鼓堂 呂以

食べること、旅をすること、異国で暮らすことに惹かれます。一方で、同じ環境でぬくぬくと過…

鼓堂 呂以

食べること、旅をすること、異国で暮らすことに惹かれます。一方で、同じ環境でぬくぬくと過ごすことが好きな一面もあります。半世紀を生きてきましたが、ここらで何かを発信したいと思うようになりました。気の向くまま、思いつくままに認めてみたいと思いますので、お気軽にお立ち寄り下さい。

最近の記事

筋肉痛と鳥のさえずり

約2か月ほど前、やるべきことは全てやったと思える状態で挑んだゴルフコンペで、結局今までと同じようなスコアしか出せず、失意の内に帰宅しました。そんな私を、妻は、「日本人はスコアのことしか話しをしないじゃない。あの人のスコアはどう、それに比べて自分のスコアは3つ下だったとか、ベストスコアから10打も悪かったとか、まだ100が切れないとか・・・。そんなのどうでもいいじゃない、皆でゴルフをしていること、そのものが楽しいんじゃないの?」と、慰めなんだか馬鹿にしているんだか良くわからない

    • ダイニングテーブルセット

      会社から帰ってリビングを見ると何かすっきりしています。更に良く見てみるといつも4脚あった馴染みの椅子がなくなって、ベランダテーブルセットの2脚の椅子にすり替わっていました。ここ数週間妻が検討していたダイニングテーブルセットの4脚の椅子の張替え計画が実行に移されたのです。 妻はこうした家庭内装飾の細かなアレンジが好きで、大阪に住んでいた思い出にもなるので、引越しをする前に、是非前から気になっていた東大阪の家具修理店で椅子をすっきりリノベーションしようと意気込んでおりました。こ

      • こどもの日

        いつものように近所のゴルフ練習場で午前の基礎練習をして身体をほぐし、併設のカフェテリアで昼食をとっていると、「今の日本が良くないのは、子供は地域で育てるもの、という意識がすっかり無くなってしまっていることなのよ」と話す初老の女性の話し声が聞こえてきました。窓辺からは日の光が差し込んでおり、その磨き抜かれた窓越しに艶やかな黄緑色の今にもこぼれ落ちてしまいそうな葉を風に揺らす木々が見えます。 毎年、こどもの日を迎えると、私は切なさというか、チクッとさされるような罪の意識を覚えま

        • 靴磨き

          正直なところ、私はつい数年前まで、靴磨きをしたことがありませんでした。そもそも、私は面倒くさがり屋で、服は脱いだら脱ぎっぱなし、物もなかなか所定の位置に片付けることができず、散らかりっぱなし、とルーズ極まりありません。それを尻ぬぐいのようにして後を追いかけて片付ける妻にいつも叱られています。そんな私が何故靴磨きを始めたのでしょう。 メキシコ赴任が終わることが決まり、後任がメキシコに来た頃のことでした。私の赴任にあたっての責務はメキシコでの新会社設立に際し、管理面の様々な仕組

        筋肉痛と鳥のさえずり

          似非の椅子座禅

          月一回土曜日に通っている仏教講座の中で、講師であるドイツ人禅僧から時々椅子座禅を促されることがあります。私のような凡夫は当然ながら色々と誤解をしながら生きてきているのだと思うのですが、その教えの中で一つの気付きがありました。これまで、座禅においては自分の内面に集中することが大事だと思っていたのですが、そうではなくてむしろ周囲がどのような世界で、自分はその中でどう在るのかという、周囲の中の自分の在りようを感じることが大切だと仰るのです。ああ、それで座禅の際は目は完全に閉じるので

          似非の椅子座禅

          山崎

          私はここ数日、今か今かと当選のメールを待っています。 3/15(金)と4/7(日)にサントリーシングルモルトウィスキー山崎 Story of the Distillery 2024 EDITIONの1本購入権の申込みをしたのです。 3/15は、閑職とはいえ一週間の会社勤めを終えた後、気力を振り絞って2時間もかけて深夜に申込みを完了しました。4/7は東京で会社の東西部署合同ゴルフコンペに参加した帰りの新幹線で、1時間掛けて応募しました。何故、たかだか1本の購入権の応募に1時間も

          パーコレーター

          メキシコに駐在して4年目の春、新型コロナウイルスが襲ってきました。我々はグアダラハラに住んでいたのですが、メキシコシティが先に恐ろしいほどの被害を受け、私の会社の従業員の中にも、知り合いや親戚が亡くなったというような気の毒な方が、何人もいるような状態でした。こうした事態を受けて、すぐに外出禁止令が出される等、一時は普段車や人が行き交うメイン通りも人っ子一人いない状況となり、我々は遠く離れた異国で一体どうなってしまうのだろうと途方に暮れてしまっておりました。 その後コロナの流

          パーコレーター

          おじさんからのドラム

          まだ始めてから1年半しかたっていない若輩者で、ドラムを語るなんて10年早いと言われそうですが、10年も待っていたら60を優に超えてしまうので許して下さい。 人生の一つの区切りと思われる還暦まで、もう小学校に通う位の時間しかないことに危機感を覚え、楽器を始めたら何か気分も変わるかもしれないと、職場近くの音楽教室に体験レッスンを受けに行きました。以前マレーシアに赴任していた時、妻の友人(発想が奔放な自由人)が、ドラムはスティックさえあればどこのスタジオにでも飛び込みで練習しに行

          おじさんからのドラム

          土佐堀川と鳥たち

          ある冬の朝、通勤路である土佐堀川沿いの遊歩道を歩いていると、川から賑やかな鳴き声が聞こえてくるではありませんか。何かと思って川沿いの手すりに近寄ってみると雁のような夥しい数の水鳥が川を埋め尽くしています。いつもは周りの建物や川沿いの木々を静かに映している川面が、水鳥たちの熱気で湯気が立ちそうな勢いです。毎朝、しんとした早朝の枯木立を、先を歩く他のサラリーマンを抜き去ったりしながら足早に歩を進める私ですが、その情景に圧倒され、思わず立ち尽くしてしまいました。 群れの中にリーダ

          土佐堀川と鳥たち

          大阪

          昔から大阪は興味惹かれる場所でした。もう古すぎて知らない人の方が多いと思いますが、「大阪の女(ひと)」というフレーズが物心ついた頃から気になっておりました。色々な妄想が広がり、大学生だった頃は結婚するなら関西の人がいいな、とさえ密かに思い始めていたように思います。これはもしかすると母が小・中・高校と尼崎に住んでいて、時折大阪での幼少期の暮らしについて語っていた影響があるからかもしれません。 入社したのがたまたま関西発祥の会社で、しかも企業選びの段階で衣食住にかかわる仕事をし

          思い立った原点、 そして左手

          自己紹介にも書かせて頂きましたが、55歳になろうとしている今頃になって、私は会社員には向いていないとようやく心の底から気付き、赴任先であったメキシコから帰国したばかりであったこともあって、慰労も兼ねて妻と西日本を中心にあちこちを旅しました。その頃はまだコロナがくすぶっていたため、旅行客がそれ程多くなく、各地の暮らしに一瞬ですがひっそりと加えて頂くという感じで、ゆっくり自分のペースで馴染んでいくことができたように思います。 そんな中で出会ったのが冒頭の写真の景色です。琵琶湖畔

          思い立った原点、 そして左手

          ゴムの木

          6年弱のメキシコ生活から大阪に戻って、引っ越しに伴う家の整理が少しずつ落ち着いてくると、何か潤いのあるものが欲しいなという気がしてきました。メキシコで住んでいたコンドミニアムは昔のアシエンダ(植民地時代の伝統的な大農家)の跡に建ったものであったことから、大きな木々に取り囲まれ、芝生も青々としていて、その大きな庭を季節によって蝶がヒラヒラと舞ったり、手のひら位の大きさのハチドリが空中で忙しく羽ばたいたり、キツツキが幹をつついたりと植物園のような環境であったため、今のどちらかとい

          ごま中華 喜界星

          京都からの帰りの車中、いつもの通り、googleやグルメサイトを検索して、乗り換え駅である淀屋橋や北浜の周辺で、あまり時間を掛けずに食べることができる飲食店はないか、と探していた時、「喜界星」という特徴ある名前に目が留まりました。トラック運転手だった人が始めた店なのだろうか、いや、そう言えば、喜界島という島があったような気もするが何か関係あるのだろうか、と様々な想像が広がってきました。しかも、よく見るとその名の前に「ごま中華」とあります。オタクとまでは言えませんが、健康を気に

          ごま中華 喜界星

          古くからの友達

          約束した日、京都は時折青空が覗いているにもかかわらず、ちらちらと雪が舞う不思議な天気でした。待ち合わせ場所は京都のとある博物館。彼女の卒業制作展が開催されているとのこと。 正月早々に、「鼓堂さん元気?私ここのところ用事があって毎週末関西方面に行っているの。来週の土曜日昼間とか空いてる?」とのメールが彼女からありました。年賀状はやりとりしていましたが、メールとなるともう十数年ぶりのことで、しかも彼女がメールをくれたアカウントは、気まぐれにしかチェックしていなかった半休眠アカウ

          古くからの友達

          モーニングページ

          妻に対して若干後ろめたいのですが、私には朝の習慣があります。 全ては、ジュリア・キャメロン著の『ずっとやりたかったことを、やりなさい。』の影響なのですが、彼女は朝、起きたての無垢な状態で、自分と向き合う時間を持つことを勧めています。これを私は毎朝実践しているのです。 一昨年の春、メキシコでの海外駐在を終えて帰国した時、まず第一に考えたのは、自分は何か創造的なことを始めねばならないということでした。当時私はとても擦り減っていました。いや、もっと正確に言うと、残念ながら思うよ

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          偶然の幸せ

          京都に行く前にちょっと淀屋橋で腹ごしらえをしようと街を歩いているとEl Ponienteという気になる赤い縦看板がひょっこり顔をのぞかせていた。 建物の正面に回ってメニューを見てみると「魚貝の15分間スープ」という気になる文字が。 野生の勘を信じて店に足を踏み入れるとメキシコにでもいそうな小柄のラテン系白人給仕がにこやかに迎え入れてくれました。店内はそれ程大きくはないものの2つのテーブル席を残して満席(一つは予約席でした)。予約なしだったのに運よく入れたのでした。 土佐堀