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偶然の幸せ

京都に行く前にちょっと淀屋橋で腹ごしらえをしようと街を歩いているとEl Ponienteという気になる赤い縦看板がひょっこり顔をのぞかせていた。
建物の正面に回ってメニューを見てみると「魚貝の15分間スープ」という気になる文字が。

「魚貝の15分間スープ」といる気になるメニュー

野生の勘を信じて店に足を踏み入れるとメキシコにでもいそうな小柄のラテン系白人給仕がにこやかに迎え入れてくれました。店内はそれ程大きくはないものの2つのテーブル席を残して満席(一つは予約席でした)。予約なしだったのに運よく入れたのでした。

土佐堀川沿いで窓が大きく取ってあり、まるで絵のような風景が目の前に広がります。

窓から見える赤が印象的な中央公会堂

魚料理の印象が強く残っており、夫婦二人とも「魚のランチ」を選択。

丁度店の雰囲気に馴染み、壁に掛かった少し昔のスペインの風景を収めた写真を眺めていると、店に入るきっかけとなった「魚貝の15分間スープ」が運ばれてきました。ムール貝、イカ、小エビ、アサリなど具が惜しげもなく入っており、こうしてブログを書いていてもまた涎が出てきます。

それぞれのエキスが溶け出して幾重にも旨味が押し寄せてくるような深い味わいのスープとなっている一方、その名の通り、煮たて過ぎていないからなのか、個々の具材もそれぞれ持ち味を失わずに存在しており、それらの具材を口に含むと、その取り合わせに応じて様々な味わい、食感、匂いのアンサンブルを楽しめる絶妙な一皿でした。前菜から胃袋を掴まれてしまった印象です。

個々の具材が愛おしく思えるスープ

二皿目はメインの「函館産鱈・ニンニクの茎のクリームソース」
恐らく、鱈を一度小麦粉でまぶしてソテーしてからクリーム煮にしていることから、鱈の旨味が閉じ込められていて、口に含むと、行ったことがないのに、この鱈が育った函館の豊かな海や山が思い浮かぶようです。そしてわき役であるはずのニンニクの茎とアサリが自己主張しすぎず油の乗った鱈の身を上品に引き立てて、全体として濃くなりがちなクリーム煮がしつこすぎず、最近食が細くなりつつある妻もいつの間にペロッと平らげてしまっておりました。


心憎い脇役のニンニクの茎とアサリ、北海道産鱈は幸せ者

何とこのランチコースにはデザートと食後の飲み物まで含まれておりました。驚きの陣容です。ピスタチオのアイスクリーム、アーモンドのタルト、プリン、チョコレートのテリーヌという最強の布陣でもう何も言うことはありません。特にプリンは硬めでメキシコにいた時によく食べていたヘリカージャを懐かしく思い起こしました。

メキシコを思い起こさせる硬いプリン

懐かしいと言えば、出迎えてくれた白人の給仕さんはスペイン人で、どいう訳か我々に「スペインと何か関係があるのですか」とたどたどしい日本語で尋ねてきました。妻はここぞとばかりに「我々は6年弱メキシコに住んでいたことがあるのです。それにしてはあまりスペイン語は上手くないのですが。」とスペイン語で答えると驚いた顔をしつつ、恥ずかし気(?)にスペイン語で返してくれて、スペイン語圏の温かいおもてなしを久々に楽しむことができました。

白を基調に絵画や写真、鮮やかな卓上花も設えられた温かい印象の店内

その日は、実は夜にメインイベントが或った筈なのですが、このまま家に帰ろうか、と思ってしまうほど充実したお昼となりました。ありがとうございました。

<基本情報>
El Poniente
https://www.elponiente.jp/


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