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インドでケトン食療法⑤はるるん、ケトン食をやめた?!

お久しぶりのはるるんネタです。

思えば1年前の2月、どういうわけかはるるん、生まれて以来ずっと苦しみ続けていたはずのてんかん発作がまったく消え去ったのだった。あの笑顔にあふれたハルはいったい何だったのか・・・あれから1年経ったのが嘘のようである。

結局発作がなくなったのはほんの1ヶ月のみで、その後は発作は増える一方であり、5月からはケトン食療法をスタートさせた。

一旦は発作も減ったものの、その後の経過は思うようではなく、昨年の10月頃からからずっともんもんと考え続けていた、ケトン食療法継続問題について、そろそろ判断を下したいところである。

命がけでゲロを吐くはるるん

インドの担当栄養士・シェファリとは、欲しい情報やコミュニケーションを巡って関係は崩壊したままだ。結局その後、前回のシェファリに対する疑問点は結局自力ですべて調べ、自力ですべて栄養計算を試み、レシピを作り直した。

けれどもその後も発作は思うように減少せず、横ばい状態。ケトンの検出自体もそこまで良好ではない。やはり私の自力の計算方法が間違っているのだろうかと一抹の不安をいだきながら、とりあえずは自分で計算したレシピを継続するしかない毎日。

大好きだった甘いものを一切我慢している上、使用できる野菜も限られているため、なかなか理想のなめらかなペースト食にはならず、吐き戻しの回数も多くなる一方だった。ケトン食をこのまま続けることに一体どれだけのメリットがあるのかー。

ほとんど毎日、顔を真赤にして苦しそうな声で命をかけてゲロをはくハルを見ていると、胸がぎゅっとなって涙が溢れそうになる。

・・・というのは嘘で、もう家族全員、はるの吐き戻しのうめき声には慣れっこになってしまって、またか、と冷めた気持ちで様子を見ていた。そうして自分も含め、そういう冷めた家族の様子を、これでいいんだろうか、と距離をもって自問していた。

ハルが言葉を喋れたとしたら、一体なんて言うだろう。こんなときは、喋れないハルが不憫でならない。もっとコミュニケーションできる方法があればなあ、と思ってしまう。

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11月にインドの主治医のもとを訪れ、正直に担当栄養士との関係が破綻してしまっていること、ケトン食をこのまま続けるべきかどうか悩んでいることを相談した。ところが主治医のミッテル先生、「始める前と比べて発作の回数が半減しているのは上出来。やめる理由はないわ。シェファリには私から話をしておくから、今のままケトン食を継続して、必ずまたシェファリとは連絡をとってコンサルを続けるように。体重が急激に増えたって言ったって、4歳で12キロなんて普通よりまだだいぶ痩せてるんだから問題ないわ。むしろいいことじゃないの」と、2ヶ月前と同じことをおっしゃるのみ。

私が心配しているのは体重スピードであり、それに伴う介助者の急激な負担増なのだけれど。シェファリに対する不満をぶつけても、ケトン食療法における不明点を聞いても、なんだか的を得ず。悪い先生ではないのだけれど、なんとなく伝わらない感。言語の壁か、インドあるある権威の壁か、はたまた文化や価値観の壁なのか。とにかく自分が考えていることを事細かに説明して議論を戦わせるだけの語彙力も気力も私にはなかった。

かといってシェファリにこちらから連絡を取るのはどうしてもシャクである。というか怖い。鉄仮面、怖い。

思い返される鉄仮面シェファリとプライドも正義感も高めの夫のバトル…↓

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ううーむ。いったいどうするべきか。

ほしかったのは仕組みとハウツー

結局悩みに悩んだ末、日本にいたときの主治医の先生にメールで相談をしてみることにした。本来であれば診察に該当するような相談をメールでするべきではないと夫から散々指摘された上で、それでももう私は他に頼るところを知らなかった。

忙しい先生にもできるだけわかりやすいよう、経過を順に追って説明する大作のメールを送ると、すぐに主治医の先生と、先生がつないでくださった病院の担当栄養士さんから、とてもあたたかく、丁寧なお返事をいただいた。

ハルに必要なカロリーやタンパク質の算出方法、ケトン食とカロリーの関係、そのプロセスに起こりうるトラブル。何の稼ぎにもならないのにとても真摯に丁寧に教えてくださる二人にただたただ頭が下がる思いである。

ここで初めて、私の計算方法があながちまちがっていなかったことを知ってまずはホッと胸をなでおろす。そして本来であれば、カロリーを必要ギリギリに設定することでよりケトンが出やすくなるはずである、という情報も得ることができた。ハルのこの体重増加スピードはやはりちょっと急すぎるし、効果的なケトン食のカロリー設定という意味でもカロリー過多なのではないか、ということもわかった。

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商売道具であるテクニックを開示することを恐れて、必要かつ大切な情報を囲い込んだシェファリからは、決して得られなかった貴重な情報が、ようやく手に入ったのだ。F先生、栄養士のOさん、この場を借りて、本当にありがとうございます。

頂いた情報をもとに、さっそく方針を再度確認。いや、確認ってもはや、誰かに相談するとかではなくて自分の中で確認して夫と共有するくらいの確認ではあるのだけれど。

当初のシェファリの1日4食、というのはこの際あまり気にしないことにして、お腹が空いたタイミングで3食、場合によって時々4食を目安に与える、ということを実施するようにした。カロリーは控えめで、必要な蛋白質は取れるように。

好きなものを食べるのか、発作の数を減らすのか

ところが年末年始、デリーでもぐっと気温が冷え込むと、それに比例するかのようにハルの発作も増えてゆき、私はますます頭を抱えた。

ハルが通う特別支援学校の先生によると、「冬は寒くなるから、みんな発作が増えるのよ」という。それが本当なのかどうかはわからないけれど、今年は例年になくインドでは寒波がきていて、沢山の人が亡くなったようだ。ケトン食療法を始めて半分に減ったはずの発作の回数はほとんど元通りの回数に戻りつつあった。

大好きだった甘いものを含め、食べやすいものや家族と同じものを食べたいときに好きなように食べられる自由と、発作の数が減ること。ハルにとってはどちらが大事なのだろうか。ハルは、どいうやって生きていきたいと思っているんだろう。

もちろんリハビリ中に発作で中断されてしまうことは、トレーナーにとってもハルにとってもあまり良いことではないように見えるけれど、実際のところは私にはわからない。

ただ、兄も姉も、ハルがぐずりだすと

「ほら、はるるん、お米食べたいんだよ。わかるもん。」

「プリン食べたいって言ってるんだよ、大好きだったチョコプリン」

とドヤ顔(?)である。なぜか自信満々。

レンチビは、大好物のチョコレートアイスを、他人には決して譲らずにいつも最後まで食べきるのだけれど、どういうわけかハルには「あげる」といって口に持っていく。はるるん、食べれないんだけど。ごめんね、ありがとねレンチビ。

当の本人が本当にはどう思っているのか、知る術はないけれど、家族の感情として言ってしまえば、同じメニューを食べることができないのは、ちょっと寂しいし、差し出したレンチビのアイスを舐められないのは、お互いになんだかちょっと悲しい。

母としてもう一つ言ってもいいのなら、視覚情報がないハルにとって味覚は大事な感覚だと信じて丁寧にダシを取ったり、いろいろな味付けを作ってあげてきた食事が、今や塩とオイルのみになってしまったのはちょっと切ない。(あ、スパイスは豊富に使っているけどね。)

はるるん、5歳の誕生日

そうこうしているうちに月日は流れ、ハルの誕生日が迫っていた。

「ハルの誕生日プレゼント何がいいと思う?」と兄弟たちに聞くと

「ごはん。」

「チョコプリン」

当たり前でしょ何聞いてんねん母、みたいな顔でしれーっと言われる。

え・・・・それってケトン食やめるってことだよね。

しかしいざ辞めるとなると、なかなか勇気がいるものである。やめるってどうやってやめるの?いきなり明日から、ご飯と、肉じゃがと、おひたし、みたいなメニューにしちゃっていいわけ?え?え?

そういうときは身近な医療相談、夫である(日本では一応医者だった)

ーいきなりやめて副作用とかない?どうやってやめればいいと思う?

「んーわかんないけど、」

(ーわかんないんか…)

「ちょっとずつおやつに甘いものとかあげたり、調理するときにじゃがいも使ったりすればいいんじゃん?」

(ーちょっとずつって、それが難しいんやないかい)

「とりあえず油分多めの食事は、カロリーを摂取するという意味では介助者もハルも楽だったから、油分を食事に付け足すのは続けていいと思う」

ーうん私もそう思う。

というわけで、その日からオレンジの汁を口に含ませ、なし崩し的に非ケトン食をスタートした。

いやほんと、今まできっちり計算してきっちりオイルの分量もはかっていたのだから、ちょっとずつじゃがいも足すとか、その分ちょっとオイル減らして、でもカロリーを考えて普通よりはオイル多め、とかさ、もう本当、逆に難しい。

「もう計算しなくていいからさ、なんでも好きな野菜、じゃがいもとか足して、オイルは計算しなくていいけど多めで」

とお手伝いさんに丸投げ。(爆)

そしてやってきたハルの誕生日には、卵とお砂糖たっぷりで手作り卵プリンを(長女が)作った。

というのも、実はハルの誕生日の直前まで熱で4日間寝込んでいた私。何もやる気が起きない中、同じく熱発で休んでいたけどすでに元気になっていた長女とお手伝いさんに大いに助けられてハルの特別な誕生日の準備がススメられた。

そして迎えた誕生日の夕食。

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ででーん。プ、リーン。ろうそくは5本。

ハッピーバースデーをみんなに歌ってもらって

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ついに、約10ヶ月ぶりにスイーツを食べたハル!!プリンに関して言えば、去年の誕生日以来…↓

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心なしかいつもよりニコニコするハル。嬉しいよね、そりゃ。よかったよね。うん、よかった。

翌朝以降もじゃがいもやビーツなど、今まで食べられなかった野菜を入れたペースト食を食べ、おそるおそる様子を観察していたけれど、発作もあまり普段とは変わらない様子。

今後どうなっていくかしばらくは注意して見る必要があるけれど、ひとまず悩みのタネだったことを一つ、決断して前にススメたことは、素直に嬉しい。

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はるるん、5歳の決断、おめでとう。

さっそくレンチビは嬉しそうにチョコアイスを差し出し、ハルは不思議そうにぺろぺろしていた。レンチビは嬉しくて、ハルと手をつないで歩きたいと促す。残念ながらハルはやっぱり立ち上がって手をつなぐことはできないけれど、チョコアイスはもう一緒に食べられるよ。嬉しいね。

ちなみに兄は、俺がはるるんのプリンを作りたかったと妹と本気の喧嘩をしていた。なんか、その喧嘩、ずるい・・・お前らまとめてみんな、愛おしいぜ。

(つづく)








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