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「いちばんすきな花(第11話)」他人との価値観の違いを容認する向こう側に明るく楽しい明日があるということ

綺麗な最終回でしたね。そして、このドラマ、私にとっては今年「いちばんすきなドラマ」でした。結果的には、最初にテーマとして提示された「男女に友情は成立するか?」などという命題は、ゆくえと美鳥が話すように「どうでもいいんじゃない」ということだったらしいですね。脚本家が描きたかったのは、「他人の価値観を素直に受けいれられないような世界は住みにくい」ということなのでしょう。価値観の違いを理解し合えれば、世の中の争い事は減っていくし、それを受け入れた自分も生きやすくあるということ。つまり、「男」と「女」という分け方も価値観の違いと考えればいいということであり、恋愛はそれを理解しあった中での別次元という理解でいいのでしょうね。そういうまとめがうまくできていた最終回であり、そんなこと考えて笑顔になっていたら、藤井風が登場してくるって、格好いいラストでしたね。この主題歌もしばらく耳に残りそうです。私も「しわしわに萎れた花束」小脇に抱えて、今日も街を彷徨っていますので・・・。

ドラマ的には、前回の宣言通り、4人で一緒に住むという展開から始まり、このまま一回分見ていたいような楽しさ。とはいえ、これ数日の出来事だからいいのですよね。その中で夜々のシャツのカタツムリのイラストが紅葉の書いたイラストの盗用と解ったりするのもあり・・。これ、気づいた人いますか?

そんな中、カレーをいっぱい作って、友達呼んで食べさせたいレベルとか言いながら、次のシーンで、いつもの席に違う4人、齋藤飛鳥、仲野太賀、臼田あさ美、一ノ瀬楓が座ってるというシュールなシーン。ドラマの最終回にはカーテンコールのように今までの出演者を集めてまとめるみたいなことはよくあることだが、これはかなりの無理強いを感じた。でも、それを違和感に思わせない脚本の流れ、すごいですよね。そして、ゆくえと仲野の友達関係復活も、仲野の妻の田辺桃子が、やっと仲野の価値観がわかったということなのだろう。

そして、サイドストーリー的に語られてきた、クラスに馴染めない中学生2人の仲も、お互いに嫌いな食べ物を知ることで笑顔に変わる。人参とピーマンの交換みたいなのは、彩的に印象に残り良かったです。

そして引っ越しは、名残惜しくも、マグカップ4つを残して行われるのが良いし、その後、美鳥が越してきた時に、手伝いに別々に訪れる4人という流れもすごく良かった。5人の波動がそれなりにうまく動いてる感じが見て取れるようなね・・・。

で、美鳥の塾が開かれ、彼女が紆余曲折の上にここに笑顔で塾が開けたという喜びみたいなものも感じられたし、演じる、田中麗奈の子供達に囲まれる表情がたまらなくよかった。美鳥という、簡単に語れない人生を歩んできた人間を見事に表現していました。

そんな後で、彼らが4人で集まってるところも紹介され、ある意味、そこに表現されているのは理想的な友達関係なのかなとも思うが、これから彼らにもいろんなことが起こるわけで、この数年後とかのアフターストーリーも見てみたいなとは思いますよね。そう、忘れた頃にね・・。

とにかくも、生方美久という脚本家がこの2作目で確実にドラマファンに認知されたことは確かであろう。これだけ、しっかりとキャラクターを想像できて、それを社会の中で動き回し語らせられる脚本家はそうはいないし、そうは出てこないと思う。

そういえば、先月、私が崇拝してやまない脚本家、山田太一氏が亡くなったが、彼は現代の社会構造に対して違和感を感じ、それを自己の主張としてうまくテレビの連続ドラマに転化して描ける人だった。昨今は、そういう書き手も、そういうドラマも少なくなったと思ったが、生方氏はそれができる新しい書き手だと思う。もちろん、山田氏とは生きてる時間も描いている時代も違うが、彼女の頭の中から、今後何が紡ぎ出され新しいドラマが生まれてくるのかは楽しみでならない。とにかくも、昨年の「Silent」があって、この2作目は、それを上回る濃厚なものを感じさせていただきました。ただ、そのドラマに接しられただけで嬉しかったです。彼女をはじめとしたスタッフ、そしてキャストの皆様ありがとうございました。今年、皆様の作品に出会えたことに本当に感謝いたします。

さあ、生方美久さん、来年はどんな世界を見せていただけますか?期待しております。


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