見出し画像

京都エッセイ(12)京都でよく行った場所、お店

 前回のエッセイでは緑色について書き、『糺の森』を紹介した。

 今回は糺の森以外に自分がよく言っていた場所について、朝昼夜それぞれ1つずつ、計3つ紹介する。

『京都岡崎公園』


 まずは朝。窓のそばで寝ているため、陽の光で目を覚ますという健康的な起床ができる。一杯水を飲んでからトイレに行き、軽くシャワーを浴びてから着替える。そうしている間にお腹が空くが、一旦我慢。

 自転車にまたがり何度も鳴るお腹をさすり、つねるなどして堪えながら、鴨川沿いを南下していく。聖護院を通りすぎ、警察署手前で少しスピードを落としながら通過。美味しいカレーパン屋の始業の準備で漂う匂いを無視して左に、東へ曲がる。見えてくるのはみやこメッセだ。

 だけど目的地はこっちではない。

 北側にある蔦屋書店の前だ。

 夏の暑い日はパラソルが付いている机、日差しがキツくなければ芝生の上に座る。ここでスタバやファミマで買ったご飯や飲み物をいただく。もう少し早くカレーパン屋が空いてくれたらなぁとはいつも思っていた。

 腹を満たした後はひたすら読書か執筆。流石に芝生の上では書けないので、ここでは机があるところに移動することが多かった。しかも必ずといっていいほど外の席。

 岡崎、と呼ばれるこのエリアはひらけたところにあって、芝生が多いせいか、朝からお子様たちがはしゃぎ回っている。少し離れたところではそれを見ている両親らしき人たち、さらに離れたところではダンスの練習をする若者や談笑するカップル。中には老夫婦もいたりして、皆思い思いに過ごしている。

 陽光に照らされて緑色に光る芝生、そこに影を作る樹、空には青空。まさに幸せを絵に描いたような風景がそこに広がっている。

 それを見るのが好きだった。そんな風景の中で、一人本を読んだり作品を書いたりする。風景の一部にならずにただ眺めることのできる蔦屋書店の前はお気に入りスポット。そこで生まれた作品や、作品のアイデアは少なくない。

 岡崎公園ではフリーマーケットや、お祭りみたいなものもたまにやっていて、出店が並ぶ。そうなると平和な様子は一変し、人で賑わう。そういう日は全ての店を一瞥するだけして帰ることもあった。

 僕が見たいのは、騒ぎではなく平穏だったのだ。

 平常時も子どもは騒いでいることは少なくなかったけど、それも平穏を形作る一部だった。

 岡崎公演付近には、動物園や美術館、そしてセレクトショップ的な側面のある蔦屋書店、スターバックスなど文系、美術系にはたまらない場所となっているので、良かったら行ってみてください。

 その平穏さを味わえば、いろんなことが軽くなったような気がします。夕方の夕暮れていく風景もいいですが、一番のおすすめは緑が光る朝からお昼です。

カフェ『COUPE』

 読書or執筆を終え、またもやお腹をさすったりつねったりする頻度が多くなると、また自転車にまたがる。今度は北上。松ヶ崎に向かう。当時でいうと家から徒歩圏内のところである。

 高野の阪急洛北スクエア(exカナート洛北)のすぐ西にある大きな橋を渡って、ガソリンスタンドとKYOTO COOPの間の細い道を通ると見えてくるのは、松ヶ崎疏水。数年前に京都本に選ばれていた小説にも登場した場所である。春になれば桜が咲き、夏は緑の葉、秋は落ち葉や枯葉が空気を彩る素敵な空間。

 だが目的地はここではない。

 松ヶ崎疏水を通り過ぎて、京都工業繊維大学の西、四角形で言うところの左下みたいな出口の手前で止まり、5秒ほど西に歩くとあるのがお昼の目的地『COUPE』

 ここでお昼ごはんをいただく。

 水色の外観がまず目に飛び込んできて、お腹が減って余裕のなくなった心を癒してくれる。そしてその前には机がある。が岡崎公園とは違ってここでは外では食べない。階段の手前にある日替わりメニューを確認して店内へ。

 忘れていたが、だいたい行く前には予約をする。日替わりメニューはインスタで先に情報を見ておいて、電話で予約すると良い。十席にも満たない店内には京都工業繊維大学の学生や、近くにある左京区役所の方、近隣の住民がほぼ必ずといっていいほどいて、満席なことも少なくないからだ。

 そうなるともう家の近くのローソン弁当を食べるほかなくなってしまう。

 運良く座れ、お願いしておいたメニューが届くまで、なんとはなしに店内を見る。薄い茶色の木の床に白い壁。その前にクッキーなどのお菓子が置かれた棚や、ハンドメイドやそれを作るお知らせ、または主張の激しくないおしとやかな宣伝が置かれた棚があり、そのどれもが喧嘩せずに調和している。朝に岡崎公園でたっぷり幸せを味わって来たが、店内にいるとそれはまだ冷めやらない。

「お待たせしました」と黒いランチョンマットの上に置かれる木の皿、そして料理。どれもが雰囲気を邪魔しない見た目と色味で心が落ち着く。

 ごはんと数品のおかずで構成された料理はどれもが美味しい。カフェで出てくるすでに完成されていて出すものとは違って手作りの出来立てが味わえる。決して見た目は豪華なメニューではないが、普段コンビニ弁当ばかり食べる舌には、ごちそう以外の何に例えるかわからない。足りなくなる成分を野菜やスープで補うことができるため、体にとてもいいのも良い。

 店内で食べる理由は雰囲気を味わいたいというのももちろんあるが、それだけではない。

 店員さんが好きなのだ。

 ことわっておくがもちろん恋愛的な意味ではない。

 カウンターに立つエプロン姿の彼女は、忙しそうに、またはテキパキと料理を作っているときが多いが、手が空くとよく話しかけてくれた。美味しいおかずの作り方を教えてくれたり、本やイベントの情報を教えてもらったり、それ以外にもたくさんの他愛ない話をさせてもらった。

 普段先輩と話すと創作や社会への不安や悩み、愚痴などがほとんどだが、店員さんとはそんな話はしない。そうすることで心が落ち着くのだ。なんだったら店員さんが他の人とお話しているのを聞いているのでも癒される。

 人の声には力があるなとこのお店で何度も思わせられた。

インドカレー屋『タージマハルエベレスト下鴨店』


 お腹も心も満たされたところで、後輩や先輩がたに連絡し、遊びに行く。

 本当は前日からや遊びに行く前に電話をしておいたほうがいいのだろうが、仲のいい方達は皆総じて時間にルーズな人が多い。

 朝早く電話をすれば寝ていることがほとんどだし、こんな急に遊びに誘っても大概は暇している方達ばかりだ。予定があったとしても空いている時間を教えてくれて会ってくれようとするし、元々あった予定に付き添わせてくれる。

 たとえ興味のない予定だったとしても、暇が潰せるだけ、誰かと時間を過ごせるだけで贅沢だ。それに新しい興味や知らないものに触れる機会が多いのもとても良い。僕なんかは凝り固まってしまうところがあるから、変わった人や場所や経験ができ、そこに導いてくれる人たちには感謝しかない。

 遊びが終わって、夜ご飯に行く。遊んでいた場所や人によって行くところは様々だが、今回は後輩とよく行っていたインドカレー屋を紹介する。

 松ヶ崎疏水を通って北大路通を西へ進む。といってもほんの数分、下手したら数十秒くらいだが。ガソリンスタンド、セブンイレブン、郵便局、パン屋を通り過ぎると見えてくるのは『タージマハルエベレスト』

 関西ではまぁまぁ有名なインドカレーのチェーン店だ。だが僕たちはこの『タージマハルエベレスト下鴨店』によく足を運んだ。

 理由は複数ある。まず、来すぎて顔とメニューを覚えられてしまった。

「イラッシャイマセー」とどこか他人行儀な(店員だから当たり前だけど)ふうに言われたかと思えば、顔を見てパッと明るくなる店員さん。

「アラァ、イラッシャイ!」声もどこか機嫌が良く聞こえる。この店員さんがトニカクカワイイのだ。

 メニューを注文するときも、「オニイサンハコオリナシ、ショクジトイッショネ」とこちらが言っていないことまで読み取ってくれる。(毎回言っていたからではあるのだが)そのときのニコッと微笑むのがカワイイ。

 ことわっておくが店員さんは男性である。

「ハーイ、オニイサンがオオモリデ、オニイサンがフツウネ。アッコレサービス」となにかとサービスしてくれるそのときの笑顔なのにさらに微笑むのがたまらない。

「オカワリハイッカイハタダ」

 忘れてたと言わんばかりに、厨房からわざわざ顔を出して言ってくれる。そのひょこっと感顔を出すために掴んだ柱をちょこんと掴む手もアザトカワイイ。

 僕はよくインドカレー屋さんに行くわけではないので比較できないが、味はもしかしたらインドカレー屋はどこも同じなのかもしれない。だが何よりその店員さんに会いたくて来ている。

 食べ終わった後の「イツモアリガトウネ。マタキテネ。マッテルヨ」と、恋人になる前の関係性の人に「また会おうね。絶対だよ。約束!」と言われるようなテンポ感も気持ちいい。

 好きな場所についての文章を書いていたら、行きたくなってしまった。

 次の京都に行った際はまた寄りたい。

 いや、会いに行きたい。

今回紹介した場所


岡崎公園 京都蔦屋書店
(サイト)

京都岡崎公園



COUPE
(Instagram)

COUPE


タージマハルエベレスト 下鴨店
(Instagram)

エスタージマハルエベレスト 下鴨店

※写真はそれぞれネットでダウンロードしたものです。自分で撮ったものではなく、また現在の写真ではないため、営業時間やアクセス含めサイトでご確認ください。

この記事が参加している募集

休日のすごし方

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?