見出し画像

「TOKYO MER~走る緊急救命室~(第10話)」テロリストをあくまでも残忍に描き切る先に語られることは何なのか?

来週が最終回。あまりにも残忍な最後だった。MERが勤めた現場での最初の死者が鈴木亮平演じる喜多見の妹だったとは。そして、テロリストの城田優からは冷たい返礼。もはや、ここでの城田演じるツバキは人間ではない。そう描くことでドラマがリアリスティックになるという構図。しかし、ここで鈴木の医療への思いは断たれてしまうのだろうか?それであったら、MERというものをここまで描き続けた意味はないだろう。

先週までは、一緒に働くMERのメンバーたちが、鈴木のスーパーマンぶりに感化され、自分の仕事にとにかく最善を尽くすように、ただ人の命を守ることに没頭していた。そして、今回は、城田と通じていた、医学生たちに、「医者とは何なのか?」ということを熱く訴え現場の命を守った。

たぶん、テロリストはそういう綺麗事の正義が大嫌いなのだろう。そんな正義を訴え自分の命を守った男の、最愛の妹を餌食にして、勝利宣言をする。考えれば、昨今のテレビドラマでここまで強烈な復讐を描くとは、TBSのドラマはまだ死んでないと思ったりもする。逆に考えれば、えげつない。

そして、視聴者から見れば、城田のやった行為は、鈴木を潰したい政府や官僚のやりたかったことであったりもするのだ。官僚の鶴見慎吾が鈴木の妹から鈴木の過去を聞き出して、マスコミに流したことがこの事件に起因することを考えれば、政府自体がテロリストであったりする。そして、それは現在私たちの多くの人々が感じる日本政府への不信感にもつながる。だから、遠回しながら、政府批判を展開するこのドラマの結末はとても気になる。

しかし、見終わって、とてもやるせなくなった。日曜の夜に観るにはヘビーすぎる。佐藤栞里の死顔の無垢さと、鈴木亮平の狂ったような顔が目に焼き付く。そんな、状況の中で、なぜかMERの本部で電話する城田優。テロリストなら、どんなセキュリティも破るというのか?

ここまで収集がつかない中で最終回。城田が捕まらないということはないだろう。自殺するという選択はあるが…。無意味なテロリストの命は必要かどうか?というところに問いがいくのか?色々想像するのだ。そして、都知事の命はどうなるのか?政府の心は洗われるのか?なんか、腐ったものが一気に吐き出された状態での最終回は、見るのが楽しみというよりも、辛い感じがある。とにかく、視聴者は何かの光を感じるためにテレビに向かうしかないということだろう。

そういえば、公安の稲森いずみは、流行り病にかかったからだろう、姿を見せなかった。クライマックスでの罹患で、仕方ない処理がとられているのは少し寂しい感じはした。稲森がいたら、鈴木の交渉シーンもまた違ったものになった気はする。

この記事が参加している募集

#テレビドラマ感想文

21,101件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?