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膝にふわふわ感がある症例

以下に記す症例について、見方、知識の使い方、考え方の流れが参考になれば幸いです。

情報)
20代の方である。

数か月前から右膝関節がふわふわした感じがある。


これは、座位・臥位でも起こり、特に歩行で顕著である。

ふわふわ感と言ったのは、何とも言えない感じで、強いて言えば、そんな感じの表現になる。

以前は腰に痛みがあった。


今は腰の痛みはないが、膝のふわふわ感は変わっていない。

膝や腰の既往はない。

ちなみに症例は、中・高校とバレー部であった。

Q) どのように考えればよいか?

A) 膝のふわふわ感をどう捉えるかである。

Q) どう捉える?

A) ふわふわ感は、イメージとして緩い感じである。

これを膝関節に当てはめると、大腿顆部と脛骨がズレていることを想像する。

大腿顆部と脛骨を密着させる組織に、問題があるのではないか?と考える。

Q) その組織とは?

A) 症例に膝の既往はない。

そして症状は歩行で顕著であることから、筋の作用と関係がありそうである。

Q) 筋のどのような状況か?

A) 安静時にもふわふわ感があるので、筋の緊張である。

Q) 何筋か?

A) 膝関節を安定させる筋は四頭筋やハムストである。

Q) どれか?

A) ここで、症例は腰を痛めていたとある。

部位からしてL5/S1あるいは仙腸関節が考えられる。


これは下肢筋では仙結節靱帯に付着するハムストと関係する。

市橋則明 他 著:身体運動学 関節の制御機構と筋機能 より引用


すると、腰の痛みに対するハムストの緊張が膝関節をずらし、それが影響していることが考えられる。

Q) 評価では?

A) ハムストの緊張による脛骨の後方変位はなかった。


また、ハムストの緊張も強くはない。

それに加え、腰の痛みが消失しても、ふわふわ感に変化がないので、腰との関係性はないと考えた。

Q) すると?

A) 大腿四頭筋が考えられる。

Q) 四頭筋の状態は?

A) 右内側広筋の萎縮と緊張低下が左右差で確認された。

また、両外側広筋の肥大が見られた。

右   左


Q) アプローチは?

A) 内側広筋の強化である。

Q) 方法は?

A) 内側広筋は大腿直筋との関連性が強い。

内側広筋は股関節内転筋とつながっている。

そこで、股関節内転筋の収縮を高めるために股関節内転筋の収縮を促す。

大腿直筋は股関節屈曲・膝関節伸展作用なので、臥位でSLRを行い直筋の収縮を促す。

ボールを挟み、膝関節伸展位で両下肢を軽度挙上させた。

以上を複合した運動を5分間行った。


Q) 結果は?

A) ふわふわ感は消失した。

Q) 症状が顕著な歩行では、大腿四頭筋の活動があるので、内側と外側広筋の出力の違いから膝関節のズレが生じるのが理解できるが
座位や臥位の安静でも症状が出現するのは、何故か?

A) 座位や臥位でも筋は緊張して、関節の安定化を図ろうとする。

その時の内側と外側広筋の出力の違いから微細なズレが生じており、それをふわふわ感として感じ取っていた。

枕やベッドのクッションの違いで、朝起きると頸が痛い、腰が痛いなども、ここから来ていると考える。

歩行においては、筋緊張以上の力である筋収縮により、そのズレが大きくなり、症状が顕著になった。

Q) 何故、内側広筋が萎縮したのか?

A) 症例は、中・高校とバレー部であった。

そのバレーの構えの肢位は立位前傾姿勢で、両股関節は内転・内旋している。

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これは、股関節では外転筋の収縮を促す。股関節外転筋は腸脛靭帯を介して、膝関節では外側広筋の収縮が促される。

その後、進学して部活が終ると、今まで優位であった筋はそのまま使用されるが、劣位な筋の使用は減少し内側広筋の萎縮に結びついた。

それが、膝関節のズレを生じさせ、自覚するまでに至り、ふわふわ感として現れたと考える。


最後までお読み頂きましてありがとうございます。



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