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中央道八ヶ岳PAで感じた、場づくりの魅力

中央道に「八ヶ岳パーキングエリア」というパーキングエリアがある。

都心から、自分が住んでいる富士見町へ車で戻る際、ちょうど小淵沢ICにたどり着く手前にあるパーキングエリア(PA)である。

見た目はごく普通のPA。駐車場は比較的大きいものの、大型のサービスエリアのような目玉アトラクションや、スタバのような有名チェーンが入っているわけでもない。

が、このPAは、他のPAとどこか違う。


PAに着いて車から降りると大抵トイレへ行くと思うのだが、まずトイレに入ると、飾られているのがドライフラワーやハーブ。洗面台には大きな花瓶が置かれ、「今日の花」という形で活けた花の名前が丁寧に記されている。そしてトイレの壁面にはシーズンに応じた飾り付けが施されている。
最新鋭のトイレというわけではないが、飾り付けが凝っているだけで他のPAとの雰囲気(あと香りも)は随分違うものになる。

物販や食事ができる本館の方へ足を運ぶと、綺麗なディスプレイとオリジナル商品の多さ、多様さに目がいく。
「八ヶ岳パーキングエリア」という名前だけあって、八ヶ岳の素材を使ったパンや乳製品、野菜、肉類など、様々な商品が並んでいて、PB商品のようなパッケージングが施されている。
照明を落とした少し落ち着きのある店内の雰囲気も加味されてか、これらの商品にさらなる統一性を与えているように感じる。
パンの種類も豊富で、普通のベーカリーと同じレベルのものが置かれている。

そしてコーヒーはネルドリップ式。最近では「本格コーヒー」と謳った看板の書かれたPAも少なくはないが、どれも「そうかな?」と思うようなものばかり。
が、ここのコーヒーは多少の待ち時間はあれど、ネルドリップでゆっくり淹れてくれる。値段も張るが量は多め。自動販売機のコーヒーとの差は歴然である。

食事のメニューも豪華。パーキングエリアといえば、ラーメン、そば・うどん、カレー、カツ丼というイメージしかないが、ここの清里カレーは農場のメニューを再現したような内容で、カレーにベーコンや大きなソーセージ、夏野菜などをトッピングした彩りのあるメニューだ。
こちらも値段は通常よりも高いが、写真のインパクトもあってかついつい手が伸びてしまう。

そして一番驚いたのが、店員の対応。

これまでパーキングエリアで店員の接客態度について特に関心を持ったことはなかったが、そんな自分でも「何か違う!」と初見で思ってしまうぐらい違うのだ。
まず食事スペースに食券を持って並ぶと、店員が丁寧に列を管理しながら誘導してくれる。一人では足りない場合は、すぐに他の店員がサポートに入るチームプレイも時折見ることができた。
列に並びながら物販コーナーの方に目をやると、店員が歩き回りながら陳列しつつ、お客さんに声をかけたり販売促進の宣伝をしている。声も大きすぎず小さすぎず、とても丁寧。
そして物販のレジでは、これまた店員さんの対応がとても丁寧。
どこかのレストランでお会計でもしたかのような対応。コンビニかそれ以下としか期待していない状態でいくと、「ん!?」となってしまう。
あまりにも良い対応なので、思わず
「このパーキングエリアの対応は素晴らしいですね」
とレジのおばちゃんに話しかけたら、
「お客様にそう言っていただくために、毎日頑張っていますので」
という答えが。おばちゃんっ!(泣)

そして最近びっくりしたのはアイスコーヒーをオーダーした時。
アイスコーヒーを受け取って飲もうとストローに口をつけたら、なんと紙ストローだった。
昨年からプラスチックゴミに対する世界的な関心が高まっていて、アメリカのスターバックスなどもプラスチックストローを段階的に禁止していくというニュースが話題を呼んだが、八ヶ岳PAは今年の早い段階から紙ストローになっていた。
別にパーキングエリア・マニアではないので他でもやっているところはあるのかもしれないが、全国的にも珍しい方なのではないか?
“高速道路の休むところ”という、そういった取り組みとは一見無縁に思える場所なだけに、この取り組みは衝撃だった。


パーキングエリアというハードを可能な限り創意工夫しながらカスタマイズし、オリジナリティのあるサービスや商品を考案、統一性のある形で提案し、顧客との会話を楽しむことができるくらいの接客でコミュニケーションを続けながら、自らの社会的役割も見据えた形で、日々の運営を改善していく。

コミュニティー作りにも通じる重要な要素を見ることができる場所だと感じた。
こういった取り組みを続けるには、意識的に動き仕掛ける人がいるはずだし、その意識の共有をスタッフ間で意識的に行なっていないと、継続はなかなかできないはずだ。

意外な場所で受ける刺激は記憶に残る。そしてそれが一過性のものではなく、次に訪れた時も継続されていたり、向上していたりすると、好意へと変わる。そして定期的に訪れたいと思い、人に伝えたくもなる。

なーんて、ちょっと大げさかもしれないが、そんなブランドコミュニケーションにもつながる基本的なことを、ここに来るたびに考えさせられてしまう。


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