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有機的に描かれる犯罪者。無機質な金の話をぶち込んで現代を描く「MIU404(第4話)」

先週の残り香はなく、反社会勢力から奪った1億円持って逃げる女の話。とても切ない物語に仕上がっていた。そして、犯罪を犯したものは時代の被害者的な羅列はなかなかエグい。そのラストにかかる米津玄師の「感染」が観終わった後に妙に耳につく。それがこのドラマの覚醒剤のごとく。

今日の犯人役の美村里江も、その確実な演技でドラマを硬質なものにしていた。もともと実力のある女優さんだが、こういう犯人役もこなすのは経験力だろう。最後にウサギを送るところでの満面の笑み?はこの回の訴えるところ、社会のねじれた部分を嘲笑うかのような不適さを含んでいた。

このドラマが放送されている今も、コロナ禍の中で、金を動かそうとしている輩がいっぱいいて、もはや、自分の金でないので感覚が麻痺しているとしか言いようがない。そんな醜い金は簡単に、人から人の手に渡って、ないもののように扱われるのだろう。国の金、いわゆる税金も同じである。恣意的に政治家が自由に使っているようにしか見えない。

コロナ禍で、様々なものの表層が削られて、本質が見えてくる時代に、本当に見事にハマったドラマになっている。脚本家、野木亜紀子の視点の確かさが、硬質なエンターテインメントを作っているのだろう。

そして、多分このドラマにヒーローはいない。今回の中で星野が犯人の銃口をふさぎ自分の死を怖くないかのようにするところで、綾野が激しく怒る。ここに、この二人のそれぞれの過去や性格が見えてくる。二人とも、加害者であり被害者であるようなものを見せてくる。こういう細かい伏線のようなシーンが各回に仕込んであり、それが最終章へと結ばれていくのだろうと思わせるのもテレビドラマの構造として秀逸である。これは、2時間の映画ではできない技なのだ。

麻生の脇にいる、黒川智花も、そこに存在している導線はわかったものの、これからどこで誰と絡んでくるのかはよくわからない。こういう、程よい謎をきれいに見せていくのも確かな技。そして、先週のラストの菅田将暉が今回、出てこなかったのは、また気持ち悪く次回に視聴者を誘う。

ドラマ全体がパズルになっているのである。ある意味、テレビドラマは小説を読むようなスタンスで見ればいいのかもしれない。そこに、とても新しさを感じる。それだけ、脚本のグランドデザインがよくできていて、それでいて毎回、単発ドラマとしての面白味も持っている。凄い!

ある意味、それは、デジタルでものを書いているからできる技でもあるのかもしれない。全体像を書いて、肉付けして、話をパズルのように壊して、脚本を構築している感じ。野木さんの執筆方法は知らないが、明らかに過去の脚本家とは違う文体がそこにみられる。それは過去の彼女の作品でも同じである。

野木亜紀子氏が、多分、この令和でトップランナーの脚本家でいることは確かであろう。それは、彼女の才能なのだが、このカオスな社会の動きを的確にドラマの中に融解していくような触感にただただ、ジェラシーさえ覚える。

次週が待ち遠しいドラマ、久しぶりである。


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