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人間やるの初心者なんで

なんだか、最近の知り合いとのたわいない会話の中ででてきた視点というか考え方が偶然かぶって、不思議でおもしろかったので書いてみます。仏教の輪廻転生的発想というかなんというか。

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1月の香港で30年来の知り合いの香港人と食事していたとき、その知り合いが、なんとも仙人のような悟った話をしてくれた。

詳細はしょるが、その人の娘が修学旅行中に南アで事故にあって大けがしてすぐに親は香港から飛んできてほしい、もしかしたら左足切除もありうる重症と。

もちろんとんでもない出来事で、その知り合いは南アへの夜行便のフライトの中、不安がつのっていく中で、最愛の娘の運命についていろんな考えが出ては消えていった。

「でもね」とその知人はワインをぐっと飲み干して言う。

「あの娘、勉強もできて、スポーツも万能、生徒会の会長みたいのやったりとか、ちょっといい気になってたところがあった。もし、万が一、片足切除とかになったとしても、それがきっかけでもっと思いやりのあるいい子になれるんだったら、それはそれとして受け止めて前へ進まなくちゃね、とフライトの最後の頃に思った。それで空港に迎えに来てくれた引率の先生たちに落ち着いた気持ちで接することができた。先生は監督不届きで訴えられるんじゃないかとびくびくしてたけど。結局、切除まではいたらなくてよかったんだけど。人生、何が起きてもね、悲劇ぶってもしょうがないから」

なんてことをさらりと言う。

僕はその話に感心して言う。

「Aはさ、30年前にビジネススクールで知り合ったころからそう思ってたけど、大勢を前にしても物おじしないし、どしっとしてるよね。あのパッテン香港総督がスピーカーとして来てくれた講演会でも香港人学生代表としてぴしっと仕切ってたの覚えてるよ。

その時に実は思ったんだよね。どしっと揺らぎなく堂々としてて、この人はたぶん輪廻転生とかで人間けっこうな回数こなしてきた人なんだろうなって。もうすぐでニルバナなんですというような。

それに比べたら、僕なんてまだ人間やるの今回が初めてっていう感じ。たぶん前世はタヌキとか猫とかそんなんでたまたまちょっといいことやったので人間にアップグレードされました、どうぞよろしく、ですよ」

と、半分酔って馬鹿なことを言う。

すると笑って、「あんたも瞑想とか時々やって魂のステージをあげるように少しはがんばってね」なんていう。

     *     *     *

先週、ある知り合いの新居のハウス・ウォーミング・パーティに呼ばれて行ったとき。パーティといっても、日本人4家族が集った飲み会であったが、雑談のなかでこんな会話があった。

「うちの次男のほうはちゃらちゃらしてるんだけど、長男のほうはね、小さいときから物おじしないし落ち着いてて、どこへ行ってもどしっとしてる」

だんなも言う。

「そうなんですよ。決して自分が自分がというような押しはないんだけど、どこいっても慌てることがない。なんだか人間なんどもやってきてるんで、これ前やったことあって知ってますっていうみたいなくらい。なんなんでしょうね」

そこで持って行ったジョージアのアルコール50度の地酒で酔いがまわった僕が余計な事言う。

「それ、絶対、何度も人間やってきたんですよ、輪廻転生の度に。毎回、いい事してグレードアップしてきたみたいな。そういう人いますよね。どしっとしてて。魂が経験積んでて mature な感じ。僕なんか人間初めてで、前世はなんかの動物だったに違いないんですけど」と初対面の人に馬鹿なことを言ってしまう。

しかし、子育てしているときも、3歳くらいの子供との間でなにやってもかみ合わなくてうまく行かないとき、パパはパパやるの経験なくて初心者なんで大目に見てね、なんて思ったことがあった。さすがに2人目の子供にはそういう言い訳は思い浮かばなかったが。たしかに親をやるのは最初の経験だったとは言える。

でもなんだか、経験積んでない分、人間としての新しい体験ができていて、それもなかなかウキウキな人生かなとも思ったりする。さて、何回くらい転生したら、人間としてのレベルがアップグレードされるんでしょうね。案外、航空会社のマイレージみたいに、細かい規定があったりして。これこなしたら2000マイル、瞑想して悟ったら3万マイル、これやって人類に貢献したら10万マイルとか。そんな仕組みかなあ。

You may say so, 夢・瞑想。

締めくくりはちょっと不発の多言語駄洒落でした(だめだな、これじゃまたタヌキにダウングレードか)。 ■

(タイトル挿絵は、NOTEライブラリーで「はてな?」といれたらでてきたのからいい感じの、もしかしたら僕の前世のような感じのゴリラのを拝借)



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