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【すりがらすの向こう】仲間の背中越しに見た景色


アンプティサッカー
日本選手権大会

神奈川県で開催される全国大会。
私の所属するガネーシャ静岡AFCは、
頂(いただき)を目指して大会に臨む。

5月に行われたレオピン杯で、準優勝を果たしたこともあり『次の景色』を誰しもが意識したことだろう。

日本一の頂である富士山を胸に、静岡から出発する。

私自身は初帯同の大会であり、
環境変化やイレギュラーを覚悟して臨む。

出発前は知ることもないが、
自分自身の弱点と面と向かって対峙することとなる。


私に出来ることを探せ。


出発前から考えていたこと。
医療分野から福祉分野へ本業を切り替えた1番の影響は、技術の低下と感覚の変化だろう。

『痛い』

そう聞くと、すぐに動いたはずの身体と頭。
気がつくと。錆びたように動かなくなりつつあることを自覚していた。

自信が無い。
私よりも他の人の方が。
居てもいなくても同じなんじゃ……?
私がトレーナーでいいのか……?

心の中をぐるぐると廻る、
自分を沼に引き摺り込む言葉たち。

怖さばかりが先回りする現状から、膝に手をついて立ち上がることで精一杯だった。

ピッチに吹く風


バスで到着したピッチでは、試合に向けて準備が行われていく。

その最中に、安心材料が送られる。
他チームの監督さんが『私に』声をかけに来て下さったのだ。

そして、他チームではあるが故郷が同じ選手も笑って話をしてくれる。

(あぁ。ここにいていいんだ。)
(決めたじゃんか、やれることをしようって。)

ピッチにいると心地良い風が吹く。
前に進めと背中を押す風。

温度変化が激しく、試合内容もハード。
己の足でできることを探した。

自分自身がピッチに入る様になったこの半年。
感じたことを伝えるという変化をもたらしていた。

初日の夜に自己嫌悪になることもあった。
だが、見放してくれないのがガネーシャの選手達だった。

力になりたい。
私を救いあげてくれた選手・スタッフのために。

結果と帰路

2日間にわたって行われた試合は、2勝2敗。
得失点差により、準優勝で終える。

5月に開催された、レオピン杯に続いての準優勝。手応えを感じつつ、優勝にあと一歩届かない悔しさを滲ませる。

私が初帯同した大会では、確か最下位だったはず。祝福をもたらす神の恩恵を得て、チームはまた1段階上の舞台へ向かうのだろう。

その舞台へ、一緒に、行きたい。
自身の課題は移りゆくが、希望は変わらない。

バスでは、道具を詰め込んだカバンを抱えて眠った。

大会後余談

翌朝、仕事が休みであった私は違和感に気がつく。

(……だるい。)

インフルエンザやコロナウイルスではなく、
純粋な風邪。

『頑張ったんだね』と夫は笑う。

仕事に復帰するのに4日もかかったのは、神様からのドクターストップだと思う事にした。

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