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光届かぬ場所(Vol.4)

はじめに

お久しぶりです。
私×セクシャルマイノリティ×作業療法士のRuwaです。

最近、筆をもつ事に時間を割くことができず投稿が遅くなり誠に申し訳ありませんでした。

今日は”エッセイ”の続編をお届けしたいと思います。

まずは、前回の「永遠に日照りしない海」をご覧いただいた読者の皆様に深くお礼申し上げます。
リンクを下記に添付いたしますので、よろしければご覧ください。

それでは早速「光届かぬ場所」をご一読いただき、私の感性の海に浸ってくださいませ。


光届かぬ場所

1.輝きを忘れた海


3年間の高校生活を振り返ると、とても長いものだった。

”時間の経過”というものは、有意義で楽しい時間は短く感じやすい。逆に苦痛であったり、つまらない時間は長く感じてしまう。

私の3年間の高校生活は、親友と呼べる友達ができ、中学時代に夢にまで見た吹奏楽部に入部することができたのにも関わらず、なぜか長かった。


あの時”母親に嘘をつき、本当の自分を偽ることを選んだあの日”から…

私の人生の秒針は5秒に1回、時を刻んでいるかの如く、ゆっくりと経過している感覚。

まるで壊れた時計のようだ。

光に照らされ、自分らしくキラキラと輝いていた私の海は一気に雲がかかり光を遮断してしまっていたのだった。

そして私は、長い高校生活を2011年に終えて同年に大学に進学することとなった。もちろん自分らしく輝くことを忘れたまま….

2.光届かぬ場所

 私は高校を卒業し、作業療法士を目指すために大学に進学した。

親元を離れ、初めての一人暮らし。

田舎に住んでいた私は、親の車送迎がないと遊びにいけないという劣悪な環境で育ち、自由が無かった。

そのため初めての一人暮らしは「楽しみ」もあったが「不安」もあった。

一番不安だったのは「友人づくり」である。

入学当初は「自分のセクシャリティを隠すこと」に必死だった。

”新たな環境”に行くことは「自分を知る人がいない」という点において”新しい自分を作ることができる”メリットもあるが、私にとってはデメリットの方が大きかった。

私の中でのデメリットは「詮索されること」だ。


新しい環境に飛び込む皆が相手を知りたいと思う知るために質問される

思春期真っ只中で人間形成を行う過程に生きていた当時の私たちに、決まって飛び交う質問は「恋人はいるのか?」

入学当初、”歓迎会という名の飲み会”で早速質問がくる

Aさん「Ruwaさんはさ、恋人いるの?」
Ruwa「いないよ」
Bさん「いないんだ?どんな女の子がタイプ?」
Ruwa「優しい子かな」
Cくん「あの子可愛いよな。Ruwaは?」
Ruwa「あの子かな….(嘘)」

私は、ここでも嘘をついて自分を偽ることしかできなかった。

友達や相手に嘘をつくことも勿論苦しかったが、1番は自分自身の気持ちに嘘をついていることが苦しかった。

そして、その時間はとても苦痛で長い時間だった。

環境が変わっても、私自身は高校時代と変わらず”自分”を偽り、”自分”という存在から目を背けた

そしてまた、4年間に渡り相手や自分に嘘をつく日々が始まろうとしていた。

私の感性の海は、先の見えない「光の入らぬ場所」となっていった。

3.雪と氷に包まれていく、深い海

大学生活も2〜3年が過ぎようとしていた。
同級生との交流にも慣れ、他学科の人との交流も出てきた。

そんな中に予想もしなかった出来事が起こった。


他学科の先輩に私と同じセクシャルマイノリティの人がいると噂が回ってきた。

仲良くしていた同性の友人数人が学生食堂で口を開く。

Aくん「○○科の△△の先輩、ゲイらしいよ」
Bくん「え?まじ?狙われたらどうしよう。俺アパート同じなんよね」
Aくん「狙われてるかもよ〜!ゲラゲラ」
Bくん「まじ怖いし、キモいよね」「Ruwaも気をつけろよ」
Ruwa「う、うん….」

私はそこで、同じ境遇の先輩には悪いが「口が裂けても自分が先輩と同じ境遇であることは言えない」と感じた。

「友達に嫌われたくない」「仲間はずれにされたらどうしよう」「気持ち悪いんだ、やっぱり。」

自分の気持ちで頭がいっぱいで途中から先輩の噂は、私の頭に入る隙間は無かった。

そして、2〜3年が経っても私は変わらず、自分らしく居れることはなく本当の自分を隠し、偽り続けた。

その期間は、本当に辛く苦しかった。

”先輩の噂話を耳にすること””友達の恋愛話を聞くこと”も苦しかった。

「僕も自分のことを話したいのに、聞いて欲しいのに...」そんなことばかり考えていた。

自分の悩みは自分で消化するしか方法はなかった。

そして、いつしか私は友人からの遊びの誘いや飲み会などの集まりごとを避けるようになっていった。

それから、私は学校をよく休むようになってしまった。

Ruwa「すみません。先生、Sazarekoma Ruwaですが、今日熱があって」
先生 「本当か、無理するなよ」

本当は熱なんてないのに、またをつく。

学校を休んだ日は布団に潜り込み、自分と向き合って落ち込むことを繰り返していた。そして嘘をついて休んだことにも罪悪感が上乗せされてのしかかる。

 また、ズル休みの次の日は、学校への足取りも重くなり、再び落ち込むという悪循環にも苛まれていた。

 私は更に「人と関わること」に距離を置いて”自分のらしい心”を閉ざしていった。

気づいたら私は、人間は勿論、光の侵入すらも許されないような真っ暗な深海に一人でポツンと浮いている感覚となっていた。

そして徐々に、私の感性で溢れた海(自分らしい心)は冷え込み、雪と氷に包まれていくのであった。



2022.12.29 Ruwa

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