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「舟を編む 〜私、辞書つくります〜(第9話)」舟への積み残しを許せない心。言葉に対し言葉で伝えなければいけない心

前回の池田エライザが、辞書の中にあるべきものがないことに気づいたところからの今回。それを皆に説明するシーンは省いて、編集部の皆が、「自分が悪い」と謝罪したり、池田に感謝をするところから。自分たちの仕事にミスがあったことに対し、素直に自分のいたらなかったことを反省し、チームとしてのミスであるという空気感にすることは重要で、こんな謙虚な仕事現場って本当にあるの?と思うところが私にはあるし、こういうチームでのものつくりなら最高だなと思ったりもした。そう、これが今の時代のチームでの仕事になくてはならない心持ちであるのではないかと思った。こういう気持ちなら少数精鋭で仕事は回る。

そして、柴田恭兵がこの件で池田に「『ちしお』があなたを呼んだ」という言い方をした。そう、池田の直感というか、彼女の生活の中でその言葉が使われ、彼女は呼ばれるようにそれを調べたら、その言葉が欠落していたということだ。確かに、生活してる中でそういうことはある。必要だったものを不意に思い出すということも同じだろう。そう、自分の中で必要なものが心に囁くのが「人」というものなのだ。こういう事象を何回も感じると、生きてるということは自分一人で回ってるものではないとも思えてくる。そう、宇宙は真摯に考えて生きていると、確実に助けてくれるのだ。

そして、100万語の採集カードの再チェックが始まる。アルバイトも向かい入れ2ヶ月かかる仕事を2週間で済ませるという強行軍。その風景の表現の仕方は、ある意味、紋切型ではあったが、見ている方も一緒になってその修羅場に立ち会っているような感覚もあり、緊迫感があって良かった。その間にあった幽霊騒ぎが、柄本時生のせいであったというオチも面白かった。

というか、終わった瞬間に柄本が一緒に拍手してる流れって必要だったのかw笑ってしまったが・・。ちょうど、その瞬間に柄本が最終デザインを持ってきたという作りは良かったですけどね。そう、彼が朝日を見つめるカットが少し前に入って、そして、なかなか素晴らしいデザインが披露される。海に文字が散らされているのは素敵!

そして、それが終わったことで、矢本悠馬と食事をする約束を果たす池田。そして、それは、前回から匂わせていた矢本の池田への告白タイムだった。そんな告白の前に月を見て夏目漱石がI Love Youを「月がとっても綺麗ですね」と訳した真偽の話をする池田。そんな池田の言葉に動揺しながらも矢本は「好きです」とはっきり言う。そして、つい「ごめんなさい」と言ってしまう池田。それは彼が嫌いなのではなく、自分に対して自信がなかったのだ。

そして、矢本の一人去っていく後ろ姿を見て、自分の過去の失敗をクロスオーバーさせ、追いかけて矢本に「私も好きです」と言う池田。そこに熱い抱擁やキスはないが、明らかに一緒に仕事をして信頼できた同士の顔があり、小さい頃の池田が繋がせてくれた感じに描かれる手を繋ぐシーンは、思いっきり色っぽかった。まさに、こう言うのが「月がとっても綺麗ですね」と言う日本人的な照れも含んでの「好き」なのかもしれない、しかし、このシーンは美しかったし、その後の池田と三村里江のお話も良かったです。

今回、初めの方で「言葉のナイフで傷ついた時、それを治すのも言葉」と言うセリフがあったが、まさに「言葉」と言うものは、人を罵るように使うことのために生まれたものではないと思った。人に自分の好意を持ってるという心を正確に伝えるためにあるのだろう・・。でもさ、池田と矢本という組み合わせのラブシーンにこんなに感動させられるとは、本当にごちそうさまでした。

で、最終回は、コロナ感染の時代に突入しての辞書刊行の話のようだ、とにかくもこの新しい時代の「舟を編む」をどうまとめるのか、楽しみでならない。

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