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「はれのひシンデレラ」花嫁を輝かせる魔法のドレスは、時代を超えて進化すべきではと思わせるドラマ

ファッションデザイナー桂由美の半生を綴った、読売テレビ制作のスペシャルドラマ。半生と書いたが、現在彼女は93歳。ある意味、個人で見ることのできるドラマを自分の監修で最後に作れたということだろう。ドラマを見ると、朝ドラの主役にしてもいい感じではある。私の知らなかったウェディングドレスが日本に根付くまでの話であり、実に興味深くもあった。

ラストに、今の日本のウェディングドレス着用率が94%とある。これは日常での日本人の着物を着る割合とも絡んでくる数値であろうし、結婚式が簡易になってきて、ドレスだけはという感覚が多くなったこともあるだろう。だが、これを見ると、桂由美氏のこの分野での貢献は並々ならぬものがあり、それは、フランスに留学して、初めて魅せられたそれが自分の仕事だと確信した感んじであり、その想いを強く行動した結果なのだろう。もちろん、日本の価値観の変化に助けられたところはあると思うが、日本の女性クリエイターの走りとも言える彼女の人生は多くの人に知ってもらいたいものであることは確かだと思った。

まずは、裁縫の学校を作った母の娘として生まれたのに裁縫が下手だったというところが、サクセスストーリーの始まりとしては面白い。そして、ウェディングドレスの着用率が3%の1960年代初頭から、1980年代初頭で20年間でやっと50%まで引き上げたというのは、私的には意外だった。

たぶん、まずは生地がなかったということもあり、ドレス自体がかなり高価なものではあったのだろう。だが、1965年のブライダルコレクションが行われるシーンでモデルにもなっていた九重佑三子が「ウェディングドレス」という歌を歌ったのは1963年であり、人の認知はあったはずである。確かにここで店の開店後も親にキャンセルされるとか、そういう時代なのだ。

だから、この着用率の話は、高度成長と日本の生地メーカーの努力によるところも多い気がする。短い時間の中でそういう話まで詰め込めなかった感じは残念だが、アメリカの発表会で着物をヒントにしたドレスを出して、一躍、世界的に脚光を浴びたという話は興味深かった。ある意味、敵の形を真似するみたいな戦略。でも、その前に、主人公が着物の大家にエールを送るようなシーンがあったが、そういう、自分の仕事に向き合う時の余裕みたいなものがあって、彼女の成功があったのだろう。大事なことである。

主役を演じた高梨臨。もう一つ主役としては迫力が足りない気もしたが、芝居は問題なかった。そして、母親役の鈴木保奈美とのコンビネーションは良かったし、ドラマとしてのまとまりも彼女たちが演じたことでうまくハマった感じではある。

考えれば、こういう冠婚葬祭に関連する業態にお金が循環することが、景気をあげる一要因ではあるのだと思う。そういう意味ではウェディングドレス業態がもっと艶やかに皆に注目を浴びられるような時代が再度くることを望みます。

で、最後に語られた、本人がウェディングドレスを着なかったという話はクリエイターらしい話で共感いたしました。なかなか良きドラマでした。桂由美様、まだまだ長生きをして最後までクリエイターいてください!

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