迷子

 少女は迷子になった。知らない街で母とはぐれてしまった。少女は近くにあった街灯の明かりを目印に、付近を一回りしてみた。けれども母を見つけられなかった。街灯からあまり遠ざかるとさらに母から離れてしまうかもしれないと思い、少女はまた付近を一回りしてみた。けれども母を見つけられなかった。少女は自分が今どこにいるのか分からず怖くなった。

 少女が住んでいる星も迷子になっていた。本来いるべき場所とはぜんぜん違うところにきていた。その星は辺りで一番明るい太陽という星を目印に、付近を一回りしてみた。さらに一回りしてみた。さらに一回りしてみた。

 その星が存在する宇宙自体が迷子になっているかは分からなかった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?