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創作

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創作の文章のまとめだぜ!
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AM3:27 繁忙期の一課員

外に出ると冷気が白衣を貫いて肌を刺す。 辺りは街灯も消え、深夜営業のスナック・スタンドだけが誘蛾灯のように通りを照らしていた。 寝不足の頭でフラフラとスタンドに引き寄せられる、スナックを数種、カフェイン飲料、タバコを二箱手に取ると 「お勤めご苦労さまです。」 半分アンドロイドのような店員が声をかけてくる。 ギシギシと音を立てながら決済用の端末を差し出す老人に無愛想に返事をすると、少し間をおいて自分が仕事着のまま寝ていたことを思い出した。 顔を上げると老人は瞳孔のランプをチカチ

Liam is Where did you come from.後編

腹部の痛みと揺れで目が覚める 「おや、起きましたか。ずっと寝ていてもらっていたほうが都合がいいのですが。」 「あー・・・ぁ?・・・―――いって・・・!」 腹部に鈍い痛みを感じる、手首には冷たい感触。 「貴方の右手は少々危なそうなので拘束させて頂きました。」 「おいおい・・・こんなゴツい電子手錠なんてつけやがって、ボクには似合わないだろ。」 「そうですか?お似合いですよ、無様で。」 この犬――狼森だったか。と楽しく歓談しながら手錠を観察する。 椛重工製第4・・・第3世代

SiDイントロダクション「MissingAllMe」

 いい午後だった。 珍しく太陽は出ていたし電磁風も吹いていなかった、おまけに露天のラジオ端末からは初期のパンクロックメドレーが流れている。 100年以上残っている本物の名曲だ。 なのに、なぜ俺は重い頭を抱えて裏路地を歩いているのか…。 「クソッ、どうなってやがんだ!」 昨晩のことは覚えていない、いつも通りどこかの酒場で飲んだくれ、ゴミ箱ででも寝てたのだろう。 不可解なことは3つ、一つは「なぜか体が機械になっている」ことだ。 このご時世義体化してる奴は少なくはない。 生身

Liam is Where did you come from.前編

「ハッ...ハッ....クソッ...!」 まだ義肢慣れきらない身体を酷使して走る。 「何なんだよ...!あの犬野郎はよ...!」 「また...犬と呼びましたね?」 少し影が差したかと思うと、意外なほど靭やかにその獣人ーーー狼森冴子は着地し、言った。 「まったく...足で私から逃げ切れるわけが無いでしょう?いい加減大人しくしてください」 君たちにもあるだろ?理想の自由な生活。 「元ロックアウト開発員、リアム•ロックアウト」 全部完璧のはずだった...この犬が全部