東大理系数学2024を解く 大問1

東京大学で2024年に行われた入試の数学(理系)の問題を思考を交えつつ解いてみる。

大問1


分野は空間図形と領域で、条件に角度が絡むことからおそらくベクトルの内積を使うだろうと考える人が多いと思われる。逆にそれ以外の方法を考えようにもO,A,Pを含む平面を決定しようがないことから直線の方程式を出したり、幾何的に解くのは少し良くないと感じる。
ということで条件をベクトルの内積に寄せる形で変形していこう。
その上でPの座標を$${P(x,y,0)}$$としておく。
すると、元の条件が
(ⅰ)Pは原点Oと異なる
(ⅱ)$${\angle AOP \geqq \frac{2}{3}\pi}$$
(ⅲ)$${\angle OAP \leqq \frac{\pi}{6}}$$
これらのうち(ⅱ),(ⅲ)を内積の条件に持っていくことを踏まえて$${\cos}$$についての条件に直すと次のようになる。
(ⅱ)$${\cos{\angle AOP}\leqq \cos{\frac{2}{3}\pi}}$$
(ⅲ)$${\cos{\angle OAP}\geqq \cos{\frac{\pi}{6}}}$$
そして今回、Aの座標および、(ⅰ)より3点O,A,Pは互いに一致することがないことより、
$${|\vec{OA}|>0}$$,$${|\vec{OP}|>0}$$,$${|\vec{AP}|>0}$$が成り立つから両辺にベクトルの絶対値をかけ、内積も使って次のように条件が表される。
(ⅱ)$${\vec{OA}・\vec{OP}\leqq -\frac{1}{2}|\vec{OA}||\vec{OP}|}$$
(ⅲ)$${\vec{AO}・\vec{AP}\geqq \frac{\sqrt3}{2}|\vec{AO}||\vec{AP}|}$$
ここまでの変形さえできればあとは座標を使って$${x,y}$$の条件に書き換えていくだけになる。
まず(ⅱ)の方は以下のようになる。

ポイントは不等式の両辺を2乗するところでここができるかどうかと、2乗した後に$${y\geqq 0}$$を忘れないことの2つになってくる。また、最終的な形として$${|x|}$$を用いることでそこに$${y\geqq 0}$$を含ませているが、$${y^2-x^2\geqq 0}$$としてから左辺を因数分解し、場合分けして条件を整理してもいいだろう。
続いて(ⅲ)だが、これも(ⅱ)と似たような点が重要になってくる。

ただ、こちらの方では係数の都合上最終形は楕円となり、楕円のとる$${y}$$の値の範囲が$${y\geqq -2}$$を満たすことは確認してほしい。
ということでこれらを合わせた領域が下のようになり、これが答えとなる。

最後の最後でうっかり、境界線上の条件を間違えてはいけない。というのも、(ⅱ),(ⅲ)で得られた条件だけで作図すると、(ⅰ)での原点Oとは異なるという条件を見逃してしまうからだ。そういったミスは許されない。

この問題は最初にベクトルの内積を使う方向に変形さえできればそこまで難しくはないものの、条件の式変形の過程での十分性(不等式の両辺を2乗するところ)や、最後の「原点を除く」という条件の漏れなど細かなミスが起こりやすいといえる。取りやすい問題である以上、ミスに気をつけたい。

大問2へ続く。


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