みんな、ごめんな。

 いつまでもみんなのヒーローじゃいられないみたいだ。俺はもうあんまり食えなくなってきた。この間、とんかつ屋に行ったとき、ご飯をおかわりすることなく、とんかつを食いきってしまった。最初に盛られたご飯がサッカーボール大ってわけでもなかったのにだ。ごめんな。これを言うのは本当に怖いんだけど、キャベツもおかわりできなかった。最初に盛られたキャベツが太キャベツ20玉分ってわけでもなかったのにだ。本当にごめん。そしてあろうことか俺は「ふー、お腹いっぱい。」などという弱言(じゃくごん)を吐き捨て、ガチャ歯の隙間を呑気に掃除しだしたというのだ。他人事のように語っているのにはわけがある。俺は、自分で自分の弱体化っぷりに気が付いていなかったのだ。俺は、目の前に座る後輩のネギゴリラ細野(小食細男)の涙を見て初めて、この恐ろしい事実に気が付いたのだ!!!!!急に大きな声を出してすまなかった。俺は「大食漢」であるという唯一の個性を失ってからというもの少々ヒステリック気味なのだ。許してくれ。細野(小食細男)は、俺がもう食えていないその姿に、かつて俺がバクバク食えていたころの姿を重ね、涙を流していたのだ。盛者必衰。1人の男が時代を終えたその時、みんなは何を思う?もう大食漢でない俺を見て、みんなはどう動く?もう俺は、焼肉屋でご飯じゃなくて肉を優先するぞ?どうする?泣かないでくれよ。時が来た。ただそれだけのことだ。命懸けで食ってきた。その代償が早めにきたってこった。さよなら。きっとみんな俺から離れていくんだろ?細野(小食細男)のようにな。ただそんなみんなに伝えておきたいことは「それでもなお、みんなよりはよく食べるぞ。」ということだ。それだけは忘れず、驕ることなく、新しい人生の一歩を!さあここから!行け!振り返るな!前だけを見ろ!俺のことは気にするな!俺は俺でなんとかやってくさ!ほんとに楽しかったよ。みんな、ありがとう。

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