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「たけくらべ」

『たけくらべ』
樋口一葉著

文学史で、単語として単純に暗記していたことを思い出す。タイトルの「たけくらべ」って、丈(背丈)を比べるってことで、幼なじみってことということも学んだ気がする。

冒頭の
『廻れば大門の見返り柳いと長けれど、お齒ぐろ溝に燈火ともしび
うつる三階の騷ぎも手に取る如く、明けくれなしの車の行來ゆきゝ
にはかり知られぬ全盛をうらなひて、』

よくわからないけど、何か趣きを感じる。文の調子というか、リズムが、独特で、講談師が、講釈しているような形になっていて、読みやすい。

主人公 美登利と信如の恋物語なのだけど、日本語が、なかなか奥ゆかしい。

美登利は、娼婦になっていくわけで、一方、信如は、僧侶になるためのスタートをしようとしている。

二人は、幼なじみとして、競い合ったりしていた関係性から、少しずつ、成長していくにつれて、娼婦になってしまうこと、社会的な身分の違い、教育の違い、そんな障害をお互いに気づきながら、恋愛感情が封印されていく様が、なんとも切ない。

「たけくらべ」には、直接的な愛情表現は、すごく少ない、というか、ほぼ無い。

小学生とか、中学生の頃の淡い恋心?みたいなものを思い出させてくれる。この道を彼女は通るはずだから、といって、ウロウロしていると、時期に彼女が歩いてくる、そうすると、彼女に気づかないふりをしてしまう、ような感覚。

いま、ちょうど広瀬すずと永瀬廉のドラマ「夕暮れに、手を繋ぐ」を観て、設定だとか、キャラもだいぶ、ちがうのだけど、テーマが、ちょっと似ていて、面白いと思った。

特に意識していなかった男女が、お互いの存在に、気付き始めるとともに、仕事という人生の岐路を迎える。このドラマで、多くの視聴者は、すれ違いみたいなものにヤキモキしていると思うのだけど、、お互いの気持ちは、視聴者には、わかりやすく、具体的に「好きだ」という言葉で表示されている。この場面で、メッセージの削除跡だけを映像に出していたら、もう少し、かき立てられるものがあったように思うのだけど、視聴者には、つたわらないかな?まあ、最終回は、どうなるのかわからないが、、

本書に戻るが、
はっきりしない物語って、モヤモヤして、やり場がなくなるのだけど、そこが、奥ゆかしさにもなるものだなあと改めて思った。

「アラベスク第1番」

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