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『稲盛和夫一日一言』 1月18日

 こんにちは!『稲盛和夫一日一言』 1月18日(木)は、「素直な目」です。

ポイント:一切のものにとらわれない素直な目で現象を見なければならない。そこには、現象をつぶさに見つめ直すという素直な姿勢が必要。先入観を持っていては、物事はその真実を語ってくれない。

 1996年発刊の『成功への情熱 ーPASSIONー 』(稲盛和夫著 PHP研究所)「あるがままに見る」の項で、純粋な目を持つことの大切さについて、稲盛名誉会長は次のように述べられています。

 澄んだ純粋な心には真実が見えます。しかし利己に満ちた心には、複雑な事象にしか見えません。
 例えば、もし「この仕事からどんな利益があるだろうか」という私欲を抱いて仕事に取りかかると、その欲望が単純な問題さえ複雑にしてしまうでしょう。

 私たちは往々にして、自分を良く見せようとしますが、そのよう利己的な動機は、問題の焦点をぼやかせ解決を遅らせてしまいます。
 たとえ自分にとって不利益であったとしても、物事をあるがままに見て、自分に非があれば、素直にその間違いを認めることです。

 純粋な目で物事を見始めたとき、突然問題が解け、簡単な解決方法が現れることはよくあることです。ところが、自分自身が快楽や贅沢を追い求めて利己的な心から離れることができなければ、それが自分の目を曇らせ、物事の真実は曖昧なままになってしまいます。

 しかし、真実をあるがままに見つめるだけでは十分ではありません。真実を追い求め続けるためには、勇気を持つことも必要となります。
 物事をあるがままに見て、さらに自己犠牲を払ってでも成し遂げようという心構えができれば、克服できない問題などないのです。
(要約)

 今日の一言には、「何としてもやらなければならないという思いがある一方で、苦しければ苦しいほど、現象をつぶさに見つめ直すという素直な姿勢を持つことが必要。そうすれば、今まで見過ごしていたものをハッと見つけられる」とあります。

 「素直な心を持つ」というフィロソフィ項目の紐解き講話の中で、「素直」とは何かということについて、名誉会長は次のように説かれています。

 「素直」という言葉は、おとなしく「右向け右」と言われれば右を向くといった、従順な意味合いにとられがちですが、実はただ従順であれという意味でも、また卑屈になって現状に甘んじなさいという意味でもありません。

 仏教の教えとして、お釈迦様は一番に「精進」をあげておられます。修行をするにしても、働くにしても、まず一生懸命に行う「精進」があるわけです。
 しかし、自らの欲望のみを追いかけてひたすら努力しても、その成功は長続きしません。人間の欲望には限度がありませんから、ほどほどにという意味で「足るを知る」ことが大切だと私は言っています。

 「素直な心」とは「進歩の親」です。素直な心がなければ、人間は成長、進歩していきません。それほど、人生にとって大事なことなのです。
 この「素直な心」の大切さを説かれたのが、松下幸之助さんでした。

 松下さんは小学校も満足に行かれていないのに、あのような大企業をつくりあげられた。その原動力は、まさに素直な心なのです。
 素晴らしい成功を収めても、決して傲岸不遜(ごうがんふそん)になることなく、齢(よわい)を重ねられても、「自分には学問がないから」と「耳学問であっても、他人様に教えてもらって自分を成長させていこう」という姿勢を変えようとはされませんでした。
 常に周りの人の意見を聞いて物事を学び、生涯を通して発展、進歩を遂げていかれたのです。

 「素直な心」とは、自分の致さなさを認め、そこから努力しようとする謙虚な姿勢であり、それこそが成功の鍵なのです。
 そのような意味から、私はこの「素直な心を持つ」ということを、京セラフィロソフィのなかの重要な項目のひとつとしています。
(要約)

 人は年齢を重ねるほど、先入観のもととなる「経験」を多く蓄積していきます。その経験には、うまくいったこともダメだったことも蓄積されていますから、どんな物事を見るにしても、まっさらな何ものにもとらわれない状態、ここでいう「素直な目」「素直な心」で見ることは至難の業です。

 一切のものにとらわれない「無の境地」。それは本能から解放され、心の迷いが無くなった状態だと言われていますが、そうした境地に至ることができれば、利己の感情にとらわれない、冷静な落ち着いた心で物事を判断し、適切な対応をとることができます。

 一生を通して、誰もがそうした境地に至ることができるのだとすれば、やはり「人生=修行」以外の何ものでもないということです。

 私たちは、自分の周りに起こる一切の事象に対して、常にひとつでも多くの真実をとらえることのできる「素直な目」「素直な心」を持つことを意識し、日々そうした力を鍛えていかなければならないのではないでしょうか。


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