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「ユニコーンに乗って(第8話)」働く場が限られることでの幸せみたいなもの

ラスト、広末涼子が、会社買収の話を持ち出す。このドラマは、ベンチャーがユニコーン企業になろうという夢物語。そして、企業というのはそんな独自路線では、大きくなったときにうまく回っていかない。そういう意味では、多くの合併や買収(M&A)を繰り返して生き残っていくということはある。そういう意味合いもあって、広末涼子は永野芽郁の会社に投資をしたということだろう。それは、今回、会社として醜いところを晒した、松尾貴史の会社も、品格的には異なるが同じことをやってると言える。

その、定石の路線に、永野たちがどう答えていくか?そこが、このドラマの大きな着地点をどうするかにつながることなのはよくわかる。永野たちにとってのユニコーン企業とはなんなのか?

今回は、西島秀俊のプライベートも描かれた。父親の介護に迫られ、リモートワークをせざるを得ない状況。そして、父親には会社を変わったことは言っていないことなど。でも、父親は、西島が笑って仕事をしていることで安心する。そう、この世の中、笑顔があれば乗り切れるというところか…。

そして、今回のメインテーマは、坂東龍汰、演じるところの海斗君の、永野たちのチームへの帰還だろう。思いのほか、感動的に展開していったのは、正攻法な脚本と坂東の微妙な感情をうまく表現した演技によるものだろうが、なかなか良いシーンになっていた。

まずは、松尾貴史での会社での彼のあり方を的確に見せる。ここで言い放たれるように、昨今のエンジニアは、ただのコマである。それは、昔チームという名で呼ばれていたものが、その納期が縮まったこともあり、多人数の合体ロボットみたいな感じになり、派遣社員が増えたり、下請けの増加もあり、もはや、上でまとめる方も全体像を掴むのが大変みたいな状況になり、そうなると、個々でプログラミングしている人は、もはや人ではないという状況があったりするわけだ。

だが、ここに出てくる海斗という人物は学生のころからひき篭もりがちで他者に合わせるようなことがうまくできない人物。教師にも、雰囲気だけで嫌われ、そんな中で、永野の作ったソフトに、学習の術を見出す。そして、彼が最初からの永野たちのファンだったからこそ、この会社に来たという流れは、なかなか泣ける話である。

そして、松尾にうまく丸め込まれ、引き抜かれ、結局、自分の居場所を無くしてしまったということ。ドラマではあるが、何か、モデルがいそうな話である。そう、今の世の中、エンジニアたちはコマでしかない。人間らしさを追求したら仕事がない。そんな状況はリアルに続いているのだと私は思う。そういう、社会構造の中でのエンジニアの位置みたいなものが、ここで少しでも提示されたことは大きいと思う。エンジニアの世界は、他の世界とは少し乖離してるし、だからこそ、エンジニア自身が声を上げない、いや、上げられないことが多い。そういう意味で、このようにドラマでわかりやすく、その一端を描いてくださったことに、私も少し感動してしまいました。

とにかくも、ドラマでの海斗くんは、一番居心地の良い場所に戻れたわけで、それはよかったという人情噺の後に、会社買収の話が起こっているのである。そう、これを飲んで、大企業化した時に、また、海斗くんの居場所はなくなる図なのだ。そんな感じで、資本のわがままみたいなもので居場所を奪われる人は多いのが今の日本だ。個人の時代になるとは言われているが、なかなか、本当に、皆が「そうだね」というよな個の時代になるのは、まだ、はるか遠い話のように私には感じるのだが…。

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