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「さよならマエストロ~父と私のアパッシオナート~」西島秀俊の心地よい笑顔と芦田愛菜の冴えない表情と・・。

日曜劇場、甲子園の後はオーケストラ。昨年も局は違うが「リバーサルオーケストラ」というドラマがあった。こちらも市民楽団が名の知れたプロを迎えて、存続を賭ける話だったが、こちらは、最初から3ヶ月後の解散が決まった楽団。そして、プロの指揮者と家族のアイデンティティの回復もテーマに入っているのは、「リバーサル〜」に似たところもある。舞台は今回は富士市のようだ。地方の交響楽団というものが辛いのはわかる。それが、町おこしになっていないという現実は直視すべきだが、まだまだ、その辺りやりようはあると私自身は思っている。クラッシックに興味ある人は人口の1%みたいな話があったが、昨今、私はストリーミングで聴けるので、昔よりクラシックをよく聞くようになった。CDを買うところから始まる入口が、すぐ聴ける入口に変わったことで、クラシックのハードルは低くなってると思うし、広報次第では、2流でもクラシックコンサートに結構な人を入れることは可能なのではないかとも思っている。

そんなことを考えながらの視聴。脚本は、大島里美のオリジナル。一回目を見る限り、それなりにしっかりしている。ただ、主人公の親子に壁を作り、西島秀俊がマエストロをそこで辞めた理由は最初からしっかりとは開示されない仕掛け。情報は「娘の芦田がコンサートを抜け出して事故にあった」というもの。それが本質的になんであったのか?で、それで何故に西島が仕事を辞めたのかは、後で徐々に語る形。つまり、西島がマエストロを引き受けることになった楽団の成長と、親子間のアイデンティティの回復をシンクロして描こうということだろう。個人的には、そういう話は好きである。そして、多分、ラストには「奇跡」が起こらなければドラマとする意味がない。その「奇跡」は何かを見たいがために見るドラマだと思う。

初回は、離婚寸前の妻、石田ゆり子からの電話で故郷に戻ってくる西島。そして、そこには地元の楽団の存続のために、マエストロを引き受けてくれないかという話が・・。そして、家庭内は西島と芦田と、その弟の大西利空の3人暮らしで、誰も家事が得意でないというすごい設定。西島がそれを奮闘する姿がいるかどうかは、ここからの話次第だなとは思った。

そんなことはともかく、西島が音楽を好きであり、交響楽団が音を鳴らすところにいると居ても立っても居られないという性格みたいなものは初回でうまく出せていた。そして、楽団員に楽譜に頼らずに即興で音を出してみろとか、ベートーヴェンの「運命」はどう聞こえるかみたいな話はとても面白かった。「運命」がどう聞こえるかの話では、ティンパニー担当の久間田琳加がその出だしが、自分の緊張感に聞こえるといい、それを面白いと言って聞き続ける西島が、彼女がこの曲をよく知っていることを彼女に悟らせる。それが、その後の演奏会での彼女の笑顔につながるわけだが、こういう連鎖でオーケストラが変わっていく風景を見せていくのだろう。そこの到達点は、西島自身の笑顔の演技でよくわかる。何か、彼の笑顔が日曜の夜を楽しくしてくれそうな予感はある。

それに対照的に描かれる芦田愛菜の無愛想、役柄的にはこれでいいのだろうが、芦田を見たいと思う人には不満だろう。彼女がどう変化していくのかもこのドラマの見どころ?というところか。

そして、最後の方で、まだ楽団員ではない、當間あみや佐藤緋美、新木優子などが出てくるが、彼らがどう楽団にリンクしてくるかは楽しみだし、こういう初回での登場のさせ方も上手いと思いましたね。

交響楽団を描くドラマは、その演奏曲目も大事。最初から、ベタに「運命」で来たということは、そんなにマニアックな方には進まないのだろうが、楽しみである。そして、それはドラマを盛り上げるための最高の素材にならないといけませんよね。

ラスト、石田ゆり子はどこにも行っていないことがわかり、玉山鉄二と石田はグルだとわかる。石田が何を望んでるのかはわかる気がするが、どこでこの嘘がバレるのかはドラマ的には大事なところでしょうな。

とにかくも、日曜劇場、今年もなかなかちゃんとしてますね。

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