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ロマンポルノと対峙した日々(「あの頃、文芸坐で」外伝)【10】高橋伴明監督「ドキュメントポルノ舌技に泣く」渡辺護監督「好色花でんしゃ」買取作品の華

昨日書いた記憶から一週間後の8月22日「牛込文化」で三本立て。「ドキュメントポルノ舌技に泣く」「好色花でんしゃ」「あそばれる女」。結構地味な三本立てを見にいっている。多分、高橋伴明、渡辺護という名前に惹かれて行ったのだと思う。まだ、この頃は、ほぼロシアンルーレットのようなピンク映画を観に通う余裕もなく、にっかつ封切りの中で、そういう監督の映画を観ていた頃である。

そして、当時、11PMやトゥナイトのような深夜番組でも、高橋伴明監督などはよくゲストで出ていたり、特集で取り上げられたりしていた頃である。そのくらい一般のメジャー映画とも、ロマンポルノとも違う、輝く映画を作れる人であった。その本領は、昨日、書いたように、この一年後の「TATTOO刺青あり」の封切り、その後の関根恵子との結婚で示された感じだった。そして、この日観た伴明作品は、今も強く記憶に残る一本だ。

「ドキュメントポルノ 舌技に泣く」(高橋伴明監督)

朝霧友香という女優がいた。ピンク映画にも、ロマンポルノにも出ていた印象的な女優さんだった。少し色が黒いのと、髪が長い、トランジスタグラマーというような小柄な肢体。そして、スクリーン上に観る彼女はとても妖艶な感じも示していた。この映画では、同一人物なのに、朝の顔と夜の顔を演じる。スナック経営の夫が仕事が忙しく、相手をしてくれないのと、浮気をしているのに嫉妬し、今は亡き双子の妹が朝霧の中に入り込み、スナックの客として現れ、違う女として夫を肉体関係を持つ話。いわゆる、ドッペルゲンガーを映像化した話だ。主題歌は森田童子。ラスト、彼女の曲が流れる中を、二役を一度に演じているような姿で走る姿が秀逸な一本だ。一人が二人を演じることで、男の本質、恋の本質、肉体の本質が見え隠れする。もう一度、観てみたい一本だ。というか、刹那い女性像を描かせたら当時の高橋伴明は本当に力強いものを作っていた。森田童子の曲を聴くと今も伴明作品の女優たちの顔を思い出すが、朝霧友香もその一人である。

「好色花でんしゃ」(渡辺護監督)

製作は「ピンクリボン製作員会」と「現代映像企画」なので、買取作品に当たるが、原作は藤本義一で脚本にも名を連ねている。そして、主演はにっかつの鹿沼えりと、チャンバラトリオである。そう、ピンク映画の予算で結構なロマンポルノを撮った感じの作品。話は、鹿沼の夫が蒸発し、借金を返すために夫の父と一緒にストリップのシロクロショーを巡業する話。タイトルにあるのは「花でんしゃ」だが、そんなアトラクションを鹿沼えりがするわけではない。当時の私のこの映画への評価は結構高いが、あまり覚えていない。まあ、渡辺護監督で評価がいいものは、映画がしっかり成立していたからだろうと思う。とにかくも、スタッフ、キャストを見れば、今、観てみたい人も多い一本だと思ったりする。

「あそばれる女」(小沼勝監督)

風間舞子は、当時、とても淫乱な演技の女優というイメージでロマンポルノ主役のローテーションを護っていた。決して美人ではないが、男を興奮させる女優ということだった。だから、確かに映画はとても過激なシーンが多く、食品をSEXに汚く使ったり、私的にはあまり好きではなかった。AVの時代になってもこういう作品は作られ続けるのは、そういうのが好きな男がいるからなのだろうが、どうなんだろうね?と今も思う。

話は、レイプから始まり、それがスワッピングに転じてどんどんエスカレートしたプレイに移っていって、人間の本性が出る的な話だ。そう、それ以上の中身はない。どうやったら猥褻な物が撮れるか?風間舞子主演映画はそういうものを追求していた感じはあったが、見返したくない映画だったりもする。

この地味な感じの三本立ての話だったが、これでもこれだけ記憶が繋がるのは、結構、真剣に観ていたんでしょうね。一本一本を見返したいというよりは、私が観ていた劇場にタイムスリップして、もう一度雰囲気を体現したいというのがこの連載の本音だったりもするんですよね。

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