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『稲盛和夫一日一言』 5月10日

 こんにちは!『稲盛和夫一日一言』 5月10日(金)は、「リーダーの資質 ②」です。

ポイント:世界の多くの社会が荒廃している原因は、第三等の資質、つまり聡明才弁の人をリーダーとして登用してきたからではないか。

 2016年発刊の『稲盛和夫経営講演選集 第5巻 リーダーのあるべき姿』(稲盛和夫著 ダイヤモンド社)の中で、リーダーが持つべき資質について、稲盛名誉会長は次のように述べられています。

 中国の呂新吾(りょしんご)が明代に著した『呻吟語(しんぎんご)』に、リーダーに求められる資質について言及した一節があります。
 呂新吾はリーダーの資質を次のように三つに分けて表現しています。

 「深沈厚重(しんちんこうじゅう)なるは、これ第一等の資質。磊落豪雄(らいらくごうゆう)なるは、これ第二等の資質。聡明才弁(そうめいさいべん)なるは、これ第三等の資質」

 現代社会においては、才能がある、つまり戦略的な思考もでき、専門の知識にも長け、弁も立つ、いわゆる「聡明才弁」なる者がリーダーに登用される傾向が強いように思います。

 例えば、官界においては、難関の国家公務員上級試験を受けて、その狭き門を突破した、いわゆる秀才型の人たちがリーダーとなっています。しかし、呂新吾に言わせると、そのような聡明で弁が立つというような能力は、第三等の資質でしかないのです。

 そうした能力は、一介の官吏としては必要にして十分な資質なのでしょうが、集団を導いていくリーダーとしては、それだけでは事足りるはずがありません。集団を率いるリーダーには、あらゆる局面で集団を正しく導いていけるだけの勇気が必要です。しかし、それだけでも真のリーダー足り得ないのです。

 リーダーの資質として最も大切なことは、浮ついたところがなく、考え深く、信頼するに足りる重厚な性格を持っていることです。一言で言うならば、それは「人格者」ということであろうかと思います。

 つまり呂新吾は、リーダーは「能力」「勇気」「人格」の三つの資質を兼ね備えていることが望ましいけれども、もしそこに序列をつけるならば、一番が「人格」、二番が「勇気」、三番が「能力」だと言っているわけです。

 現代社会の荒廃の原因は、洋の東西を問わず、「第三等の資質」、つまり「能力」「才覚」だけを持ち合わせた人がリーダーに選ばれていることにあるのではないでしょうか。

 日本には、「才子、才に倒れる」という格言があります。「才覚」に恵まれた人は、その並外れた才能をもって大きな成功を収めるけれども、その「才覚」を過信し、あるいはその使い方を誤って、やがて破綻に至るということを、日本の先人は説き、人々を戒めてきました。

 もちろん、「能力」「才覚」あふれる経営者も、第一等の資質である「人格」が大切だという認識や、人間としての正しい生き方を示してくれる、哲学や宗教などの教えについての知識は持っているはずです。
 しかし、知っていることと、実践できることは違うのです。多くは「人間として正しい生き方」などは、一度学べば十分だと思い、繰り返し学ぼうとはしません。
 スポーツマンが毎日肉体を鍛錬しなければ、その素晴らしい肉体を維持できないように、人間の心も、少しでも手入れを怠ると、あっという間に堕落してしまいます。

 リーダーにとって必要なことは、そのような「人間として正しい生き方」を繰り返し学び、常に理性にとどめられるように努力することです。
 また、自分の行いを日々繰り返し、反省することも大切です。「人間として正しい生き方」に反したことを行っていないかどうか、厳しく自問し、日々反省をしていくことが大切です。

 人類の歴史は、リーダーの歴史だと言っても過言ではありません。それは企業経営においても、決して変わることではないと思います。(要約)

 名誉会長は、「『人間として正しい生き方』を繰り返し学び、自らの血肉としていくことにより人格を高め、維持していくことが大切だ」と説かれています。

 「人生・仕事の結果=考え方×熱意×能力」
 日々、人格を高め、維持していこうと心がけることで、注いだ熱意と能力の積がプラスの方向にまっすぐに積み上がっていきます。

 人格を高めようと努力し続けることが、人生において最も重要な要素であると信じて、これからも日々精進していこうと思っています。


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