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蛇腹④



声の主を知るのには振り返るまでもなく、肩を掴まれたままの状態で僕は答えた。

「あ、どうしても外せないところがあって…」

デタラメな返事でその場を取り繕ったものの、よりによって一番見つかりたくないヤツに身柄を確保されてしまった…
尚も振り返らず、僕はその手を肩を強く揺すって振り払い、構わずに歩き始めた。

とにかくどれでもいいからバスに乗ろう。2台先に停まっている紅白のツートンカラーのバスに乗り込む。
どこまでもぞんざいな態度の僕を諦めたのか、女の姿は見えなくなっていた。
見渡すと、他のほとんどのバスも紅白の柄だったことに気がづく。

「丘珠空港」

前面の電光表示板にそう記されている。とにかく終点まで行ってみるか…
後方の車輪の真上の二人掛け座席の窓側に腰をおろした。足元はかなり窮屈だが、他人との距離を保つにはお誂え向きだ。

自動音声がアナウンスをはじめた。
「このバスは……かだま空港行きの直通バスです。途中…て……しゃ…………はありませんのでごっ…っ……下さい。」
機器の不調なのか途切れぎみだが、行き先の空港は【おかだま】と読むのだとその時やっと理解した。

発車前の薄暗い車窓を眺めながら、今頃あの女によって居場所が連中にバラされているだろう。なんて疎ましい女だと思った瞬間、

「ドスン」

座面に軽い衝撃を感じた。席なら他にいくらでも空いているだろう!不快感を前面に打ち出し、舌打ち混じりに衝撃の主を睨み付けた。

…つづく

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