Rui

田舎で暮らすおたんこナース。 どこを拠点にしようか模索中。

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最近の記事

『月だけが見ていた』

「お父さんとお母さん、離婚することになったの。あなたにこれからの事をちゃんと考えてほしい。」 突然の母の言葉に頭が真っ白になった。 「は?勝手に決めてんじゃねーよ!」 思わず家を飛び出したが、盗んだバイクで走り出す度胸はなく、暗い夜の街をひとりでフラフラさまよった。なんとなく買ったイチゴオレがやけに甘ったるい。何時間経っただろう。 スマホが青く灯る。見ると何度も何度も母からの着信。しかたなく出てみると 「ねぇ、どこにいるの?帰ってきてよ!」 叫ぶような声にハッと我

    • 自由こその孤独

      「彼氏作ったら?寂しくないの?」 なんて言われることもあるけど、そんなのは大きなお世話だ。 独りは自由、独りこそ至高、と思うのは人付き合いが不得手だからだろうか。 それもあるが、がんじがらめの生活から解き放たれた感覚を味わったら、もう戻れないのだと思う。 身体にびっしりついた鱗をそぎ落とし、長かった尾を切って、独りで大きい海に出た時の開放感を忘れることはできない。 そして同時に得た孤独は、たくましく泳ぎ抜こうとする糧となり得たのだ。 はた目には幸薄く見えるだろうか。

      • 変わりゆくもの

        2011年にリリースされた斉藤由貴さんのアルバムが本日再リリースされ、音楽配信サイトでも聴けるように。 セルフカバー『予感』の歌声は1986年当時とちっとも変わらず、一気に多感だった幼い頃に引き戻された。 この歌詞のような運命の出会いってあるのかしら、と夢見ていたあの頃は、人生にこんなにたくさんの出会いと別れがあるなんてまだ知らなかった。 変わらないもの、変わりゆくもの。でもやっぱり不変なものはなくて、それを受け入れるために全ては自然と変化しているのだろうな、と思う。

        • 新しい風を待ってる

          美しい庭園があるお寺へ亡夫の納骨へ行ってきた。 骨になってずいぶん経つのだけれど、なんとなく手元に置いていた。一度に全てを亡きものにするのはなんだか気の毒で。 まごまごしていたら子どもたちが成人し、新しい道へ進む事に。ついに時が来たな、と、今年の春は家族全員の旅立ちの季と決めた。 久しぶりの青空、若いご住職の柔らかい読経、冬枯れた庭の景色、帰り道で出会った虫や鳥、家族での会食、全てが心を穏やにしてくれた。これからも大丈夫だよと語りかけられているような気がした。 子ども

        『月だけが見ていた』

        マガジン

        • 旅の詩集『Voyage』
          10本

        記事

          チョコレートの箱

          バレンタインデーが近づくと「今年はチョコレートいくつもらえるかな」と密かに楽しみにしていたのは学生の頃。 だが、私は紛れもなく女だ。 女友達に「るいが彼氏だったらいいのに」と言われ、ありえない!と笑い飛ばしたあの頃だったが、今となっては心を通わせるパートナーは男性でも女性でもいいと思っている。 歳を重ね社会も変わり、恋愛というより人間愛に目覚めたのかもしれない。 しかし多様性を受け入れなきゃ、と意気込むのは少々しんどい。他人と違う視点を楽しむくらいでいいと思う。一人一人

          チョコレートの箱

          『あの夏』5ストーリーズ

          某企画へのネタ投稿をメモ ・この曲にぴったりなショートストーリーへの応募 ・ライブ配信中に曲に合わせて朗読してくださいます ・登場人物のネーミングは募集主の関連より考案しました 1.リン篇 「もう夏休みも終わるなぁ」 夏期講習を済ませたリンが、ふと外を見ると、陸上部の練習風景が見えた。 「あ、サトシくんってマスク外すとあんな顔なんだ」 入学式からずっとマスクの学校生活、友達の顔は正直あまりわからない。ニカッと笑ったサトシの大きな口と白い歯はリンの目に新鮮に焼き付い

          『あの夏』5ストーリーズ

          ショートショート『記憶』

          仕事を辞めてしばらく旅にでも出ようかな、と考えていた頃の事。 何気なく見ていたテレビには、とある鉄道博物館の映像。大きく映し出されたSLを見た瞬間、なぜか『ここへ行かなければ』という思いに駆られた。 翌日もその思いは膨らむばかり。呼ばれているような気がして、思い切って訪れることにした。 8月の暑い盛り、吹き出す汗を拭いながらたどり着いた博物館は、自然の中にひっそりと建っていた。 引き寄せられるようにあのSLの展示室へ向かった。込み上げる思いに戸惑いながら、そっと車体に

          ショートショート『記憶』

          濱口竜介監督の『ハッピーアワー』を観ました。 演技経験のない女優さんたちの様子に「これ5時間見られるかな…」と思ったけどなんのことはない。どんどん煌めいていく表情に魅入って最後までイッキ見。 彼女たちの日常にもっと寄り添いたくなったし、これからの人生を追いかけたくなりました。

          濱口竜介監督の『ハッピーアワー』を観ました。 演技経験のない女優さんたちの様子に「これ5時間見られるかな…」と思ったけどなんのことはない。どんどん煌めいていく表情に魅入って最後までイッキ見。 彼女たちの日常にもっと寄り添いたくなったし、これからの人生を追いかけたくなりました。

          今を生きることを決めたのさ

          映画「ドライブ・マイ・カー」を見て2週間が経ってしまった。少しずつ感想を書けたらと思っていたがなかなかまとまらないので、印象深かったところだけでも覚え書きしておこうと思う。 事前にあらすじは大方調べていたので、刺さりまくって帰りは瀕死かもと思って敬遠していたが、大きなスクリーンで西島秀俊さんを見たいというのも相まって最終上映1週間前にやっと見に行った次第。 今も目に焼き付いているのは広島の海の景色。あの穏やかさと車の疾走感で3時間飽きずに観られたのだと思う。 最初は観て

          今を生きることを決めたのさ

          地産市場のお花を持って月命日兼お彼岸のお参りへ。花をまとめるのは我ながら上達したと思います。暖かくなり、並ぶお花が色とりどりで賑やかになっていました。春が来るね。

          地産市場のお花を持って月命日兼お彼岸のお参りへ。花をまとめるのは我ながら上達したと思います。暖かくなり、並ぶお花が色とりどりで賑やかになっていました。春が来るね。

          暖かな日差しと温かな手

          ようやくわが町にも春の兆し。お彼岸の頃が来ると毎年ホッとする。みるみる雪が積もる恐ろしい景色と雪かきにへこたれつつ、今年もなんとか乗り切った。 わたしが暮らす北陸は「弁当忘れても傘忘れるな」という言葉があるくらいお天気が変わりやすく、雨が多い地域である。冬は特に日照時間が少なく、移住者の中にはうつ病を発症する方がいらっしゃるほどだ。日光を積極的に浴びてセロトニンの分泌を促すといいそうだけど、それもなかなか難しい。 穏やかに晴れた日には小さい人と手を繋いで散歩にゆくのが楽し

          暖かな日差しと温かな手

          ドライブ•マイ•カーを観て思いっきりヒリヒリしてきました。「正しく傷つかなった」二人の喪失。最後に少しだけ見える希望。大丈夫、明日からも生きていこうと思える映画。

          ドライブ•マイ•カーを観て思いっきりヒリヒリしてきました。「正しく傷つかなった」二人の喪失。最後に少しだけ見える希望。大丈夫、明日からも生きていこうと思える映画。

          あの箱を手放せないわけ

          押入れの奥にひっそり眠る白い箱がある。中には海外みやげのハート型の貝のオーナメントが5つ。ずっと前にいただいたものだ。 某サイトで意気投合してメッセージの交換をしていた方がいた。いわゆるネト彼ってやつだ。彼は同い年で隣県に住む大学生。やり取りは楽しく、多分、彼が好きだった。実体のないふんわりした好意はぎゅっと握れば潰れてしまうような儚さがあり、それがまた美しく思えた。 クリスマス、お互いに予定がないなら会いましょうということになり、新しいブーツを履いて隣県行きの電車に乗り

          あの箱を手放せないわけ

          バースデーブルー

          誕生月の2月が過ぎ、無事に3月を迎えられてホッとしている。2月早よ終われ、と思って過ごしていたらほんとにあっという間だった。 近頃、誕生日が近づくとブルーでしょうがない。新しい友人にはほぼ明かしていないので、連絡が来るのは身内くらい。極力大人しくして何とかその日をやり過ごす。 調べてみたら誕生日前に憂鬱になる人は結構いるみたいだ。理由は「特別な日にしたくない」「誰も祝ってくれない」「昔のトラウマ」とか色々あるようだけど、わたしは単にもう歳を取りたくないんだろう。 朝、目

          バースデーブルー

          新しい船出へ

          前回の出来事から2年が経ち、覚悟と決意の初夏、わたしはバッサリと髪を切ったのだった。 「どうして切ったの?」には自虐を込めて「失恋したから」と答えていた。みんな笑ってくれたのは呪縛が解けたわたしに安心してくれたからだと思う。 ほんとは何年もずっと切りたかった。ショートヘアは自分には自由の象徴であった。 初めて行く美容室を選んだ。お店の名前は『かもめ』。当時はまだInstagramにマネキンをカットしたりセットしたりした画像ばかりを載せている新しいお店で、餞にぴったりだっ

          新しい船出へ

          今日はひなまつり。 毎年恒例の寿司ケーキを作りました。 今年の作品はこちら。

          今日はひなまつり。 毎年恒例の寿司ケーキを作りました。 今年の作品はこちら。