻である。田んぼの多い中山間地域では1年中、無料でほぼ無限に手に入る資材なのだが、なかなか扱いに困る代物だと思う。ほとんどのコメ農家は焼いて処分しているのではないだろうか。

特徴として水をはじくこと、燃えやすいことなどが挙げられるが、畑で使う場合はとにかく「分解されにくい」ことが大きな特徴だと思う。

有機資材にはC/N比(炭素率)というのがあって、これが20を境に高ければ高いほど分解が遅い。鶏糞は7~10くらい。牛糞堆肥が15~20くらい。対して籾殻は70を超える数字をたたき出す。

詳しい話をすると記事を一本書ける長さになってしまうので割愛するが、分解されにくい資材を投入されると、土中微生物は土中の窒素を使ってこれを分解しようとする。窒素は肥料の三大要素と言われるほど重要な養分で、サツマイモが生育不良を起こす主な原因らしい。

つまり、籾殻を土に混ぜると土中の窒素分を一時的に減らして、擬似的に土が痩せた状態を作ることが出来るらしいのである。


サツマイモのツル。今回は「紅あずま」という品種を買ってみた。サツマイモはホクホク系もネットリ系も大好きなので、作りやすいとの評判だけで選んできた。

買ってきた段階で結構シオれているんだけど、これがデフォルトなんだろうか。


穴を掘って、ポンと置いて、植える。サツマイモは定植がラクだ。


10本ほど植えた。畝の中央に寄っているのは、ツルが長く伸びるからだ。ツルを逃がす場所を確保しておかないと、後々ひどい混雑が予想できる。


ちなみに、ご近所さんにサツマイモを植えている人はたくさんいたのだが、籾殻を直接土に鋤き込むなんて事をしている人は残念ながらいなかった。皆さん他の野菜の作付けを常にしているので、土地の養分は常に枯渇気味だ。

タダで手に入る資材だけで作付けしてみた今回のサツマイモ。まずは農園の隅をツルで覆い尽くしてくれると嬉しいな。


#農業 #家庭菜園 #有機農法 #サツマイモ

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?