見出し画像

「#リモラブ(最終話)」コロナ禍とSNSの世界の面倒臭さをドラマにするということ

このドラマ、今期のドラマとしては、最も新しいところを描いた作品だった。だから、期待も大きかったが、まだまだ脚本家自体が、今、世界で起こっていることを整理できていないというのが、ドラマの出来につながってしまった気がする。(ここまでまとめて提示したことはすごいと思っています)

全員が、基本マスクをしている状態で芝居をするということは、かなりの冒険だ。皆さんも街を歩いているとわかると思うが、知っている人に会っても気がつかないことが多い。そして、話をしても、何を言っているかよくわからないことも多い。私もマスクをして話す人を撮影とかしているが、音の調整が実に大変だ。多分、ドラマのスタッフは色々と試行錯誤したと思う。

そして、ソーシャルディスタンスをとるとなると、SNSでの交信が多くなる。この自粛期間に、他人の本性がわかったという人も多いだろう。リアルに会うよりも、SNSは正直だったりする。嘘をついて自分を大きく見せようとしても、そういうあざとさが、文章の向こうに見えてくることは多々ある。そして、基本、SNSは過去は残る。そう、かえって面倒臭いことも多い。

そんな、日常とインターネットに支配される二重構造みたいなものも描きたかったのだろう。そういう意味では、皆から面倒くさがられる産業医の波瑠が、SNSで知らない人と会話を初めて、それが社内の人と知り、探っていく前半は、実に面白かった。社内の普通であって普通でないような空気もよく描けていたが、リモートワークを描くに至っていなかったのは少し残念。そういうところで、色々と中途半端な感じが拭えなかった。

波瑠の周囲の男である、間宮祥太朗と松下洸平、そして及川光博の掛け合いも最初は面白かった。このキャラを最後までうまく繋ぎきれなかった感じもする。特に、SNSの相手が松下とわかり、松下をリアルに好きになっていく過程は面白みがなくいまいちという感じ。最終回のラストでキスシーンがあるのだが、この濃厚接触に至る、グラデーションがもっとうまく描けていたらなと思った次第。

及川と江口のりこの恋バナも、一度破綻にする意味があったのだろうか?寄りを戻す前に江口が言う「うまく生きられないのが生きるってこと」。まさに正解であり、今年、これを感じた人は多いだろう。多分、脚本家の水橋文美江さんが描きたかったことはこれなのだろうなと思うのですけれどもね。

水橋脚本としては、「スカーレット」に続き印象的だったのは松下洸平さん。2.5枚目的な演技はどんどんうまくなっているし、今回は結構コメディいけると言うのがわかった。来年はさらに出演が増えていくだろう。

色々とキャラはそれなりに面白かったのだが、ドラマとしてのまとまりはいまいち、主演の波瑠さんの魅力ももう一つ出しきれなかった感じ。そう言う意味で、このコロナ禍ドラマ、とてももったいなかった感じが強かった。ある意味、色々規制される中で作られるドラマって難しい!。そう言う意味では記憶に残る一作だったのですけれどもね。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?