不在の果て [短編小説]
夕暮れの貯木場は赤く染まっていた。山から切り出された杉の巨木が積み上げられている。その一番高い所に座って夕焼けの空を眺めるのが、子どもの頃から美樹は好きだった。
貯木場からは海が見える。東京で暮らすようになるまでは、夕陽は海に沈むものだと思っていた。赤く燃える翼を広げた火の鳥のように沈んでいく太陽が描きだす壮大な光景を、今でもときどき夢に見る。そんな時は、決まって仕事が上手くいっていない。心が何かしらの充足感や感動を求めて記憶を再生させるのかもしれないと美樹は思っていた。