見出し画像

名作映画を見直す【5】イースター・パレード

MGMミュージカル映画の一本。1948年。 チャールズ・ウォルターズ監督作品。主演、ジュディ・ガーランド、フレッド・アステア主演。

MGMのミュージカルには、理屈はいらない。単純なストーリーの中で、歌と踊りをどれだけ楽しめるかという作りだ。主役やら、脇役まで、客を楽しませることを心得ているプロの仕事を観ることができる。

話はイースターからイースターまでの1年間の話。そして、男女の4角関係のお話。ショーのパートナーの捨てられたアステアが、酒場でジュディを見つけ、新しいパートナーに。練習の末、新しいショーを開拓。成功するが、ジュディのアステアへの思いがうまく伝わらない。そんな中で、昔のパートナーを忘れられないアステアと、ジュディを思うアステアの友人が絡む。恋心と嫉妬をうまく描きながら、ハッピーエンドに導く。当時の日本人はこれぞアメリカ映画として観ていたのだろうな?と感じる作品である。

この間、伝記映画「ジュディ」が公開されたばかりの、ジュディ・ガーランド。絶世の美女というより、庶民に愛される女優という感じである。芝居は流石の感がある。出てきたときの、下手くそなステップから、最後には、メインをはれるダンサーにという、道程をちゃんと演じられるのもすごいのだが、全編観終わったあとで、彼女の存在感がこの映画を覆い尽くしている感じは、さすがという感じだ。最初にピンクのショーの服で出てきて、最後は白で華麗なレディに。シンデレラストーリーをうまく演じている。

そしてフレッド・アステアは、そのダンスを観ているだけで拍手したくなる。こういう芸というのは、舞台あってのものなのだろうが、時代を超えて痺れる。ピンでダンスでこれだけ見せられるって感動しますよね。最後の方で、スローで彼のダンスを捉えるシーンがあるけど、そのキレの良さというか、動きの完璧さがよくわかるので必見です。この役、最初はジーン・ケリーにきたもので、彼の怪我によりアステアになったとのこと。どちらでも、似たような映画にはなったでしょうね。

そういえば「雨に唄えば」と同様に土砂降りの雨のシーンがあるが、当時、これをスタジオで降らせるのは大変だっただろうが、これぞハリウッドというのも、こういうシーンなのでしょうね。

映画的には、最初のイースターパレードで、ジュディに、「来年は、みんなが振り向くようにしてやれ」とアステアが言い、それが本当になって幕というとてもわかりやすく、気持ち良い作り。

あと、スタンダードの4:3の画面なのだが、舞台を実に効果的に捉える構図の作り方はなかなかである。ついこの間、「キャッツ」でそこのところを下手くそと書いたが、画面が小さくても、撮り方でダンスシーンは十分に迫力が出せるということがよくわかる。もちろん、全てのダンサーが一流なことが条件ではあるが、MGMのミュージカル映画には今になっても学ぶものが多い。

日本での公開は1950年であるが、進駐軍がきて、クリスマスは全国的になったものの、イースターというものは全然流行らなかったのだろうか?バレンタインデーやハロウィンが商業的に盛り上がるものになってる昨今でも、イースターだけは、ほとんど誰も手をつけていない気がする。ウサギと卵というキーワードを、当時の日本人は理解できたのか?というのも気になるところ。

とにかくも、アステアとジュディの踊り歌う姿だけを観ているだけで幸せになる感じは、これが娯楽映画だと言っている感じであり、それが当時のハリウッドのパワーだと感じる次第である。MGMのミュージカルは少し元気を取り戻したい時には効果的である。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?