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メルセデス・ベンツ最後のMT車、SLK200 MTがお買い得な理由

ベンツがMT車の生産を終了


先日、一つのニュースが静かに車界隈を駆け巡った。

記事のタイトルの通り、2023年末までにメルセデス・ベンツがMT車の生産を終了する。
MTが終了するということ自体は自動運転への対応やそもそもEVシフトの流れの中では当然のことであるが、仮にトヨタなどがMTを廃止するというニュースであれば、もっと大事として捉えられ話題になっていたはず。

私はこの記事が大して話題にならなかったのにはもう一つ理由があると思う。それは・・・

そもそもメルセデス・ベンツにMT車があるなんて知られていないから

ではなかろうか。

何しろ21世紀に入りメルセデス・ベンツが日本国内にMT車を導入したのはたったの1車種1グレード、それも発売期間は2013年〜2016年の3年ほどだけなのだ。

その唯一の車種こそが表題のR172型メルセデス・ベンツSLKクラス(グレード名SLK200MT)である。

まずはこちらの車種を紹介する。

メルセデス・ベンツSLKとは?

今は亡きCarlssonコンプリートが個人的には好き

そもそもR172型SLKはR170から始まったバリオルーフを備えたオープン2シーターコンパクトスポーツカーSLKの3代目モデルだ。
国内では2011年に発売され、先に発売されたE89型BMW Z4と共にドイツ製オープンカーの代表格としてしのぎを削るライバル関係にあたる。

そして2年後の2013年、突如SLKの新グレードとして国内に投入されたのが「SLK200MT」となる。
当時大学4年生であった私もこのニュースを目にして驚いたことを覚えている。
何しろ、メルセデス・ベンツの正規輸入品として21年ぶりのMT車の市場投入だったからだ。
しかも、戦略的価格が設定され、まさかの500万円切り。
その後、2,3回の年次改良を受け、SLKがSLCに名称変更を伴うモデルチェンジをしたタイミングで姿を消したというのがSLK200MTの簡単な略歴だ。

これは推測だが、発売当時86/BRZの登場やマツダ車がディーゼルをウリにした際にMT車もラインナップし、それなりに売れていたこともあり、MT冬の時代に明るい兆しが見えていたことでメルセデス・ベンツ日本も冒険したくなったのではないかと思う。

さて、その後いくつかの経緯を経て私はまさにこのSLK200MTを手にするわけだが、表題の通り実は超お買い得車なのではないかと思っているのでその理由をお伝えしよう。

6MTのパターンは1速の奥にRがあるタイプ


圧倒的希少性と値落ちが少ない

意外なことだが、R172型SLKは2011年から2014年の間、国内のオープンカー販売台数として1位を記録している。
とはいえ所詮2シーターオープンカー。ライバルはZ4とかロードスターくらいなもの。ニッチなジャンルであることは否めない。

さらにSLK200MTの発売は前述の通り2013年〜2016年の間。発売当初からラインナップされていたわけではない為、どうしても弾数は少なくなる傾向にある。

中古車情報カーセンサーを見ると、R172の中古車流通台数は100台前後。
それに対してSLK200MTは3~6台前後しかない。

更に、本体価格を高い順に並べ替えると驚きの事実が見えてくる。
値段の高い順トップ3のうち2台はSLK200MTなのだ。(注:SLK55AMGは別格)
特筆すべきは上位の車種のほとんどがSLK350という上級グレードもしくは限定車のカーボンルックエディションという中に紛れ込んでいるということ。
更に同年式、同走行距離であればほぼほぼSLK200MTの価格が上回っているということだ。

これらの点からSLKの中でも値落ちが少ないグレードと言い切って良いだろう。事実、9年落ちでも200万円を切るものは見かけない。輸入車のオープンカーとしてはよく保っていると思う。

そもそもSLK350とSLK200は元値が200~300万くらい違う


絶版車+最後のMT車

SLKクラスはR172という型番を保ったままSLCにモデルチェンジし、そのまま消えた。つまり絶版車扱いになる。
兄貴分のSLは無事にモデルチェンジが発表されたが、おそらくエンジン車としてコンパクトオープン2シーターが今後ベンツから登場することは無いだろう。
さらにMT車ともなると間違いなく今後日本導入されることはない。

・・・となると期待が持てるのはもう少しEVが普及し始めた頃にプレミアがついてくることだ。
さすがにR34 GT-Rなどを代表とする昨今の国産スポーツカーような暴騰は難しいだろうが、きっとその希少性が評価されるのではないかと思う。

そもそも2010年代前半の輸入車は安い!

最後に、これはSLKに限った話ではないが、私は今後2010年代前半の輸入車はお買い得だったと言われる時代が来るのではないかと思っている。

2011前後というのは空前の円高だった時代。1ドルは75円〜90円を推移していた。
当時、別の車を購入して未だに乗っているのでわかるのだが、この時代の輸入車は装備や乗り味に対して割安だったと思わせられる。

SLKもまた、500万円を切るグレードが存在するわけだが、ドイツ本国での当時の最低価格は下記の通り。()内は当時の発表記事より。

・SLK200 ブルーエフィシェンシー:3万8675ユーロ(約425万円)
・SLK250 ブルーエフィシェンシー:4万4256.10ユーロ(約487万円)
・SLK350 ブルーエフィシェンシー:5万2300.50ユーロ(約575万円)

SLK200ブルーエフィシェンシーの3万8675ユーロ(約425万円)というのは1ユーロ約109円で計算されていることになる。
現在は1ユーロ約142円前後なので、それで計算しなおすと、なんと約550万円となる。
何もしていないのに為替だけで125万円の値上げだ。
更に折しもの資材高やインフレにより、この10年で40%程度値上がっているとすると、同じような立ち位置の車は425万⇛770万になるわけだ。
値上げ幅は約345万円にのぼる。

そんなに上がる?と思う人もいるかもしれないが、2021年にモデルチェンジしたCクラス(C180)のベースグレードの価格はモデルチェンジに伴い489万⇛654万となり一気に160万円以上も値上がっている。
2011年11月頃の発表からさらに20%程度円安に振れたことを考えれば次の価格改定では700万円を超えても全く不思議ではない。

ドル円相場は半年間で急速に変化した。

つまるところ、2022年以降に発売される輸入車は円安水準と資源高が続く限り、どんどん値上がっていく。元値が高いのだから中古車価格も段違いに高くなるだろう。

相対的に2010年代の輸入車は逆に割安になっていくわけだ。

市場原理として素直に考えれば、輸入車の値落ちは以前より緩やかになるのではないかと思われる。
もしくは問答無用で最新輸入車の値落ち率が高くなるか。

どちらにせよ、しばらくの間新車で500万そこそこでかつてのSLKのような趣味車が手に入ることはない。
そういう意味でも、こういうジャンルの車に乗りたい人は今のうちに中古輸入車を買ってしまうことを選択肢に加えることをオススメしたい。

というか向こう1、2年以内に車を買うなら新車だろうが中古車だろうが1秒でも早く注文をしてしまうべき。

最後はSLKという車の枠を飛び越えてしまったが、この記事をきっかけに車選びを考えなおす人が現れてくれたら嬉しい。

では。


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