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「ノンレムの夢」バカリズムの日常の取り出し方のチャーミングさが好き

バカリズム脚本の連作ドラマ。今回が4回目らしいが、以前のものを私は見ていないと思う。ある意味、バカリズムという人に興味を持ち出したのがここ2、3年であり、映画などの脚本もなかなかうまくなってきてるなと思ったところでの、「ブラッシュアップライフ」だった。とにかく、彼の脚本は日常の中の深掘り的なものを感じるのがいい。そして、気になる一点にフォーカスを当てて、見ているものを引き込んでいく。その結末は、なかなかチャーミングである。そう、昨今のお笑い系のバラエティーになくなったものは、「チャーミングさ」だと思う。それが存在する笑いは多くの人を引き込んで行く波動がある。お笑いに限らず、ある一定層を引き込めばいいという今のエンタメのあり方から考えれば、そんなもの必要ないという人もいるかもしれないが、私はやはり、10年後に見ても笑えるような笑いがあるエンタメが欲しいと思うのだ。そういう意味で、バカリズムがそういうものを目指しているわけではないのだろうが、ここに提示された三本のドラマはそんな領域にあると思う。三本とも面白かった。

「夕暮れの葛藤」
今回の3本の中でバカリズム本人が脚本を手がけてるのはこれだけのようだ。だからというわけではないが、一番サスペンスな一本になっていた。最初は、夜の晩餐のためのカツ丼とビールを持って、二つのレジのどの列に並ぶかという話から始まる。こういう日常で誰もが迷う話から入るのは引き込まれる要因である。私なら、若手の北香那と、ベテランの主婦のレジなら、北香那のレジを選ぶかな?ここでは、そういう観点は一切出てこない。主演の小澤征悦は早く帰って食事にありつきたいだけなのだ。そんな、ただの列選択の話かと思ったら、小澤が指名手配犯で、それにまつわるレジの時間稼ぎの話だったという顛末。そう、話のフォーカスが変わっていくところが、実に面白い。その中に、レジの仕事の極意的なものも入れ込みながら、小澤はただの追い詰められた獲物だったわけだ。スーパーのたかが15分の中でここまでサスペンスをうまく詰め込むのは流石である。そして、警察に捕まってのカツ丼のオチw、良いですな。

「推してもいいデスか?」
夏帆は、可愛い役をやらせると、とことん可愛い人だと思う。ここでは、「推し」がいないと生活に満足できない女。好きなグループの推しが引退してしまい、ぼーっとしてる中で、スーパーの店員を推しにする。彼が消えれば、今度は役所のおじさんを推しにするが、そのおじさんも若い子に手を出してがっかり。つまり、夏帆が推すものは消えるという方程式の話。まあ、ダメンズみたいな話もそうだが、ある波動の中で生きることしかできない人というのはいるものだ。これ、共感できる人多いでしょうね。とはいえ、最後に人類全部推しにしたら、隕石が地球にぶつかるって、なかなか壮大なお話でした。このオチはなかなか作れないですな・。

「出世したくない君へ」
主演、瀬戸康史。ドラッガーの本を読み、名言をノートする、やる気を見せびらかすような男が、友人に馬鹿にされ、出世しない人間になるセミナーに通う話。講師役の八嶋智人が、八嶋流のノリで出世するような人間はダメだと嗤い飛ばす。ここは面白かった。そして、そのやり方に感化されてそっちの方で目立ってしまう瀬戸が、また最後に友人に嗤われるという話である。でも、そう、社会性みたいに言われるどうでもいいことを自ら壊していくと見えてくるものはありますよね。いつも会社に、始まる15分前に行ってた人が、いつも遅刻するような生活になると、確かに見える世界は変わるだろう。そういうのに臆病なのが日本人なわけで、その辺に対する皮肉は十分に詰まった話だと思った。

とにかく、3本ともなかなかの快作。バカリズムから、しばらくは目が離せませんよね。できることなら、朝ドラ書いてほしいと思うのは私だけだろうか?



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