法の下に生きる人間〈第84日〉

もし親族が亡くなり、亡くなった本人が遺言書を書いていたとして、しかるべき場所に保管しているのを発見したら、私たちはどうすればよいのだろうか。

遺言書に封印がされていた場合、いくら親族といえども、家庭裁判所に提出するまでは、勝手に開封してはいけない。

その根拠が民法第1004条に書かれてあり、もし違反した場合は、5万円以下の過料を負担することになる旨、次の第1005条に定められている。

下記のとおりである。

(遺言書の検認) 
【第千四条】
遺言書の保管者は、相続の開始を知った後、遅滞なく、これを家庭裁判所に提出して、その検認を請求しなければならない。遺言書の保管者がない場合において、相続人が遺言書を発見した後も、同様とする。 

2    前項の規定は、公正証書による遺言については、適用しない。 

3    封印のある遺言書は、家庭裁判所において相続人又はその代理人の立会いがなければ、開封することができない。 

(過料) 
【第千五条】
前条の規定により遺言書を提出することを怠り、その検認を経ないで遺言を執行し、又は家庭裁判所外においてその開封をした者は、五万円以下の過料に処する。

以上である。

遺言書を作成する者も、その遺言書を読むことになる者も、民法の条文に書かれているとおりにしかるべき手続きを行わないといけないのである。

こんなことまで法律で決めるのかと思う人もいるだろうが、遺産相続はトラブルがつきものだし、そもそもそういったトラブルが起こることを見越して、遺言書を作成しておこうと思うわけだから、法律に従っているほうが無難ではある。

そして、民法の条文番号をさかのぼると、第882条から第887条まで、相続について次のように定められていることが分かる。

【第八百八十二条】
相続は、死亡によって開始する。 
【第八百八十三条】
相続は、被相続人の住所において開始する。  
【第八百八十四条】
相続回復の請求権は、相続人又はその法定代理人が相続権を侵害された事実を知った時から五年間行使しないときは、時効によって消滅する。相続開始の時から二十年を経過したときも、同様とする。 
【第八百八十五条】
相続財産に関する費用は、その財産の中から支弁する。ただし、相続人の過失によるものは、この限りでない。  
【第八百八十六条】
胎児は、相続については、既に生まれたものとみなす。 
2    前項の規定は、胎児が死体で生まれたときは、適用しない。 
【第八百八十七条】
被相続人の子は、相続人となる。

以上である。

「被相続人の子は、相続人となる。」、お腹の中の子どもまで「すでに生まれたものとみなす」、「死産になった場合は、相続人として適用されない」など、前提条件がしっかりと記されている。

相続は死亡によって開始し、被相続人の住所において開始するという点もポイントである。

こういったことも踏まえた上で、遺言書は作成される必要があるのだ。

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