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「舟を編む 〜私、辞書つくります〜(第5話)」言葉が心をゾワゾワさせる。辞書はそのゾワゾワも静かにさせる

5回目。辞書の編集はさらに緻密に確実に進められる中、池田エライザは「辞書引き学習会」というものに参加させられる。小さな子供達が初めて辞書というものに触れる機会を作るという催し。子どもたちが好きな戦隊モノの衣装を着て臨む。そして、そこで出会う一人の少年がいた。少年はある言葉「うむん」という言葉が探したくて、他の子が持っている辞書を取ろうとする。そして、その場は母親(村川絵梨)も加わり、退席するが、その子が気になる池田はその子に自分の名刺を渡す。

数日後、その子が池田を訪ねて会社にやってくる。柴田恭平が、その子に丁寧に探している言葉を聞くが、見つからない。カードにある架空の生物の名前に聞こえるが、そこカードの百科事典にも出ていなかったという。そして、母親の話を聞いていくと「産むんじゃなかった」という言葉の最初の部分だということがわかる。人は、つい思っても見ない言葉を口走ったりする。だが、それも言葉だ。その言葉を子供が意味もわからずにいたことは救いだった。編集部が、それは新しいキャラクターだから、次の改版の時点には入るよという説明は、ある意味子供騙しだが、それでいいのか?私的には、ここで子供に対し大人と接するように話す柴田の空気感がとても印象的だった。大人がこういう態度で子供に接していけば、また違う社会ができて行くだろうなと思えたからだ。それくらい、言葉も言葉使いというものも生きる上で大事なものであり、辞書とは、そういうものを見直せるアイテムだということも、ここで見えてくる。

あと、少年の母親役の村川絵梨さんの演技がとても良かったです。リアルな普通のお母さんが子供にうまく接しられなかったことに気づき、彼女自身も子供に教えられていてる光景。このドラマは、言葉のドラマだが、こういう人が人に対峙して、当たり前のことを気付かされるようなシーンがとても良い。全てのシークエンスに、いろんな養分が潜んでる感じが良いですよね。

そして、それを受けての池田が母親(森口瑤子)にスキと言えていなかったことへの回答のお話。池田は両親が離婚していて、森口とは別々に暮らしていて、母親がスキなのだが、そこに愛情表現がうまくできなかったり、母から好かれていないのでは?という過去の記憶がある。そんな中で、美村のお店で母の誕生日会を開く。美村の料理に笑顔が絶えない時を過ごすが、もう一つ素直に母と会話できない池田。母と別れた後で、小さい頃母に「この子はからかってばかりいる」といわれたことが想起し辞書を引き出す。「からかう」という言葉には、方言で「人に尽くす」という意味があった。そう、池田は勘違いしていた。いてもたってもいられずバスの発着場に向かう池田。言葉というものは、人の心をどうにでも導ける。だからこそ、辞書というものがあるということを知らしめる回でした。

しかし、子供に「うむん」を説明するのに、池田の書いたトカゲの絵を持ち出す野田洋次郎。意外にそういうお茶目というか人を揶揄うところがあるのが良いキャラクターですよね。


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