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『稲盛和夫一日一言』 5月5日

 こんにちは!『稲盛和夫一日一言』 5月5日(日)は、「筋は通っているか」です。

ポイント:物事に筋が通っているかどうかを判断するためには、単に論理的に矛盾がないかということだけではなく、それが人としてとるべき道に照らし合わせて、不都合がないかということの確認が必要。

 1996年発刊の『成功への情熱 ーPASSIONー 』(稲盛和夫著 PHP研究所)「筋を通す」の項で、自分自身を正しい方向へ導く羅針盤を持つことの大切さについて、稲盛名誉会長は次のように述べられています。

 英語で「道理にかなっている」という言い方を、日本語では「筋が通っている」と表現します。
 「筋」という言葉は「線」を意味します。この言葉は、人が判断する際に使う一連の論拠、あるいは「フィロソフィ」という意味で使われます。

 私たちはそれぞれ、心の中に物事を判断する際の基準となるべきものを持っています。それらの判断基準は、「人間として何が正しいか」という問いに対する答え、つまり道徳や倫理のような、原理原則に基づくものであるべきです。

 物事に筋が通っているか、すなわち、道理にかなっているかどうかを判断するためには、単に論理的に矛盾がないかということだけではなく、それが人としてとるべき道に照らし合わせて、不都合がないかということの確認が必要です。
 頭の中だけで軽々しく判断するのではなく、人間のもっともベーシックな部分にまで立ち返ってみて、真剣に熟考し判断すべきなのです。

 そのような「筋」または「フィロソフィ」を持たない人は、価値あることを達成することはできないでしょう。なぜならその人には、自分の判断の基準となる、正しい原理原則がないからです。
 「フィロソフィ」を持っている人は、多くのことを達成できます。なぜなら、フィロソフィが自分自身を正しい方向へ導く羅針盤となるからです。

 自らの内にある「フィロソフィ」が、私たちを正しい意思決定へと導いてくれるのです。(要約)

 「道理にかなう」には、” to stand to reason ”、また「~することは道理にかなっている」といった例文には、” It is reasonable to ~ " といった英訳が出てきました。
 また比較的よく出てくる表現は ”make sense” で、”reasonable”(合理的な)とか ”justifiable”(正当な)といった意味合いで使われます。
 一方、「完全に筋が通っている」の例文には、” it makes perfect sense.”と出てきました。

 2022年発刊の『経営のこころ 会社を伸ばすリーダーシップ』(稲盛和夫述 稲盛ライブラリー編 PHP研究所)「物事を本質から考え、判断する」の項で、経営とは筋の通ったものでなければならないとして、名誉会長は次のように説かれています。

 「経営とは『筋』の通ったものでなければならない。矛盾があったり、理屈に合わなかったり、一般的な倫理観やモラルに反したのでは、決してうまくいかない。だからこそ、物事の原理原則に合うような判断をしていこう」

 創業当時、経営に関して何の経験もなかった私は、たとえ経験はなくても、そうした判断をしていけば、そう間違ったディシジョンにはならないだろうと考え、「物事の原理原則に合うような判断をしていこう」と社員の皆にも言い、私自身もそう努めてきました。(要約)

 人間は弱いもので、ややもすると自分の置かれた状況に流されてアイデンティティを見失ってしまいがちです。そうしたとき、自身を取り戻す絶好のきっかけを与えてくれるのが「フィロソフィ」ではないでしょうか。

 そのフィロソフィの原点にあるのは、「常に人間として何が正しいかを考え、正しいことを正しいままに貫く」という姿勢です。

 そうした普遍的な判断基準を大切にしながら、小さいころから母親に繰り返し言い聞かされた「人様に迷惑をかけるような生き方だけはしなさんな」という教えを守って残りの人生を歩んでいければと思っています。


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