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海外駐在経験を振り返る(ロンドン編その2<英国の食事事情について>)

さて、前回に続くロンドン編の第二弾、テーマは「英国の食事事情について」、当時自分が強く感じたことを述べさせて頂きます。

英国の食事については皆さん、どのようなイメージをお持ちでしょうか?

2012年のロンドンオリンピックを境にしてだいぶ美味しくなってきたという話をよく耳にします。現に、私もその時期に出張で訪れた際に、そのように実感しました。お洒落なレストランも増え、総じて提供される料理の水準は上がったと思いました。勿論、物価は高かったので、相変わらず割安さは全く感じませんでしたが。

ということは、私が駐在していた1999年から2003年の頃の英国の首都ロンドンでの食事事情はどうだったかというと、もう皆さんお分かりですよね?

噂通りのお世辞でも美味しいとは決して言えない食事がそこで待っていました。

一番鮮明に覚えているのは、赴任早々の宿泊ホテルでの朝食で出されたパンとコーヒーでした。口にした時の唖然とした自分が思い出されます。

パンはフランスパンを切った形状をしているのですが、石のように固く、冷たく、そして歯で噛みきれない程の状態で唇の脇が切れそうになったことを覚えています。おそらくスープか何かに浸けて食べる類のものだったのかもしれませんが、それにしてもこれを皆食べているのか見渡してみると、やはりそれ程口にしている方はおりませんでした。また、テーブルにあったバターも正直並の味で、とても食欲が沸くものではありませんでした。それに追い討ちをかける形で、ブレンドコーヒーを飲んだのですが、アメリカンではないのに水で薄めたかのような味わいで、今までに飲んだことのないコーヒーがそこにありました。サラダも然り、そして、最後に茹で玉子だけは何とか食べれた状態で、初日の会社に向かったことを思い出します。

勿論、私が宿泊したホテルの問題だったのかもしれませんが、その後も総じてパンとコーヒーについての印象は変わりませんでした。

英国料理と言えば、ローストビーフを挙げられる方が多いとは思いますが、私も何度か騙されたと思って、ロンドン市内の中心部にあるローストビーフで有名な高級レストラン(2軒)に行ったことがありますが、確かに肉の質は良いのかもしれないのですが、あのパサパサ感にうんざりした記憶があります。ジビエ料理も同様に有名で、鹿料理が結構人気があったと思いますが、決して何度も食べたいとは思いませんでした。

唯一、誰もが知っているフィッシュアンドチップスについては、店を選べば、美味しいということは学びました。高カロリーの食事で、脂ギッシュな食べ物ですが、タルタルソースではなく、お酢(ヴィネガー)を掛けて食べると絶妙に美味しかったのを覚えています。場所は忘れましたが、屋台形式で、新聞紙に包んで食べさせる所があり、そこは最高でしたね。でも1ヶ月に1回も食べれば十分でした。

やはり、私が困った時に良く行ったのは、中華料理屋とインド料理屋の2つが双璧であり、それが最も外れの少ない料理でありました。出張者や家族・親類・友人などが遊びに来た時には、間違いなく連れて行っておりましね。自宅近くにも、その2つの料理のレストランは数多く存在し、人気店はいつも満員でした。それから駐在最後の方ではピザ専門のレストランも人気があって、結構人が入っていました。間違ってもイタリアンでパスタは選択しない方が当時は無難でした。茹で切った柔らかいパスタが主体で、アルデンテを望む日本人にとっては絶対にオーダーしてはいけないものでした。

さて、英国の居酒屋と言えば、所謂「パブ」がありますが、これはどこにも存在し、私が住んでいた住居地区にも幾つかあり、地元の憩いの場的な感じで、ビールやワインを片手に、ビリヤードやダーツをやるスペースが備えられていたり、室内には大きなモニターが据え付けられ、大好きなサッカープレミアリーグの試合を生観戦していたりと、英国らしい雰囲気を強く感じさせる貴重な場所でした。そこでの料理を、「パブ飯」と言っておりましたが、これはポテトと鶏肉系を選んでおけば、大きく外すことはなかったです。また、私が良く通っていたパブのラザニアは結構美味しくて、たまに土日の昼にも行ったりしていた程でした。

まあ、探せば英国ロンドンでも食べるものはありましたが、今思えば満足感はあまりなかったですね。

と言うのも、仕事でもプライベートでも、お隣の国の首都パリには結構行く機会がありましたが、最初の出張の時に、パリで食べた街角にある普通のカフェでオーダーしたクロワッサンとカフェを口にした時、自然と涙がこぼれ落ちてくる程、美味しかったことを覚えています。特急のユーロスターで3時間強乗れば、夢の場所であるパリに着くので、間違いなく、多くの英国人がパリに遊びに行く気持ちはよく理解できました。英仏は国同士はあまり仲が良くないと思っていますが、なるほど、あの当時の食事事情からすれば、流石のイギリス人もたまにはパリで美味しいものを食べたくなるという気持ちは容易に理解できました。

さて、食事事情ということで、最後に「ワイン」について触れたいと思います。

英国産の有名なワインは基本ないのですが、英国人のワイン消費量は昔から世界レベルでも高く、質の良い高級ワインを取り揃えているワインショップは、ロンドン市内に結構目にしました。私も時折現地のワインショップを訪れて、ワインの勉強をしたものです。あの料理でどこにこのワインが、という思いもありましたが、私も決して日本酒だけではなく、ワインも大好きでしたので、ワインについては、その当時より英国に対して良いイメージを持っています。

最後に余談ですが、フランスの2大ワイン産地はボルドーとブルゴーニュであることはご存知だと思いますが、前者のボルドーは歴史上、一時英国領であったのをご存知ですか?英国にとり、自国の領土にしておきたい程、ワインの産地であるボルドーは特別な土地であったはずです。イギリス人とワイン、この結び付きの強さだけは本物であるということでしょうか。次回は第三弾として「英国人の気質について」お伝えしたいと思います。どうぞお楽しみに。

リスク管理コンサル 髙見 広行